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【特集】町民の新たな暮らしの土台となる 宅地分譲を推進中(福島県大熊町)

  • URPRESS 2026 vol.85 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

町民の避難先からの帰還を促進するために、大熊町では町民向けの宅地分譲を進めている。
URは関連会社のURリンケージとともに、その支援を行っている。

下野上地区に新たな市街地をつくる

避難先から分譲地の見学に来た方に、現地で説明するメンバーたち。震災前とがらりと変わったまちの様子に「以前は何があった所ですか?」と聞く方も多いそうだ。
下野上地区の宅地分譲を担当するメンバーたち。左からURの吉村、堀口、大熊町の二階堂さん、URリンケージの林さん。原再生賃貸住宅にあるコミュニティスペースの前で。

昨年、JR大野駅西側エリアに大熊町産業交流施設「CREVAおおくま」と商業施設「クマSUNテラス」が開業して、新しいまちの姿が徐々に整い始めている大熊町。今年2月に訪れたのは、駅から徒歩約15分の位置に広がる下野上(しものがみ)地区住宅エリアだ。ここにはゆるくカーブする道路に面して平屋の町営賃貸住宅(原再生賃貸住宅)が並び、今秋スーパーマーケットがオープンする予定の場所には、重機が入って土地整備が進んでいる。コンパクトだが、確実に新しい住宅地が生まれつつあるその一角に、大熊町が宅地分譲する土地が広がっている。

町は全町民を対象とした分譲を開始。避難先に送っている町の広報誌やホームページで情報を発信し、この日は希望者による現地見学会と申し込みが行われていた。

ここは震災前には町の名産である梨畑が広がっていたエリア。特定復興再生拠点区域の避難指示が解除された後、下野上地区復興拠点の一部として居住用住宅地の整備が進められている。

この宅地分譲を担当するのは、大熊町生活支援課の二階堂雄二さん。生活支援課は震災後、避難中の町民の生活を支えるためにつくられた部署で、「町民の皆さんの避難生活の支援から、災害公営住宅の建設や管理、新たな町民を呼びこむための移住・定住促進なども当課の業務です」と説明する。

今回の宅地分譲は町が主導して推進。ここを復興の拠点にすることへの理解を求め、用地買収を進めていった。その土地にURが基盤整備を行い、宅地として整備。

大熊町民に向けて分譲を開始した。

ニュータウン開発のノウハウを生かす

土地分譲には、これまでニュータウン開発などで宅地分譲の経験のあるURと、URの関連会社であるURリンケージが、ソフト面をサポートしている。

URで宅地分譲の支援を担当する大熊復興支援事務所の堀口敏明は、「見学に来られた方々に、インフラ関係の説明や、土地造成の仕方など、主に基盤整備の詳細をご説明しています。同時にURがニュータウン事業で培ってきた経験から得た知見などを、町にお伝えすることもあります」と説明する。

宅地分譲の募集業務や抽選会などを担当しているURリンケージの林 直樹さんは、町民の帰還促進のための宅地分譲業務をこう話す。

「ここでは“売らんかな”の商売は成り立ちません。避難先から町に帰還される方々は、皆さん個々に事情を抱えています。まず相手の話をよくうかがい、思いに寄り添う対応を第一に考えています」

大熊町の二階堂さんによると、町民の帰還方法にはさまざまあり、町営の賃貸住宅に入る人もいれば、自分の土地に住宅を再建する人、民間の集合住宅を希望する人もいる。町としては民間の取り引きも活性化させてバランスをとることも重要だと考えている。

たまたまこの日、土地を見に来ていた方は、家族は避難先のいわき市に残るが、自分はここで店を開くのが希望だという。二階堂さんは、「個人ごとのご事情を生の声でお聞きできることは、信頼いただいていると感じます。町民の皆さんとお話しすることは、町職員としての原点なので、ほんとうにありがたい」と話す。

今回分譲される下野上地区住宅エリア。大野駅まで歩いて15分ほど。秋にはスーパーも開業予定だ。
すでに入居も済んでいる原再生賃貸住宅。町内の移動にはコミュニティバスが走っている。

人のぬくもりのある新しいまちが誕生

入社1年目で大熊復興支援事務所に赴任したURの吉村萌香は、「来たばかりの頃は、昼間この辺りを歩く人はほとんど見かけませんでしたが、今では犬を散歩させる人もいますし、少しずつ人の暮らしが感じられるようになってきました。まちが整っていくのを実感できるのが、この仕事のやりがいです」と教えてくれた。

分譲地を購入して家を建てることは、大熊町での暮らしをリスタートさせる大きな第一歩となる。

「ここでの分譲は、単に土地を売るだけの仕事ではありません。皆さんのこれからの人生を支える、意向に沿った土地を売ることができれば」とURリンケージの林さんも思いを語る。

大熊町には最新の教育を実践する学校が開校して、注目を集めている。企業の進出も進み、現在の人口は約1500人まで戻ってきた。町の目標4000人の到達にはまだまだだが、「町には活力ある方が多く、移住者も町のために何か始めようと活動する人が多くいます。官民問わず町に関わってくださった皆さまには町長をはじめ町として感謝しており、復興の原動力になっています」と二階堂さんは力強く語る。

数年後、ここには真新しい住宅が立ち並び、復興の拠点となるまちが誕生していることだろう。一歩ずつ進む復興の足音が聞こえた気がした。

昨年、大熊町の大野駅西側に開業した商業施設「クマSUNテラス」。飲食店やコンビニ、文具店などが入っている。
大野駅前に完成した産業交流施設「CREVAおおくま」。デッキから町を眺める。
3月14日には大熊インキュベーションセンターで大熊町復興交流イベント おおくま学園祭2026「OKUMA ODYSSEY」が行われ、ライブやワークショップを開催、キッチンカーも出店してにぎわった。グラウンドではいわきFCの選手によるサッカー教室「UR SPORTS LAB 2026」も行われた。
いわきFCのマスコットキャラクター、ハーマー&ドリーと選手たち。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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