【特集】90代と60代の親子が営む人気の釣り堀 小さな釣り堀屋 千鳥橋団地(大阪府大阪市)
団地内に釣り堀があると聞いて、千鳥橋団地を訪ねた。
遠方から通う親子も珍しくない、人気のスポットだ。
休日は親子連れが次々にやってくる
商店や美容室が並ぶ団地商店街の1階にある「小さな釣り堀屋」。営業は12~17時(土・日・祝日は11~18時)。年中無休!大阪難波駅から阪神なんば線で5駅目、千鳥橋駅から徒歩6〜7分。千鳥橋団地の1階の店舗が並ぶ一角に、「小さな釣り堀屋」はある。日曜日のお昼過ぎに訪ねると、数組の親子連れが釣りを楽しんでいた。「鯉つり」は道具・エサ代を含めて1時間1000円。お試しなら30分500円だ。金魚&メダカすくいは1回200円。
しばらく見ていたら、バシャバシャと魚が暴れる大きな音がして、少年が大きな鯉を釣り上げ、うれしそうな笑顔を見せた。周りからは「おお〜」と歓声が上がる。
来店している親御さんに話を聞くと、「手ぶらで気軽に釣りを楽しむことができてありがたい」「ここで初めて釣りを体験した子どもがハマってしまって、1時間以上かけて通っています」「雨の日でも遊べる貴重な場です」と、皆さんこの釣り堀がお気に入りのよう。釣り堀を求めて、初めてこの団地に来たというファミリーもいた。
いつでもお祭り気分が楽しめると人気の金魚すくい。すくった中から、1回につき1匹持ち帰れる。高価なメダカも交じっている。
シニアの仕事の場として 開店。96歳で現役
この釣り堀は開店の経緯が面白い。中瀬孝富(たかふみ)さんに話を聞いた。
「父が高齢になって、ぼうっとして過ごす時間が増えたのが気になっていまして。高齢でもできる仕事はないかと考え、釣り堀がいいのではと、父に相談しました」
当時88歳だった父親の孝治(たかじ)さんの「やりたい」との返事を得て、釣り堀を大阪市内にオープンしたのが約7年前。孝富さんはいろいろ調べ、生簀やテーブルなどを自ら作り上げたという。
そして2024年、現在の千鳥橋団地のスペースが空いたタイミングで移転してきた。決め手は「自宅からの近さと天井の高さ、環境の良さ」。釣り竿を振れる高さのある空間はなかなかないそうだ。
「ここは団地の敷地がゆったりしていて、まわりの環境もいいです」
そんな話を孝富さんから聞いていたら、父親の孝治さんが自転車に乗って颯爽とご出勤。さっそく金魚やメダカの様子を確認し始める孝治さんに仕事のやりがいについて尋ねると、「子どもたちが来てくれるのがうれしい」とのこと。苦労はないが、日々気になるのは魚の状態で、「魚が元気でいることが何よりうれしい」という。
お客さんとのやりとりが刺激にもなって元気をキープしているという孝治さんだが、さすがに96歳。息子の孝富さんは気にかけ、お店のホームページに次のようなお願いを掲載した。「当店は、父親が少しでも長く元気に過ごせるようにとの思いで始めた釣り堀です。父は高齢になり、耳が遠く、物忘れも強くなってきました。お客様にご不便やご迷惑をおかけすることが多々あるかもしれません。温かく見守っていただけますと幸いです」。店内もなるべくお客さんにセルフサービスで楽しんでもらえるような仕組みを整えている。
「始めた当初は2年くらいかなと思っていたんですが、7年も続いていて驚いています。儲けはほとんどないけれど(笑)、父が元気でいてくれるのが何よりです」
中瀬さん親子。2人とも元パティシエだ。
釣り用の生簀には200匹ほどの鯉と巨大な金魚が泳いでいる。
1972年に管理開始した千鳥橋団地。梅田や難波へ30分圏内、生活の利便性と自然環境の良さが魅力の団地だ。子どもたちに達成感と新たな世界の扉を
始める前は時間にゆとりのある年配の方の来店を想像していたが、蓋を開けてみたら、8割が親子連れで驚いたという孝富さん。
「こんな小さな釣り堀屋なんですが、夏休みなど入場制限して待っていただくことも多くて。最近は釣りの経験がない子が多いので、ここで釣れる喜びや達成感を味わってもらえたらと思っています」
そのためには魚を「食欲があってエサに食いつく状態」にしておく健康管理が重要で、常に数百匹の魚に気を配る。それが一番大変とのこと。
子どもたちに達成感、成功体験をとの思いは、ポイと呼ばれる金魚すくい用の紙を破れにくい厚手のものにする心配りや、釣った魚をお菓子と交換できるサービスにも表れている。他にも、魚のウロコやミジンコなどを観察できる顕微鏡の用意や、宇宙における地球と月との距離を示す掲示物の工夫もある。
「小さな釣り堀屋」は、団地に親子を呼び込むきっかけに、そして子どもたちが新たな世界の扉を開く場になっている。
釣った魚の数に応じてお菓子がもらえる。
初めての釣りにドキドキしながら挑戦する子も。
たくさんの金魚が泳ぐ、金魚すくいコーナー。
釣った魚を持ち帰る場合は、ペットボトルに入れてもらえる。小さな釣り堀屋
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大阪市此花区伝法1-1 千鳥橋団地1号棟 101号
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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