命を守る防災新常識(5)
変わる落雷対策の常識 雷から命を守るためのウソ?ホント?
かつては「夕立」と呼ばれた夏の夕方を彩る雷雨。昨今では「ゲリラ雷雨」という言葉に変わりましたが、短時間に強い雨や雹、落雷をもたらすことがあります。今回は、突発的な落雷から命を守るための知識を解説します。
雷が鳴ったら建物か乗り物の中へ
「雷が光ってから音が聞こえるまで、10秒以上かかっていたら、まだ雷は遠いので安全だ」と聞いたことがあるかもしれません。これは危険な誤りです。
雷光から雷鳴まで10秒かかる場合、雷までの距離はおよそ3.4kmあります。一方で稲妻は最大10kmほどの距離を走り、落雷を生じさせますので、雷の音が聞こえるということは、次の瞬間、自分に落ちてきてもおかしくない状況なのです。
落雷を避けられる最も安全な場所は、建物の中か、自動車や電車など周囲を鉄で囲まれた乗り物の中です。公園などにある壁のない休憩スペースや、オープンカーなどは落雷を避けられません。雷の音が聞こえたら、できるだけ早く建物や乗り物の中へ入ってください。
落雷は多くの場合、激しい雨を伴います。軒下や木の下などで雨宿りをしたくなりますが、これは危険な行為です。建物や木に落雷すると、電気は壁や木の幹を伝って地面へ流れますが、そこに人間がいる場合、壁や木よりも電気の流れやすい人間に電流が移動する「側撃雷」という現象が生じ、死亡する恐れがあるためです。とにかく建物や乗り物の中を目指して移動してください。
雷対策にまつわるウソ? ホント?
illustration=AI Generated
雷はどこに落ちるのか、それは「周囲で一番高い所」です。避雷針などのある高い建物があれば、壁際や軒下から離れた建物の周囲は比較的安全です。逆にグラウンドやゴルフ場、海岸や山頂など、周囲に高い建物がなく、自分が最も高い場所になる場合は、自分に落雷する可能性が高くなり、大変危険です。
雷雨の状況で傘をさして歩く、あるいは雷鳴が聞こえる状態で、ゴルフクラブや釣り竿などを高く掲げると、落雷の可能性が高くなります。「雷は金属に落ちるから、メガネや時計、アクセサリーを外せば大丈夫」と思う方がいるかもしれませんが、金属の有無よりも重要なのは高さなのです。
また、万が一雷に打たれても、「ゴム製のレインコートを着ていれば大丈夫」「ゴム製の長靴を履いていれば感電しない」と思う方もいるかもしれません。しかし、ゴムであろうと、レインコートや長靴程度の絶縁体は無力です。落雷はこうした素材を一瞬で破壊してしまいます。装備品で雷を回避することはできません。とにかく建物や乗り物の中へ逃げてください。
「雷しゃがみ」は非推奨
「雷しゃがみ」というポーズをご存じですか。両足をそろえて、その場で姿勢を低くするというものです。避難が間に合わない場合、この雷しゃがみをすることで落雷を避けるというアドバイスが、これまでなされてきました。
以前は有効な姿勢とされていましたが、近年の研究や検討により、「しゃがんでいる暇があるなら少しでも早く建物や乗り物の中へ逃げる」ことが重要であるという方針に変わり、雷しゃがみについては「無駄ではないが推奨はしない」という方向に変わっています。防災の常識は少しずつ変化しています。
プロフィール
たかにともや
備え・防災アドバイザー。地震対策からパンデミックへの備えまで、各種防災情報を講演会やメディアを通じて解説するアドバイザー。防災系YouTuberとしても活躍中。最新刊は『防災リュック はじめてBOOK』(徳間書店)。
【高荷 智也(ソナエルワークス代表)=文】
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