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【特集】ウェルネス拠点が完成 新しいまちが動き出した あらお海陽スマートタウン(熊本県荒尾市)

  • URPRESS 2026 vol.86 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

約35haもの広さを誇る競馬場跡地に、「ウェルネス」をコンセプトにした新たなまちが生まれている。
熊本県荒尾市で進むまちづくりは、現在、第2フェーズがスタートしたところだ。

まちの中核施設 道の駅がオープン

「あらお海陽スマートタウン」の中核施設が6月にオープンした。写真左奥の建物が「道の駅ウェルネスあらお」、右手にあるのが市の保健・福祉・子育て支援施設「Mirairo」。

今年6月にオープンした「道の駅ウェルネスあらお」の駐車場には、平日にもかかわらず九州各地のナンバープレートを付けた車がずらり。中に入ると熊本県の特産品をはじめ、農産品や水産加工品、弁当などを求める人々があふれ、屋上のオープンテラスでは、目の前の有明海を眺めながら、道の駅で購入した弁当を広げる人たちもいる。

その隣にあるのは、市民向けの行政サービス機能や遊び場スペース、託児所を備えた保健・福祉・子育て支援施設「Mirairo(みらいろ)」。こちらには地元をはじめ遠方からも親子連れが頻繁にやってくる。道の駅の建物との間には大屋根広場があり、6月には海陽公園もオープンした。

これが荒尾市でまちづくりが進む「あらお海陽スマートタウン」の中核施設だ。

荒尾市都市計画課の畑田康彦さんは、「子育て支援の行政施設と道の駅を合わせたウェルネス拠点施設ができあがり、やっと新しいまちのベースができたところです。ここまでは順調にきましたが、これからがまちづくりの正念場だと思っています」と話す。

ここは正面に雲仙普賢岳を望み、有明海の夕日の美しさでも有名な場所。荒尾市には世界文化遺産の万田坑や、西日本最大級の遊園地グリーンランドもあり、新しいまちが観光の起点になることも期待されている。
上空から眺めるあらお海陽スマートタウン。
道の駅と「Mirairo」の間には、イベントにも使われるオープンスペース、大屋根広場がつくられている。

地権者に丁寧に対応 スムーズに事業が進んだ

かつて石炭産業で栄えた荒尾市だが、1997(平成9)年に炭鉱が閉山されると人口は徐々に減少。2012年には荒尾競馬場も閉場となった。新たなまちづくりが進むのが、約35haもの広さがある、この競馬場跡地だ。市は跡地の整備検討を進め、URも参画して16年に「南新地土地区画整理事業」の事業認可を取得。「ウェルネス」をコンセプトにしたまちづくりがスタートした。

競馬場跡地には約160人の地権者がいる。荒尾市から事業支援を受託したURは、市の担当者とともに一人ひとりの地権者を訪ね、土地を整理・再編する換地設計に取り組んだ。

「地権者が点在する状態のなか、土地を『自ら使用』『共同で売却』『共同で賃貸』という3つの選択肢を提示し、地権者一人ひとりの意向に合わせた換地を丁寧に進めていきました」とUR九州支社の丹生彰一が説明する。

「URさんからアドバイスされ、申出換地(もうしでかんち)という手法を採用したことで、非常にスムーズに換地設計を進めることができました」と畑田さんも言葉を添える。こうして土地区画整理事業が進められていった。

現在の「あらお海陽スマートタウン」を見ると、住宅街区や集合住宅エリアに約200人が居住。ビジネスホテル、病院の建設も予定されている。その他にも、24時間営業の大型スーパーが出店。南側には競馬場の歴史を伝える施設「BAOO荒尾」が開業した。地区南端では温泉を掘削中で、温泉付き宿泊施設も計画されている。

そして今年6月に、先に紹介したウェルネスの中核施設「道の駅ウェルネスあらお」がオープンし、この新しいまちに人々がやってくるようになった。

「道の駅ウェルネスあらお」の屋上はオープンテラスになっていて、海を眺めてくつろげる。
地元のお土産をはじめ、農産品、加工品などがそろった「道の駅ウェルネスあらお」の直売所。道の駅には焼肉やハンバーガーなどの飲食店も入っている。

第2フェーズはまちの価値向上を目指す

ここからが次のフェーズだと意気込むのは、荒尾市職員として地域プロジェクトマネージャーを務める加藤雅啓(まさひろ)さん。新しいまちのコミュニティーづくりがしたいと、志願してこの職に就いた加藤さんは、「例えば道の駅で地元の食材を買い、隣の『Mirairo』にあるキッチンで調理して、それを道の駅のテラスで食べるようなイベントもできます。『BAOO荒尾』での乗馬体験や海沿いのウォーキングなど、まちの『ウェルネス』というコンセプトを生かした体験をきっかけに、人と人が緩やかにつながる温かい関係性を育んでいきたい。そこから生まれる新たなコミュニティを通じて、まち全体の価値を上げていきたいです」と意気込みを語る。

また、ここに人々が集まることで、約400m離れたJR荒尾駅周辺の活性化につなげたい、という思いもある。これまでも地域のプレイヤーと連携して、URは市とともに駅前活性化の社会実験を行ってきた。そこに新たな動きも期待されている。

「競馬場が閉場して14年。やっと持続可能なまちをつくる道筋ができたところです。人が集まり、そのにぎわいが市内全域に広がる、その起点となるまちに育ってほしい」と畑田さんがいえば、加藤さんは「あらゆる世代の方が、ここに来れば楽しさや心地よさを得られるようなイベントやプロモーションを通じて、人と人をつなぎ、まちを盛り上げていきたい」と語る。

URの丹生は、「ここに来る方が、穏やかで安らかな表情になるまちに」、URの國本望央(くにもとみお)は「各事業者さんやプレイヤーさんの思いを汲みながら、お互いを尊重し、支え合っていけるまちになるといい」と話してくれた。

見上げると、生まれたばかりのまちを見守るように、雲の上から雲仙普賢岳が顔をのぞかせていた。

新たなまちづくりに力を合わせるメンバー。左からURの國本、荒尾市の加藤さん、畑田さん、URの丹生。「Mirairo」1階のあそびスペース「みらいろパーク」で撮影。
「Mirairo」には写真の「みらいろパーク」のほか、託児ルーム、多目的スペース、調理室、相談室などと、行政事務室が備わっている。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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