【特集】UR×札幌市立大学 多世代交流の「場」づくりへ 大学と連携して トライを続ける あけぼの団地(北海道札幌市)
札幌市南区にあるあけぼの団地は、高齢化が進むなか、団地再生事業も進行中。
世代間のコミュニティーを維持・活性化しようと札幌市立大学のメンバーたちが模索しながら活動している。
3年ぶりにイベントを開催
10時のスタートに向けて準備を進めるメンバーから、「あーあ、降ってきちゃった」とため息がもれた。9月の日曜日、3年ぶりに団地の広場でイベント「あけぼのテラス芸術祭」が開かれる朝、無情にも空からは雨粒が落ちてきた。
URは2017(平成29)年に札幌市立大学とあけぼの団地を含む真駒内地区のまちづくりにかかわる覚書を交換し、あけぼの団地を拠点として大学とともにまちの活性化に向けた取り組みを行っている。今日はその活動の一つとして、札幌市立大学の学生たちと団地自治会、地元の高校生などが参加して「あけぼのテラス芸術祭」が開かれる。元札幌市立大学で現在富山大学で教鞭をとる籔谷祐介講師も、富山大学の学生とともにイベント運営のため現地を訪れた。
学生たちは今日のために自治会と話し合いを重ね、企画を練り上げてきた。これまでもさまざまなイベントを実施してきた団地活性化の活動は「あけぼのテラス」といい、札幌市立大学と富山大学の学生たちが参加している。
リーダーの新井珠加(たまか)さん(札幌市立大学4年生)は、1年生のときからこの活動に参加しているが、コロナ禍で2年間はほとんど活動ができなかった。ようやく今年から月に1回、団地の集会所で「あけぼの金曜市」が開かれるようになった。これは買い物に不便を感じる高齢の方のために、野菜やパンなどを集会所で販売するのだが、新井さんたちはこの日に合わせて団地を訪れることにした。
「この団地にはお一人暮らしの高齢者が多く、あまり外に出てこられない方も多いと聞いていたので、買い物に来られた方に『ちょっと休憩しませんか』と声を掛けておしゃべりをしました。完全に雑談なんですが、そのうちだんだん顔見知りの方が増えてきて、今日のイベントも『どんなことをしたら楽しめますかね?』と意見を聞いたり。少しずつ交流が深められるといいなと思っています」と新井さんが説明する。
多世代交流のための「場」づくりが課題
北海道エリアを担当するURの谷 将宏は、「あけぼの団地は高齢化が進むなか、団地再生事業が始まっています。高齢の方が住み慣れた住棟から別の住棟に移るケースが出てくるため、大学と連携しながら、長いスパンでコミュニティーづくりを考えていく必要があります」と話す。
札幌市立大学の山田信博准教授と、富山大学の籔谷講師は、UR、団地自治会と「あけテラ会議」という定例会を開き、団地の問題を話し合っている。自治会の方から団地の集約によるコミュニティーの維持が不安だという意見が出て、人がつながる場づくりをメインテーマのひとつにした。
「今回のイベントは、どういう活動をすれば人が集まり滞留するかを見るための、実証実験でもあります。現場をビデオに撮り、アンケートで検証して、それを日常にどう落とし込むか学生とともに考えます」と籔谷先生。
この日はあいにくの天候にもかかわらず、団地にお住まいの方のみならず、プログラムに参加する子どもとその関係者が団地の外からも多く集まり、500人以上が来場した。
「こういう活動ができるオープンスペースがあることは、団地の強みですね。屋外スペースを有効に使えば、新たなコミュニティーを形成するポテンシャルは十分にあると思います」(籔谷先生)
山田先生も「これからもあけテラ会議での話し合いを続けながら、効果があるものは常設にする、回数を増やすなど、さまざまなトライを続けていくことが大切です。学生からも、集まる場を屋台にしたら、などいろいろなアイデアが出ています」と話す。
団地の資源を生かしながら、団地を地域に開いて、周囲の人たちとも場を共有する。老若男女が楽しめる場をつくる。あけぼの団地は大学や地域と連携しながら、これからも団地の未来を豊かにするトライを続けていく。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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