【特集】福岡市で日本最大級の新しいまちづくりが始まった 九州大学箱崎キャンパス跡地まちづくり(福岡県福岡市)
福岡市の東側で、大学跡地を利用したかつてない規模の新しいまちづくりが始まろうとしている。
URは公募主体として九州大学とともに、その土台づくりを担っている。
広大な大学跡地に新しいまちが生まれる
新たなまちの中心となるイノベーションコアのイメージパース。福岡の次世代産業を創出するイノベーション拠点と、福岡・九州の食をテーマにした観光交流拠点などが計画されている。提供/シンハコザキ100合同会社(他の2点も)
福岡市東区にあった九州大学箱崎キャンパスは、文系、理学系、工学系、農学系と大学本部などが集まる九州大学の中枢で、面積は約43 ha。地下鉄の2つの駅の間の広大な土地だ。現在は一部の大学建物を残し、伊都キャンパスへの移転が完了。延々と更地が広がっている。
「福岡空港からも近く、福岡市内の天神駅、博多駅という中心地から地下鉄で10~15分という抜群の立地です。この立地で、しかも今回公募した28・5haという広大な面積を一括での再開発は、日本ではもうないだろうといわれるほどの好条件。当然この公募は全国から注目を集め、多種多様な業種から、じつに多くの引き合いがありました」
こう説明するのは、URでこの事業を担当する九州支社の久保明彦だ。
URは過去に九州大学六本松キャンパス移転に伴う跡地開発で、九州大学とタッグを組んだ実績がある。今回もURは2016(平成28)年に九州大学と箱崎キャンパス跡地利用計画の共同事業をスタート。その後のコロナ禍に、URはこの土地の道路やインフラを整える大規模な基盤整備事業を着実に進めてきた。
「土地利用事業者の参加意欲が高まるように、また周辺に住む人々の利便性向上も考え、2路線約1.4kmの都市計画道路に加え、約2kmにわたる外周道路での歩道整備・幅員拡幅と、下水道、地下鉄の新出入口などの整備を進めました。ここは海に近い場所なので、雨水の排水をスムーズに行うために、地下に雨水幹線の整備なども行っています」と久保が説明する。
地下鉄の「箱崎九大前」駅と「貝塚」駅の間に広がるキャンパス跡地。所々に残る樹木は保存されたもの。キャンパス跡地周辺の道路はURが整備した。今後、JRの新駅も設置される予定だ。
大学跡地の一角に、URが整備した地下鉄「箱崎九大前」駅の新しい出口。グランドデザインを策定 事業者を公募
福岡市と九州大学は18年に「九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザイン」を策定した。これは良好な市街地を形成し、新たな都市機能を導入するために、まちづくりに共通する整備ルールや将来の姿を示したもので、URも検討委員として参画。今回の土地利用事業者の公募は、このグランドデザインに沿って行われた。
九州大学でこの事業を担当する統合移転推進部の今川太一郎さんは、「福岡市が進めるスマートシティ構想『FUKUOKA Smart EAST』を取り込むのはもちろん、九州大学の歴史の継承や、キャンパスで樹齢を重ね、地域の人からも愛されていた樹木の活用も条件に加えるなど、URさんとともに検討を重ねました」と説明する。
まちづくりの方針には、1.新たな活力・交流を生みだす 2.充実した教育・研究の環境を生みだし、人を育てる 3.安全・安心・快適で健やかに暮らす 4.歴史文化資源を大切にする 5.環境と共生し、持続可能なまちをつくる という5つが示され、100年後の未来に誇れるまちをつくるというビジョンが掲げられた。
保存が決まっている九州大学旧工学部本館屋上に立つ、右から九州大学の今川さん、住友商事の中西さん、URの久保。後方に見えるのが箱崎キャンパス跡地。100年後に誇れるまちづくりがスタート
こうしてまとめられたグランドデザインにもとづき、九州大学とURは23年に跡地の土地利用事業者の公募を開始。24年に優先交渉権者が決定すると、URはその後の2年間、公募主体として九州大学とともに、提出された計画がまちの将来像に沿った内容になっているか、計画実現の可能性はどうかといった観点で検討し、行政との調整を重ねた。
「関係者が多岐にわたるなか、意見を集約していく作業は大変でしたが、今年3月、最終的な土地利用事業者を決定しました」とURの久保。
土地利用事業者に決定したのは、住友商事を代表者とする8社からなるコンソーシアムだ。担当する住友商事の中西弘和さんは、まちづくりがしたいと、この仕事に就いたと語り、「新たなまちをつくる、この仕事にやりがいを感じます」と声をはずませた。
「これからのまちの成長に、スマートシティ構想は欠かせません。ここでは先進技術を生み出し、それを試し、さらに改良する、というサイクルを回していけるまちを目指し、双方ウィンウィンな関係をつくりたい」と構想を膨らませている。
同時に、このまちでは住人たちにまちのエリアマネジメントに積極的に参加してほしいともいう。
「ここは自分たちのまちだ、という意識を強くもち、積極的にまちにコミットする人が増えるような仕掛けも考えていきます。それが100年先に続くまちをつくるうえで大切だと考えています」
計画では28年度後半に、第一期のまちびらきが予定されている。「期待しかありません」と話す九州大学の今川さん。「ここに住む人だけでなく、周辺の人々もワクワクするようなまちができることを期待しています」
福岡市だけでなく、全国からも注目を集める新たなまちづくりを、これからも見守っていきたい。
まちは共同住宅を中心とした居住エリア、商業施設や医療、福祉施設が集まるウェルネスゾーン、業務・研究エリア、インターナショナルスクールなどのナレッジゾーンで構成され、歩行者ネットワークも整備する。
まちの鳥瞰イラスト。28年度の第一期まちびらきから、2036年度にかけて段階的に整備される予定だ。【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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