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【特集】宮城県南三陸町

URPRESS 2021 vol.65 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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住宅や病院、町役場などが整備された志津川地区の高台。

子どもたちが誇りをもてる
魅力あふれるふるさとに

気仙沼市の南に位置する南三陸町は、ラムサール条約湿地に登録された志津川湾をはじめ
豊かな海・里・山がコンパクトにまとまったまち。復興まちづくりと並行して、
この環境と地場産業を次世代につなぐための取り組みが進んでいる。

高台に建てられた南三陸町役場の新庁舎。
2019年の台風19号でも被害がなかった高台の住宅地。

東日本大震災では16メートルに及ぶ津波で市街地が壊滅的な被害を受けた南三陸町。二度と津波で尊い命を失わないまちをつくると、職住分離の高台移転をベースとしたまちづくりを行ってきた。南三陸町と復興事業に関して包括的な協力協定を結んだURは、志津川地区の中心市街地のかさ上げをはじめ、災害公営住宅の建設、高台移転のための宅地造成などを支援。今年3月で事業は完了した。

住宅や店舗の移転に関してUR職員が心がけたのは、地元の方々の気持ちに寄り添い、できるかぎり個々の希望を尊重することだ。

安全かつにぎわいのあるコンパクトなまちを目指した志津川地区では、全国にその名を知られる「南三陸さんさん商店街」などの交流拠点や、そこから中橋を渡って回遊できる南三陸町震災復興祈念公園を整備した。来春には、道の駅と震災伝承館も完成予定だ。

南三陸町震災復興祈念公園の「祈りの丘」。
飲食店やショップが集まる南三陸さんさん商店街。

最後までやり抜く覚悟と見通しをもって

スピードが求められる復興支援で、URとして常に意識してきたのは、「大規模事業なので進捗がわかりにくいのですが、可能な限り効率的に事業を進め、1日でも早く住まいを完成させたい」ということだとUR南三陸復興支援事務所所長の佐光清伸はいう。

「URとしては、最後まで事業の責任を全うする使命感を持ちスタートしました。計画内容や事業スケジュールは関係者と綿密な調整を行いながら、きちんと仕上げることに力を尽くしてきました」

長年復興事業に関わってきた南三陸町職員の遠藤和美さんは、URの事務所が近くにあり、すぐに直接話ができたのがありがたかったという。

「メンバーが入れ替わっても皆さん情熱をもって取り組んでくださり、本当に感謝しています。震災後に生まれた子どもたちは、新しいこのまちがふるさとになりますから、誇りをもてる魅力的なふるさとになるように願っています」と遠藤さんは今後のまちの展開に期待を寄せる。

南三陸町職員の遠藤さん。
「早くコロナが収まって、きれいになったまちで、まちの人に夏祭りや海水浴を楽しんでもらいたいですね」
UR南三陸復興支援事務所所長の佐光。
「南三陸町は活発な20~30代が多く、前向きな議論や活動が行われるので今後が楽しみです」

持続可能な水産業と林業に

「西の明石に、東の志津川」と評されるタコをはじめ、カキやホタテなどの豊かな漁場である南三陸町の志津川湾は、2018(平成30)年にラムサール条約湿地に登録された。さらに南三陸町はASC(水産養殖管理協議会)とFSC(森林管理協議会)の2つの国際認証を受けるなど、自然と共存した持続可能な産業が世界的に評価されている。良質な木材、「南三陸杉」の産地でもある。

ここで代々林業を営む(株)佐久専務取締役の佐藤太一さんの案内で、杉林へ向かった。青空に向かって杉が背を伸ばす林は木漏れ日に包まれ、気持ちがいい。

「震災後に一番気づかされたのは、自分たちは自然のなかで生きているということです」

そう話す佐藤さんは、震災のときは大学院で宇宙放射線の研究に携わっていたが、その後、家業を継ぐため南三陸へ。過去に何度も津波にあいながらも残っている山々は、今回の震災でも被害がなく、林道は避難路になった。そのことから、山林という揺るぎない財産をしっかり管理して守り、林業を持続可能な産業にしておけば、次に津波がきても立ち直りやすいと考えたという。そこで同業者と話し合い、FSC認証取得に向けて動き出した。一方、漁業はいかだの数を減らすなどして持続可能な養殖業へシフト。話し合ったわけではないが、同じ方向を向いていたという。

「震災後は将来のことしか考えられなかったから、未来志向に変化しました。南三陸のブランド化が必要だと。まだまだ課題はありますが、課題や未知の部分を解決していくのは魅力があるし、楽しい」と頼もしく語る佐藤さん。ワインづくりも始まるなど、豊かな自然の恵みを生かした新たな取り組みが広がる南三陸町。これからの展開に期待が高まる。

「台風や風雪が少ないこの地では、杉がまっすぐに伸びて年輪が詰まります。降水量を補って杉の生育を促すのは、ミネラルを含んだ海から立ち上る霧だと言われています」と(株)佐久の佐藤さん。オール南三陸杉材の住宅で暮らし、杉のあたたかさ、やわらかさを実感している。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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