街に、ルネッサンス UR都市機構

【特集】宮城県気仙沼市

URPRESS 2021 vol.65 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

SDGsのアイコン画像

住宅や商業施設が次々に建設され、活気にあふれる鹿折地区。

震災を経て輝きを増す
わくわく、きらきらのまち

3月6日、三陸沿岸道路が宮城県内全線開通し、仙台から宮古まで結ばれた。
これにより岩手、宮城の沿岸部へのアクセスが格段に向上。
なかでも注目を集めたのが、ルート上に誕生した眺望抜群のスポット、物資や人だけでなく、希望も運ぶ気仙沼湾横断橋だ。

かなえおおはしの写真

「ここに橋が架かったらいいなと夢見ていましたが、まさか三陸沿岸道路が通るとは思わなかった」と笑顔で話すのは、気仙沼在住、宮城三菱自動車販売(株)の千田満穂(ちだみつほ)会長だ。還暦を機に、自身が理想とする気仙沼の未来絵地図の制作を始めた千田会長。改訂を重ねた絵地図は現在6版になるが、気仙沼湾にかかる橋は2000年の初版から描かれていた。「橋の上から風光明媚なまちを見てもらい、気仙沼っていい所だな、こんど恋人や家族と一緒に来ようと思ってもらえたら」というのが橋に込めた思いだという。

千田会長が理想を込めて制作した「気仙沼夢のイラストマップ」の最新版。 千田会長のディレクションのもと、土橋征史氏がイラストにした。
宮城三菱自動車販売の千田会長。震災当日に可能なかぎりの軽自動車を発注。 確保できた115台を市民に貸し出した。今後は気仙沼大島の観光整備に尽力したいと話す。

地盤沈下したまちを造成し直す難しさ

沿岸地域でも湾の形状や向きなどにより、東日本大震災の津波の被害状況は異なる。気仙沼の中心市街地は家屋や建物がある程度残ったものの地盤が沈下し、満潮時には浸水する状態に。URは現地に事務所を置き、南気仙沼や鹿折(ししおり)地区の区画整理事業や災害公営住宅の建設を支援してきた。今年3月に事業が完了し、整備された市街地には集合住宅や戸建て住宅、スーパーや旅館などが建ち、新たなまちの顔を見せている。

「下水道や光ファイバーなどライフラインが張り巡らされていた市街地の整備は、まっさらにして造成し直すのとはまた別の難しさがありました」とUR気仙沼復興支援事務所所長の佐光清伸は説明する。多数の関係機関と調整を重ね、道路を何度も切り替えながらのスピードが求められる厳しい作業が続いた。

利便性の高いコンパクトシティになったと思うと話すのは、気仙沼市建設部の佐々木守部長だ。

「URさんがいなかったら、このまちはなかったですよ。いろいろな提案をしてくれて、住民説明会や議会にも同席して納得のいく説明をしてくれて。私にとってURの方々は戦友です」と目を潤ませた。

スピードが求められる復興、その時々で最善を尽くしてきたと振り返る佐々木部長。
南気仙沼地区の中心地。夜になると災害公営住宅の灯りが目を引く。
土地区画整理事業を行った南気仙沼地区で、URが最後に整備した大川公園。
以前の公園や河川緑地にあった碑と桜の木を移植した。

復興の先に続くまちづくり

そして今、気仙沼は震災を経て力を蓄え、これからどのように発展していくのか、期待を集めるまちになっている。市が目指すのは「世界とつながる豊かなローカル」だ。気仙沼市震災復興・企画部の小野寺憲一部長は語る。

「まちの長い歴史の中の10年。壊れた道路や街並みを直せば、それで復興は完了ではありません。自分たちがやるべきことは、過去から受け継いできた人材や文化、自然といった地元の資源をベースにした、未来に向けたまちづくりです。この大きな軸のなかで、震災を契機に得られた環境をどう生かすかを考えてきました」

被災地支援として開かれた若手経営者の育成塾「経営未来塾」の卒塾生が、行政の施策やまちづくりに積極的に参加してくれるようになったことを受け、人材育成の重要性を実感。Iターン者や外部の人の力も借りながら、まちづくり人材の育成の機会を高校生や女性、シニアなどにも広げてきた。

「〝わくわく、きらきらのまち″と表現しているのですが、自分たちが主役であり、まちを変えられる、チャレンジできると思えるまちを目指しています」と小野寺部長。

その効果は、市民の積極的なまちづくりへの参加や若手移住者の増加など、さまざまな面で表れているという。5月からは気仙沼で生まれ育った女性が主人公のNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」の放送もスタートする。このまちの今後の飛躍が楽しみだ。

「気仙沼の東は"世界"です。外に開かれているこのまちの人は、支援を受け入れる〝受援力″にも長けていると思います」と小野寺部長。若い世代のサポート役に徹することを心がけている。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

動画

未来へ続くまちづくり(ドローン動画)

【特集】宮城県気仙沼市

震災を経て輝きを増すわくわく、きらきらのまち

【特集】宮城県南三陸町

子どもたちが誇りをもてる魅力あふれるふるさとに

【特集】宮城県女川町

官民連携でつくる新しいまち「女川」が誕生

【特集】岩手県陸前高田市

新たな挑戦に期待が膨らむ生まれ変わったまち

【特集】東日本大震災から10年 トップインタビュー

東日本大震災から10年 トップインタビューの写真

【特集】URが取り組む東日本大震災の復興支援

URが取り組む東日本大震災の復興支援の写真
  • LINEで送る(別ウィンドウで開きます)

特集バックナンバー

UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

UR都市機構の情報誌[ユーアールプレス]の定期購読は無料です。
冊子は、URの営業センター、賃貸ショップ、本社、支社の窓口などで配布しています。

CONTENTS

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