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【特集】多摩市

URPRESS 2021 vol.64 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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ニュータウンから世界に発信!
市民がつくる市民のオンライン文化祭

昨年11月7日、多摩ニュータウンのある多摩市で行われた「多摩市ONLINE文化祭」。
市民のさまざまなパフォーマンスをオンラインで配信する新しいかたちの市民のイベントは、世代間をつなぐ新たなコミュニケーションツールになる予感を秘めていた。

多摩市内10カ所の児童館で、子どもたちがドミノをつくり、いっせいに倒す映像を撮影。
この日は連光寺児童館で瀧口さんとスタッフがその様子を映像に収めた。これもオンライン文化祭のコンテンツのひとつ。
文化祭当日、各児童館のドミノがつながり、次々に倒れていく映像が流れると、最後に多摩センター駅前のクリスマスツリーがリアルに点灯。
いっせいにクリスマスイルミネーションが輝きだし、大成功だった。

市民たちの発表の場をオンラインで実現

スタートは11月7日の昼12時。YouTubeの3つのチャンネルで、多摩市民が繰り広げるオンライン文化祭の様子が次々に配信された。中学校の吹奏楽部が演奏し、小学生の太鼓や合唱も登場。大学生が新体操を披露すれば、多摩市文化団体連合も参加するという具合に、切れ目なく44ものプログラムが続いた。参加したのは50団体超、のべ1000人以上、再生回数は2万2000を数えた。

「実際に視聴された人はその数倍はいらしたと思うので、まず成功だと思います」と多摩市企画政策部の西村信哉さんは安堵の表情を見せた。

もともと市民活動が活発な多摩市。だが、昨年は新型コロナウイルスの影響で市民参加のイベントが次々に中止され、学校の行事も中止を余儀なくされた。

「コロナ禍の新しい日常に対応した、新しい市民交流の場、市民の発表の場がつくれないか。こうした市民の声があり、クリエイターの瀧口さんや柏井さんに相談して、オンライン文化祭につながりました」

多摩市企画政策部の永井陽介さんが説明する。

今年(2021年)多摩ニュータウンのまちびらきとともに市制50年を迎える多摩市では、50周年に向けた市民実行委員会を立ち上げており、そのメンバーの1人がCMクリエイターの瀧口寿彦さんだ。瀧口さんは多摩ニュータウン生まれ。18歳までここに住み、再び5年前に戻ってきた。

「戻ってきて感じたのは、ここは全く変わってないということ。古くからの歴史や伝統の少ない新しいまちで、まるで色が塗られていない真っ白なキャンバスなんです。それは誰もが自分の色を塗ることができる、フロンティア精神のあるまちだということです」

こうニュータウンの魅力を語る瀧口さん。オンライン文化祭に手応えを十分に感じたという。

「文化祭に参加した小学6年生が、オンラインで大勢の人々に見てもらえて、本当にうれしかったと泣いて喜ぶんです。『コロナに負けない勇気をもらった』というお手紙もいただきました。ほんとうにやってよかったと思っています」

瀧口さんは文化祭当日、永山団地商店街の一角につくったパブリックビューイング会場で、文化祭の生中継動画を見た。ここには多摩市長をはじめ、普段YouTubeを視聴する機会の少ない団地の高齢者も参加。多様な世代の人々がつながり、時間を共有した。

「近所の人が差し入れてくれた茶菓子をつまみながら、高齢者や子どもたちと一緒にオンライン文化祭を見る。リアルとウェブが融合した、すごくいい時間でした」

  • 多摩センターの会場では、落合中学吹奏楽部のメンバーと、「ザ・なつやすみバンド」のコラボが実現、生配信された。
    中学生たちは心から演奏を楽しんでいた。

  • 「今年の市制50周年では、また新たなことに挑戦したい」と意欲を見せる多摩市の西村さん。

  • 「オンライン文化祭だけで終わらせたくない、という市民の声をたくさんいただき、これからが楽しみ」と多摩市の永井さん。

地方に住んでいる多摩市出身者や海外からも次々にチャットが入り、
場所を選ばずに視聴できるオンラインの面白さを実感。
この文化祭の様子はNHKの番組でも紹介され、多くの反響があった。
「高齢者にもチャレンジしたい人は多い。
これからは高齢者と若い人たちをどう融合させるかがカギ」と話す瀧口さん。

多摩ニュータウンから文化が生まれる

一昨年まで多摩市で「NEWTOWN」という芸術イベントを主催してきたCINRA.NET編集長の柏井万作さんも、多摩市から相談を受け、今回のオンライン文化祭を一緒につくり上げた1人。彼も多摩ニュータウンの生まれ、ここが故郷だ。

「ここ数年、仕事で多摩市にかかわるようになり、あらためてまちの魅力を感じています」という柏井さん。

「カルチャーを仕事にしている立場から言うと、ニュータウンは存在そのものがテーマになる場所です。ほかのまちとは成り立ちが異なるニュータウンの面白さを、芸術家や建築の分野の人たちが再発見しています」

西村さんも「子どものころに味わったこの地のよさを思い出して、大人になってからかかわりを持とうとする人が増えています。自分の持っているものをここに生かしたいという胎動を感じる」と話す。

「真っ白なキャンバスは、手足をちょっと伸ばせば何か新しいことができる感じ。それが都会でも田舎でもない、多摩ニュータウンならではの魅力ではないでしょうか」

永井さんも「一度、外に出て戻ってくる人も、外からやってくる人も、誰かが何かを始めたいと思ったとき、気軽にチャレンジできる環境をつくりたい」と言う。「そこから文化が生まれます」と柏井さん。

多摩ニュータウンには、そのための人も場所も揃っている。

柏井さんは、自分が子育てする年齢になり、団地内を走り回っていた子どもの頃を思い出し、あらためて団地のよさを実感したという。

【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】


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