キモチ、あつまるプロジェクト
今年も福島に集合!
URが主催する「キモチ、あつまるプロジェクト」が今年も8月19日~22日に開催され、15名の学生たちが福島県の双葉町、浪江町、大熊町を訪れた。
津波と原子力災害からの復興が進むまちで、課題を解決して地元に還元するのが、今回のツアーのミッションだ。
復興が進む大熊町を見渡す「CREVAおおくま」のテラスに集合した学生たち。福島の復興を学ぶ学生ツアーは、今年で4回目。だが今回は取り組み方が異なるという。
「これまでのツアーは、福島を見て、課題を考えるところまでで終わっていましたが、今回はもっと地元に還元できるツアーにしたい、という思いで企画を立てました。この4日間で課題を整理・検討し、最終的に解決策を形にするところまでもっていくつもりです」とURでツアーを担当する勝谷亜子が説明する。
URで今回のツアーを担当する災害対応支援部の勝谷。学生たちはツアーから戻った後も、9月から11月までオンラインでミーティングを重ね、12月には現地で実現させる企画を発表。来年2月に再び福島に戻って、その企画を実現する予定だ。「2月の企画実現のときには、まちの皆さんにも参加してもらって、グループごとに作成したもののお披露目会を行おうと考えています」と勝谷。福島の現状を学び、地元の人々から出された課題をチームで解決して形にするのが、今回のツアーのミッションだ。
被害を学び、復興の今を知る
1日目
初日は東日本大震災と原子力災害の実相を見学した。双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」で被災当時のリアルな映像や証言、データなどを丁寧に見ていく学生たち。見学後はそのまま歩いて福島県復興祈念公園にある国営 追悼・祈念施設へ。公園内には柱だけを残して1階部分が空洞になった一軒家があり、津波の恐ろしさと15年の歳月を目の当たりにした。
原発で何が起こったのか。事故の経緯、地元の人の証言など貴重な記録が展示されている東日本大震災・原子力災害伝承館。
今年5月に開園した福島県復興祈念公園にある国営 追悼・祈念施設。
海に向かって設けられた献花台で、学生たちは手を合わせた。
福島県復興祈念公園内に残されている家は、津波の恐ろしさを伝えている。震災遺構 浪江町立請戸小学校を見学し、大平山へ。請戸小学校の児童たちは震災直後、大平山を目指して避難し、全員無事だった。その大平山のふもとに立つ慰霊碑で、語り部活動をしている舛倉美津枝さんが待っていた。「震災後、あちこちに避難したが、やっぱり請戸の風のにおいが忘れられなくて、浪江町に戻ってきました」と話す言葉が胸に響く。
津波の破壊力を目の当たりにする震災遺構 浪江町立請戸小学校。
大平山にある慰霊碑には、地震と津波で亡くなった方の名前が記されている。右は舛倉さん、左はツアーのファシリテーターで大熊町出身の南場優生海さん。宿での夕食時には、地元の語り部3名が、学生たちと一緒にテーブルを囲んだ。避難先から戻った双葉町の髙倉伊助さん、浪江町の佐藤秀三さん、大熊町の土屋繁男さんだ。食事の後は3名がそれぞれ、今の思いを語った。「町に戻ってきた自分たちが、今できることを目いっぱいやる。町が存続するためには、それしかない」と話す髙倉さん。将来に対する不安を抱えつつも、前を向く3人の話は、学生たちの心に静かにしみわたった。
1日目の夕食後、語り部の皆さんが、自分たちのまちへの思いを語ってくれた。2日目
2日目は復興の現状を知る日。バスで移動しながら、URが3町で手掛ける復興事業を中心に見学した。
スタートは大熊町の産業交流施設「CREVAおおくま」にある「中間貯蔵事業情報センター」。2045年3月までに県外で最終処分することを目標に、除染土を貯蔵する中間貯蔵施設の説明を聞く。ここに土地を提供した地元の人の思いなど、初めて知る事実を学生たちはしっかり書き留めていた。
中間貯蔵事業情報センターで説明を聞く。CREVAおおくまのテラスでURの大熊町での取り組みの説明を聞き、現地へ。大熊西工業団地、役場や住宅が立ち並ぶ大川原地区の見学は車窓から行った。続いて双葉町の地域活動拠点「FUTAHOME」でURの担当者からURの双葉町での取り組みの説明を受ける。そこから中野地区の復興産業拠点に移動して、復興が進む町の様子を雨上がりの屋上から眺める時間も。最後にURの浪江町での取り組みについて説明を聞き、盛土工事が進む福島国際研究教育機構(F–REI)の現場を見ながらバスは宿に戻った。
2日目、双葉町の地域活動拠点「FUTAHOME」でURの担当者から事業説明を受ける。
双葉駅西側に造られた住宅地を見学。
浪江駅近くにある現地事務所屋上で、浪江町のまちづくりについて説明を受けた。
この日のランチは、大熊町でレタスやミニトマトの栽培と弁当製造を手掛ける「FUN EAT MAKERS in Okuma」のレストランで。施設長の菅原正平さんから事業の説明などを聞いた。
