【特集】UR×横浜国立大学×旭区 左近山の魅力を発信! 大学生が地域の架け橋に 左近山団地(神奈川県横浜市)
学部や学年の枠を超えて、大学生が、さらには卒業生も加わり、さまざまな地域交流活動を展開している団地がある。
横浜市西部、旭区の左近山(さこんやま)団地だ。ここでの横浜国立大学の学生たちの活動に注目が集まっている。
27名のメンバーが自主的に活動中
横浜国立大学と旭区、URで「左近山(さこんやま)団地における大学生による地域支援活動事業に係る連携協定」が締結されたのは、2017(平成29)年のこと。当初は学生が左近山団地に居住し、地域活動を行う事業としてスタートしたが、その後、学生たちが「サコラボ」を立ち上げ、今では居住の有無にかかわらず、さまざまな学年、学部の学生たちが積極的に活動を展開している。昨年度から大学の履修科目「地域課題実習」にも認定された。
現在サコラボのメンバーは27人。代表の河野奏太さんは滋賀県出身の4年生。建築模型を制作するための広めの賃貸物件を探していたときに左近山団地の話を聞き、2DKの部屋に引っ越してきた。
「以前は引っ込み思案な性格でしたが、左近山団地に住むようになって変わりました」と河野さん。 サコラボの活動を通して、地域に顔見知りが増えて、今では挨拶したり道端でおしゃべりしたりするのが日常になっている。
サコラボメンバーは、自分たちで製作したピザ窯で焼いたピザを団地内のイベントで提供したり、映画上映会を開催したり、防災フェスを企画したり。中学生の学習サポートも定期的に行っている。
「楽しく取り組みたいので、まずは自分たちがやりたいことを大事にして、地域の人がやってほしいこと、地域のためにやったほうがいいこと、その3つのバランスを考えながら活動しています」
そう語る3年生の落合佑飛(ゆうひ)さんは地元旭区出身。活動を通して感じているのは、左近山団地には、相談できる人がたくさんいること。やりたいことがすぐに実現できなくても、ここでダメならあっちはどうか、相談する相手や順序を考えたり、提案の仕方を工夫することを、左近山で学んだという。
一番の相談先は、団地内にあるコミュニティーカフェ「ほっとさこんやま」だ。地域団体の連携で立ち上げた「NPO法人オールさこんやま」が運営するカフェで、団地内外のさまざまな人がやって来る。地域の核となっているスペースだ。
左近山連合自治会会長で、オールさこんやま理事長も務める林重克さんは、「大学生が団地内に新たな視点や交流を持ち込んでくれている」と話す。孫が近くにいるような喜びを感じている年配の住民も多いそうだ。活動に参加して2年目、東京在住のメンバー中村優真さんは、「左近山は外から来る人も温かく受け入れ、応援してくれる土壌、魅力がある」と語る。
このような状況について、URの三小田優希が「地域で理想的な関係が育まれていて、イベントの実行力もあり、こちらが入る隙がないくらいです」と話すと、「URさんの協力なくしてできない活動です」と林連合会長。団地では難しいと思われるような学生のアイデアに対しても、「それはできない」というのではなく、「できる方法はないか」と共に考えてくれるのがありがたいと語る。
左近山での経験と学びを生かして
今春、「横浜アクションアワード2022*」で、サコラボの活動は大賞と会場賞をダブル受賞した。「卒業後も活動をつないでいくことが大事なので、地域の子どもたちや高齢者の架け橋になることを目的に活動している」と学生たちは話す。左近山団地の魅力を伝え、交流人口を増やし、さらなる活性化に貢献したいという熱意にあふれているのだ。
頼もしいのは、学生たちが左近山での経験や学びを、他でも生かそうと考えていること。河野さんは地元でも何かできるかも、と滋賀県大津市の地域活動グループと共同でイベントを開催した。落合さんは、まちづくりを支援する会社を仲間と起業。三重県鳥羽市をはじめ、すでに12都道府県で活動中だ。また、土木工学を学ぶ中村さんは、「左近山の市民主体のボトムアップ活動からの学びを生かして、まちづくりに貢献していきたい」と話す。左近山同窓生が日本のあちこちで活躍する。そんな未来は遠くないかもしれない。
*若者と地域のパートナーシップ活動を広めることを目的に、NPO法人アクションポート横浜が主催。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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