【特集】UR×中部大学 団地に住んで、地域を盛り上げる イベントを企画(高蔵寺ニュータウン 愛知県春日井市)
来年で誕生から55年を迎える高蔵寺ニュータウン。団地に新たな活力を吹き込むと期待されるのが、ニュータウン内の団地に住む地元・中部大学の学生たちだ。
コロナ禍にめげず、地域に貢献できる活動を模索している。
学生が主催した紙ロケット教室
夏休み中のある月曜日、団地集会所にたくさんの親子連れが集まってきた。今日はここ高蔵寺ニュータウンにある藤山台団地集会所で、中部大学宇宙航空理工学科の大学院生・学生による「紙ロケット教室」が開かれる。部屋に入ると、テーブルにはパーツごとに切られた型紙と糊などが置かれている。学生たちのサポートを受けながら、これを組み立てて紙ロケットを作って飛ばそうというイベントだ。
高蔵寺ニュータウンはURの前身である日本住宅公団が名古屋市のベッドタウンとして造成した、約700ヘクタールに及ぶ大規模ニュータウン。日本で二番目に古く、最初に完成した藤山台地区の入居が始まったのは1968(昭和43)年。日本の経済成長とともに人口は増え続けたが、95年をピークに減少に転じ、今は藤山台団地も高齢化が進んでいる。
そこで2014(平成26)年、団地に若い世代を呼び込み、活性化を図ろうという試みが始まった。
団地も学生もURもウィンウィンの関係に
「この年の12月に、地元の春日井市と、同市にある中部大学、それにURの三者で確認書を締結し、URと中部大学の間で『地域連携住居制度』がスタートしました」
こう説明するのは、UR中部支社団地マネージャーの中村寿宏。これは団地自治会が主催するイベントなどの地域活動に参加することを条件に、中部大学の学生は団地に割安な家賃で住むことができる制度で、初年度の2015年は17人が入居。その後、入居者は増え、多いときには80人になったこともあった。今年は41人が団地に住んでいる。
この間、学生たちは夏祭りなどのイベントの設営を手伝ったり、団地集会所でコーヒーサロンを開いて団地の皆さんと交流するなどの活動を展開してきた。自治会側にとっても、学生がいなければ行事が成り立たないというほど信頼関係が生まれ、お互いウィンウィンの関係が続いていた。
だが、コロナ禍で状況が変わった。この2年間、人が集まるイベントは中止となり、コーヒーサロンも開かれなくなった。
学生発案のイベントで新たな活性化を
そんなときに学生が発案したのが、今回の「紙ロケット教室」だ。中部大学学生支援課の唐木純也さんは、「今回は学生たちから、自分たちの学んだことを地域の人たちに還元したいと申し出があって実現したイベントです。これまでは団地自治会さん主催のイベントへの参加、運営補助がメインでしたが、これからはこのように学生が主体となってイベントを企画・運営して、地域貢献すると同時に、学生たちの新たな学びにつながる活動を考えていきたいですね」と話す。
今回の発案者の一人、横尾 光さんは宇宙航空理工学科の大学院生。「宇宙がメッチャ好きな男の子がいて、話すのが楽しかった」と手応えを感じた様子。同大学院生の山本瑞稀さん、大学4年の田辺奈央さんも、「子どもたちがたくさん来てくれたのでよかった~」とうれしそうだ。
ボランティアで参加したのは、現代教育学部4年生の髙野洋輝さんと、経済学部2年生の石川 慧さん。髙野さんは4年間この団地に住んでおり、コロナ前に開いていたカフェも手伝っていた。「高齢の方ともいろんな話ができて、結構楽しかったですよ」と言う。石川さんは去年からの入居で、こういうイベントの手伝いは初めてだ。
「この団地に住んでよかったです。家賃が安いのはもちろんですが、ここには仲間がいますから」と横尾さん。「次は子どもたちにペットボトルのロケット作りを教えてあげたい」と田辺さん。
学生たちは大学では出会わない世代の人たちと自然に交流し、団地暮らしに溶け込んでいる。コロナ禍が落ち着いて、さらなる世代間交流が進むことを期待したい。
【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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