【特集】UR×京都女子大学 若い感性とコラボしたテーマのある部屋で、新たな層にアピール 洛西(らくさい)福西公園団地(京都府京都市)
学生が考えたプランで、実際に団地の部屋をリノベーション。
テーマのある部屋に共感した若い世代が入居する。
そんな団地活性化を目指して行われている、京都女子大学との画期的な取り組みをご紹介しよう。
5回目の設計コンペリノベプランが決定
1972(昭和47)年に開発が始まった洛西ニュータウンは、京都市の南西部に位置する大規模なまち。URはここに6つの団地を展開しているが、2013(平成25)年からこのニュータウンでユニークなリノベーションが行われている。京都女子大学(以下、京女)家政学部生活造形学科の学生たちが、若い感性で団地の住まいを考える「京女×UR 洛西ニュータウン団地リノベーションプロジェクト」だ。
このプランを考える学生たちのコンペは2年に1回開催され、選考会を経て受賞した作品はこれまでに18プラン。合計90戸が実際にリノベーションされた。
そして今年、5回目の設計コンペが開催され、学長賞と優秀賞が決定。2つのプランのリノベーション住戸が、今年10月、洛西福西公園団地に完成した。
学生の感性に期待リノベ住戸が人気に
京女との取り組みを始めたきっかけをUR西日本支社の濱中一郎はこう説明する。
「当時の洛西ニュータウンは入居開始から40年近くが経過し、世代交代とライフスタイルの多様化が進むなか、若年層や子育て世帯のニーズに応える住宅が必要だと考えました。そこで洛西ニュータウンでフィールドワークをされていた京女の井上えり子教授のご協力のもと、このプロジェクトが始まりました。これまでに完成したリノベーション住戸は、狙いどおり、多くの若い世代の方にご入居いただいています」
学生たちのリノベーションプランは、暮らし方のコンセプトが明確で、URの若手設計士たちにも刺激を与えているそうだ。「URも大学側も、ともにウィンウィンの関係になっているのでは?」と濱中は言う。今後はこのリノベプランを他の団地にどう横展開していくかが課題だという。
キャンパスではできない本物の学びがある
それでは今回の受賞プランを紹介しよう。学長賞は、川嵜(かわさき)智絵さんと菊田衣純さん(ともに4回生)の「ひととき」だ。
「団地はコミュニティーが豊かで、人と人との距離が近いなと感じました。そこで、人が来やすく、集まりやすい空間をつくろうと、このプランを考えました」と川嵜さん。施工に際しては、予算との兼ね合いでプランを変更せざるを得ない場面もあった。「でも、ベンチの木の質感だけは絶対に妥協しませんでした」と菊田さん。2人とも「大学時代のいい思い出になりました」と笑顔で話してくれた。
優秀賞は吉村さわさん(3回生)の「つくり・つながる暮らし」。吉村さんはこのURとの取り組みに参加したくて京女を目指したそうで、「学生のうちに、自分のプランを実際に形にできる経験は本当に貴重なので、ぜひ挑戦したかった」と言う。「住まいにこだわりのある人が、その人のこだわりを詰め込んだ部屋にしてくれるといいな」と夢を語った。
第1回目から指導する井上えり子教授は、URとの取り組みを評価してこう総括してくれた。
「自分のプランで本物のリノベーション住戸をつくるという経験は本当に貴重で、キャンパスの中では決してできない学びがあります。建築の現場での対応や、予算の中でどうやってより良いものをつくっていくかという工夫など、大学では学べない生きた教材が、学生たちを大きく成長させてくれます」
学生たちが考えたテーマのある新しい部屋が、新しい人々を呼び込み、新しい団地の暮らし方を創造する。そこに団地の未来が見えるようだ。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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