2日目のランチでお話を聞いた大熊町の「FUN EAT MAKERS in Okuma」。この夜は、明日から取り掛かる4つの課題の出題者と、ファシリテーター(企画伴走者)として寄り添う地域プレイヤーも集まり、学生たちと食事を共にした。食事の後には、一人ずつ自己紹介や課題への思いなどを語る時間が設けられた。学生たちとそれほど年齢が変わらない地域プレイヤーたち。大熊町出身者もいるが、大半は県外からの移住者だ。彼らが今ここにいる理由や、復興半ばのまちで挑戦していることなど、もっと聞きたいと思わせる興味深い話ばかりだった。
4つの課題に取り組む
3〜4日目
3日目。いよいよ学生たちは4つの班に分かれて、それぞれの課題に取り組む。その課題とは、(1)コウド舎の佐藤成美さんから出題された「2年後になくなる家」を題材にした、人の暮らしや街並みの遺し方 (2)Ichido(株)代表の渡邉優翔さんからの、地域交流機能をもつ事務所の仕組みづくり (3)(株)ReFruitsの阿部翔太郎さんからは、キウイ畑に人をつなぐ家具作り (4)open roastery Alu.の深澤 諒さんは、コーヒー粉の再利用についてだ。
1班はコウド舎の佐藤成美さんと浪江町を歩く。左側はF-REIの工事現場だ。
2班のメンバーは、大熊町で地元の方と一緒に震災前に商店街があった場所を歩き、思い出を聞いた。
3班はReFruitsのキウイの圃場を見学。キウイがどのようになっているのか、初めて見た。
4班は焙煎室の見学後、「FUTAHOME」で深澤さんの話を聞いた。グループに分かれた学生たちは、午前中、それぞれの出題者やファシリテーターとともに現場のリサーチに向かった。まちを歩き、地元の方が語る震災前のまちの思い出に耳を傾けるグループ。キウイ畑の様子を観察したり、コーヒー豆の焙煎室を見学したり。出題者だけでなく、協力してくれる地元の方からも積極的に話を聞いて、インプットしていった。
復興が進む最先端の建物の目と鼻の先に、かつて商店街のにぎわいがあった。今は雑草で埋め尽くされた場所に、確かにあった住まいや商店の思い出にふれ、学生たちは何を感じたのだろうか。


3日目の夜は、双葉町の産業交流センターで開かれる恒例の「ふたば飲み」に参加。夏の夜を楽しんだ。午後はグループごとにリサーチ結果をまとめ、アイデアのブレーンストーミングを開始。言葉を付箋に書き出して、模造紙に貼り、それを整理し発展させる。「他の人の意見を聞いたり、みんなと討議したりするのが楽しい」という学生たち。うまく言葉にできず、頭を抱えるひと幕もあった。
4班に分かれ、それぞれにファシリテーターが付いたテーブルでは、活発な議論が交わされた。昨年このツアーに参加した2人のOB、OGも助っ人としてテーブルを回った。
行きつ戻りつしながらも、徐々にコンセプトがまとまっていった。
最終日は午前中いっぱいかけて昨日の続きを行い、企画の決定までもっていく。ファシリテーターからの指摘を掘り下げながら、模造紙に書かれた言葉を整理。最後に各班がコンセプトを発表した。
(1)「『2年後になくなる家』を題材にした、人の暮らしや街並みの遺し方」班は、「変わりゆく景色で石を積む」をコンセプトに、地域の皆さんからヒアリングして絵本や石碑を作成。そこに猫の視点も加えたり、F–REIの人にも伝えたりすることなどを提案。(2)「地域交流機能をもつ事務所の仕組みづくり」の班は、人が出会う仕組みをもっと考え、大熊町を愛する人をつなぐ場づくりを考えた。(3)「キウイ畑に人をつなぐ家具作り」班は、布の部分にキウイをデザインしたハンモック作りを提案。(4)「コーヒー粉の再利用」班は、コンポストと紙づくりを考えた。地域の再生事業に携わる谷田川佐和さんから寸評をいただき、今回のツアーは終了となった。
最終日、各班がコンセプトのまとめ状況を発表。
さらにブラッシュアップして、来年2月に実際に形にするところまでもっていく。
3泊4日の中身の濃いツアーは無事終了。学生たちの充実した表情が印象的だ。学生たちに4日間で一番印象に残ったことを聞いた。「自分と年齢が近い人たちが地域プレイヤーとして活動していることに刺激を受けた」「この3町には、まだ入れない場所があることに驚いた」「語り部ナイトに来てくださった地元の方の話を聞いて、自分も浪江にかかわっていきたいと思った」など、多様な出会いに新鮮な刺激を受けたことが伝わってきた。
学生たちの取り組みはまだ続く。最終的に地元にどのような形で還元することができるか、この続きはまた本誌でお伝えする予定だ。
今回のミッションを無事に終え、JR浪江駅で記念撮影。【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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