社会課題を、超えていく。 UR都市機構

【特集】震災前の建物を残し風景と歴史をつなぐまちに(福島県双葉町)

  • URPRESS 2026 vol.85 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

双葉駅周辺の避難指示が2022(令和4)年に解除された双葉町では、震災前からあった建物を活用しながら、双葉ならではの歴史をつなぐまちづくりが進められている。

生活環境が整い始めた双葉駅周辺

「ちいさな一歩プロジェクト」14歩目は、新たにオープンした商業施設の駐車場が会場に。

「居住人口200人弱ってどんな感じなのだろうと思って双葉町に来ましたが、まちの人に加えて役場や大学、民間企業などいろいろな関係者が集まっている面白いまちだと思いました」

双葉町に赴任した当時の印象を、URの泉 隼人は、このように話す。入社1年目(取材時)、双葉町でにぎわいづくりや交流促進などのソフト支援を担当する泉は、東日本大震災当時、小学2年生だった。

東日本大震災・原子力災害により全町避難が続いていた双葉町で、JR双葉駅周辺の避難指示が解除されたのは2022(令和4)年8月。駅前に町役場の新庁舎が完成し、駅の西口に住宅整備が進み、東口にはスーパーが開店するなど、少しずつ生活環境が整ってきた。居住人口は増加しているが、2月末時点で193名と、震災前の約3%だ。

URは働く拠点の「中野地区」や住む拠点の「駅西住宅」などのハード支援を行いながら、ソフト支援も行っている。交流促進や地域プレイヤーの発掘・関係づくりを通して、地域を盛り立ててきた。コトラボ合同会社、一般社団法人ふたばプロジェクトと共同で立ち上げた「ちいさな一歩プロジェクト」では、これまでに写真撮影会や、椅子やテーブルのDIYワークショップ、飲食交流イベントなどを14回開催。200名ほどが集まることも珍しくないイベントに育っている。

双葉駅周辺。向かって右側の西口には瀟洒な住宅地が広がる。
住宅地には遊具が設置された広場も。
左側の東口には町役場の隣に、昨年イオンがオープン。
東口には、今春、居酒屋などの飲食店3店舗もオープンした。
2025年8月、双葉駅の北側に開通した井出長塚線 長塚跨線橋。線路をまたいで東西をつないでいる。

FUTAHOMEがチャレンジスペースに

「マチづくり」を「モノづくり」ではなく「コトづくり」からはじめるをモットーとする、コトラボ合同会社の岡部代表。

そして昨年2月に待望の地域活動拠点「FUTAHOME」(ふたほめ)が、コトラボ合同会社を事業主体として双葉駅近くにオープンした。震災前からある建物を利用し、1階はカフェ・チャレンジスペース、2階はコワーキングスペースに。いずれも地域の人に利用してもらう場であり、スタートアップ支援の場でもある。FUTAHOMEを通じてコトラボ合同会社と東北大学・福島大学、そしてURの4者が福島浜通り地域の復興まちづくりに取り組んでいる。

横浜の寿町をはじめ、全国各地でまちづくりに取り組んでいるコトラボ合同会社の代表の岡部友彦さんは、いずれの地域でも「空き家と小商いをどうつないでいくかがテーマ」だと話す。

「双葉町は既存の建物を使って小さな店舗をつくっていて、そういうデザインが僕はすごくいいなと思っています。昔の建物を生かして引き継げば、風景が残るし、歴史を受け継ぐことにもなる。そして、更地から建物をつくるより、新しい人が入ってきやすく、商いを始めやすい。チャレンジしやすい環境をつくり、まちの人の声を聞きながらトライ&エラーを繰り返し、まちづくりを進めていくのが双葉には合うように思います」

「人」と「まち」は時間軸が異なり、まちは500年、1000年の尺度で考える必要があるのではとも話す岡部さん。

「まちづくりは10年では短い。その意味で、長期目線をもってまちづくりに取り組まれているURさんのような存在は貴重。他の事業者ではできません」

震災後に壁画が描かれた象徴的な建物を活用した地域活動拠点「FUTAHOME」。1階は週替わりのカフェ・チャレンジスペースに。
今後は関係者をつなぎ双葉を盛り上げていきたいと話すURの泉(左)と河田(右)。

つながり続ける信頼関係を

「HOMEあう会」ではさまざまな関係者や住民の声を聞いている。

FUTAHOMEでは、浪江町や大熊町を含む双葉郡全体から人が集まり、双葉郡に関するテーマに沿って、誰でも参加可能な話し合いの場「HOMEあう会」も定期的に開催している。

学生時代にボランティアサークルに所属し、人と接する機会が多かったURの泉も、双葉町に来た当初はまわりの人とのコミュニケーションに苦労したと振り返る。

「ここで必要なのは、単発的なコミュニケーションではなく、つながり続けるコミュニケーション力と信頼関係です。積極的に話をする先輩たちの姿を見ながら学びました」

最近は「泉さん」と声をかけられることが増えてうれしいと話す後輩の姿を見ながら、同じく双葉町担当のURの河田成夢は、「当事者が楽しむことでプロジェクトは続いていくと思うので、次の世代が楽しく取り組んでいるのはいいこと、うれしいですね」と笑顔に。河田にとっても双葉町は特別な場所。さまざまな人間関係を築くことができ、また帰ってきたいと思える場所になったと話す。

双葉駅周辺には、3月14日に飲食店が3店舗オープンした。また、4月25日には、双葉町と浪江町にまたがる場所に福島県復興祈念公園がオープンする。今後、双葉町コミュニティーセンターや旧東邦銀行双葉支店を改修し、宿泊・滞在など交流に必要なサービスの拠点として整備を進める予定だ。URは建築物改修を技術的に支援しながら、双葉町と連携し、まちづくりを進めていく。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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