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【特集】UR×武庫川女子大学×阪神電鉄 灯(あかり)をつくってナイトピクニック 大学生の発想と行動が感動を呼ぶ! 武庫川団地(兵庫県西宮市)

URPRESS 2022 vol.71 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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阪神電鉄で長年活躍した車両「赤胴車(あかどうしゃ)」が、武庫川団地内の広場に設置されて1周年となる今年7月。
「みんなでつくった灯で赤胴車を飾り、ナイトピクニックをしよう」という
大学生発案のイベントが開催され、反響を呼んだ。

飲食物持ち寄りのナイトピクニック

7月9日に行われたナイトピクニック。「たくさんの人が静かに夕涼みを楽しむ光景を、学生たちが団地内につくることができたのがよかった。なかなかつくり出せない光景だと思うので」と水野准教授。20時まで開催。

7月の土曜日、武庫川団地の「赤胴車のある広場」には、これまで見たことがない光景が現れた。暮れなずむ広場のあちこちで、若いカップルやファミリー、友人同士などが、ピクニックシートを広げ、小さな灯のもと、思い思いにのんびりと過ごしているのだ。

その光景は、大学生と共に、このナイトピクニックイベントの準備を進めてきた大人たちに、安堵と衝撃、感動をもたらした。

「実は当日まで心配していたんです」と関係者は口を揃える。ステージでの演奏も華やかなライトアップもなければ、飲食店が多数出店するわけでもない団地内の夜のイベントに、果たしてどのくらいの人が来てくれるのかと。

「同じ日に開催した赤胴車灯工房(ワークショップ・キャンドルナイト)にはある程度の来場を見込んでいましたが、ナイトピクニックにこれほど多くの人が来てくれるとは! 用意していた配布用の200枚のうちわは早々になくなり、学生さんたちの力の大きさを感じました」とURの平野蒼依(あおい)は驚きを隠せない。

麻ひもでランプシェードをつくるワークショップ「赤胴車灯工房」は7月2日と9日に開催。
手づくりのランプシェードを赤胴車に飾ったり、ナイトピクニックに持参したり。
高層の集合住宅で構成されている武庫川団地。約5000世帯が暮らす関西最大規模の団地だ。
団地内広場に設置された赤胴車は、ワークショップやサークル活動などにも利用されている。
武庫川団地の19号棟

若い世代も楽しめるイベントを開きたい

「ランプシェードを地域の人と制作して広場を飾り、ナイトピクニックをする」という企画を立て、中心となって実現したのは、武庫川女子大学の大学生だ。「地域連携」を「教育」「研究」と並ぶ3本柱としている武庫川女子大学とURは、2014(平成26)年に包括連携協定を締結し、武庫川団地および近隣の浜甲子園団地で、多世代交流の活発化、コミュニティー活動の充実に向けて、さまざまな学部と連携活動を続けている。

今回のイベントは生活環境学部生活環境学科まちづくりコースのフィールドデザイン演習の授業の一環。昨年度の授業で武庫川団地で調査と分析を行い、課題解決の提案を行ってきた学生たちが、今年はグループワークとして、実践にまで挑んだ。メンバーは8人。代表の占野早苗さんは、以前は団地に対して薄暗くて静かなイメージを抱いていたという。

「実際に武庫川団地に来てみたら、公園や緑がたくさんあって、子どもたちが走り回っていて。散歩道や運動ができるスペースもあって驚きました」と目を輝かせる。

学生たちが調査を重ねるなかで気づいたのは、子育て世代や高齢者への働きかけはあるものの、20代に向けたアプローチがほとんどないこと。そこで豊かなオープンスペースを活用し、自分たちも参加したくなるような若い世代向けのイベントを考えた。団地の外の人にも参加してもらいたいと、赤胴車のライトアップを企画。あわせてランプシェードを手づくりするワークショップと、大学生の間で流行っているピクニックを、若い人たちが参加しやすい夜に開くことを提案し、さまざまな調整、準備を重ねてきた。

「URでもこれまでいろいろなイベントを開催してきましたが、夜の開催という発想はありませんでした。今回学生さんからたくさんの感動と刺激を受けました。来場された方の表情やアンケートからも感動が伝わってきました」

とURの中谷 仁は振り返る。URの渡辺竜生も「来場者の方からも、こんなことができるんだね、すごくよかったよねと言ってもらえて安心した」と話す。

今回のイベントを担った武庫川女子大学のメンバー。3、4年生が協力して試行錯誤の末、成し遂げた。
7月9日の昼間は広場でマルシェが開催された。大学生はモルックというフィンランド発祥のゲームも用意。棒を投げて木の円柱を倒すゲームは幅広い世代に人気だった。
広場で開催されたマルシェの様子

互いに刺激を受けながら

赤胴車の前で。右から武庫川女子大学の水野准教授、占野さん、URの平野、渡辺、中谷。

指導教官の武庫川女子大学准教授・水野優子先生は、今回の取り組みの成功の背景として、地域活性化を目的とした包括連携協定をそれぞれ結んでいる阪神電鉄、UR、武庫川女子大学の産官学の連携を挙げた。

「大学生にとって、ふだん触れ合う機会がない、立場や世代の違う方たちに、やりたいことを伝えたり、アドバイスをいただいたりするのは非常に貴重な機会です。URさんも阪神電鉄さんも真剣に向き合ってくださり、それが学生たちに響いたと思います。イベント当日に自治会長さんや来場者など地域の方とコミュニケーションをとれたことで、学生のまちづくりへの学びもぐっと深まりました」

車内中吊り広告や団地の掲示板用のポスターのデザインに関するやりとり、イベントの進行・対応マニュアルの作成など、大学生にとっては初めてのことばかり。

「目の前のことに必死な私たちに、先のことを考えて動くことの大切さを教えてくださり、とても勉強になりました」と占野さん。

地域のためになるイベントを目指して話し合い、準備を進めてきた時間は、立場や世代を超えて、互いに刺激し合う、気づきに満ちた時間でもあった。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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