街に、ルネッサンス UR都市機構

楽しい団地 豊明団地(愛知県豊明市)

URPRESS 2019 vol.57 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


大学生が団地に住んで、多世代交流が花開く

内覧会は2月と3月の2回行われ、その場で申し込みを受け付ける。大学生に提供される部屋は建物の4階か5階にあり、2DK、3DKの部屋が3万円台で借りられるとあって、人気が高い。

2月のある日曜日。豊明団地の一角にある「けやきテラス」の集会室に、100人近い親子連れが続々と集まってきた。団地への入居を希望する大学生に向けた、内覧会に参加するためだ。

URは豊明団地を地域医療福祉拠点化する取り組みを進めている。これは住み慣れた地域で長く住み続けるために、さまざまなサービスや機能を団地に導入しようとするものだ。

そのために団地の近隣にある藤田医科大学、豊明市と相互に連携協定を締結。団地を舞台とする「けやきいきいきプロジェクト」と命名された一連の動きは、国が進める地域包括ケアシステムのモデルケースとして高く評価されている。

まず2015年(平成27)4月、団地店舗に「ふじたまちかど保健室」が開設された。ここで藤田医科大学の看護師や保健師、理学療法士などが健康相談を受け付ける。地域の人々に向けたさまざまなミニ講座も開催して、地域の健康の拠点となっている。

同時に藤田医科大学の学生や職員が団地に住むことで、団地を活性化しようという試みも始まった。4年目となる今年3月、最初に入居した学生15人が卒業を迎え、ここを巣立っていくのにあわせ、15戸を新たに募集する。今日はその内覧会だった。

学生・職員に貸し出している部屋は全部で約80戸ある。地域活動への参加を条件に、近隣の相場と比べると割安な家賃で、2DKや3DKの部屋に住める。しかも大学まで歩いて行ける距離ということもあって、入居を希望する学生は年々増えている。

ただし団地自治会が行う夏祭りや茶話会などのイベントを手伝うのをはじめ、近隣の小学校の放課後教室で出張講座を開くなど、大学生は団地や地域の活動に年40時間以上参加することが義務付けられている。

大学生に団地に住んでもらうねらいを、URの首藤晋也はこう説明する。
「豊明団地は団地自治会の活動が盛んな団地ですが、高齢化率が市平均より高く、単身世帯が多いのが現状です。大学生が団地のイベントに参加して高齢の方や子どもたちとふれあうことが、団地に住む人々の刺激になって、団地ひいては地域全体の活性化につながることを期待しています」

実際に高齢者からは、「若い人とおしゃべりするだけで気持ちが若返る」「力仕事を手伝ってもらって助かった」と好意的な反応が多い。

団地の集会所だった建物を改修した「けやきテラス」には、コミュニティースペースだけでなく、医療介護サポートセンター、地域包括支援センター出張所と、在宅介護用ロボットの研究施設も併設されている。
部屋によっては抽選になることも多い。新入生だけでなく、在校生も入居できる。
大学とURの取り組みや入居条件などを熱心に聞く、学生と保護者たち。
「大学をはじめ豊明市、自治会ともいい関係が生まれている」と話すURの首藤。

団地住まいで成長する
大学生たち

「私たちの大学は、卒業後、医療に従事する学生がほとんどです。彼らにとって、団地に住む高齢者の話を直接聞き、彼らの暮らしぶりや不安などを知ることは、将来の仕事にとても重要な意味をもってくると思います」

「ふじたまちかど保健室」で居住者の相談に応じる藤田医科大学講師の長谷川洋子さんはこう話す。

このプロジェクトを統括し、自身も団地に住む同大学講師の都築晃さんも、「団地に住む間に、学生たちはものすごく成長する」と感心する。

「高齢者と自然に雑談ができるようになり、彼らの中に入っていけるようになるんです。コミュニケーションスキルが格段に上がっています」

この日の内覧会でも団地に住む学生たちが、受付や資料配布の手伝いに参加していた。彼らは、「団地住まいは楽しい」「高齢の方との付き合いも、ちっとも苦ではないです」と屈託がない。

団地を活性化し、多世代交流をはかるミクストコミュニティの実現へ。
「大学・地域、それにURがウィン・ウィンの関係となる豊明団地の取り組みが、成功事例として全国に広まっていくことを願っています」
そうURの首藤は今後に期待を寄せている。

豊明団地は築45年、約2000戸の団地で、公園やスーパーマーケットがあり、暮らしやすい。
大学生たちの活動は団地外にも。近隣の小学生の学習支援や、高齢者の買い物支援なども行っている。
取り組みが始まって4年。藤田医科大学の都築さんは、「この団地で地域の人々と接することで、大学にいては気づかなかったことに気づくことができた」と話す。
看護師と保健師の資格をもつ長谷川さん。団地が地域包括ケアの拠点になるよう活動を続けている。

武田ちよこ=文、青木 登=撮影

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