【特集】本を媒介に、人が集まる 団地の「場」が生まれている Bookstore Lbioアーバンラフレ志賀(愛知県名古屋市)
団地商店街に生まれた独立系書店。
隣にはシェア型書店もある。
本好きがつながる心地よい「場」が、商店街ににぎわいを生み出している。
オシャレな団地商店街に誕生した独立系書店
左が独立系書店「Bookstore Lbio」、右隣がシェア型書店「Bookbridge Lbio」。日本各地で昔から地元に愛されてきた「まちの本屋さん」が次々と姿を消していくなか、最近注目されているのが独立系書店といわれる店だ。これはオーナーの個性を生かした独自のセレクトが特徴の書店で、カフェなどの機能を備えている所もある。こういう書店があるまちにはカルチャーの香りが漂い、人が集まってくる。
そんな人気の独立系書店があると聞いて訪れたのは、名古屋市北区にあるUR賃貸住宅・アーバンラフレ志賀の商店街。団地商店街は一般道に面しており、おしゃれな雑貨店や薬膳カレーの店、人気のケーキ店などが並んでいる。通りの向かいには、小劇場を備えた図書館があり、その隣は緑の木々が生い茂る公園だ。
「この立地を見ていっぺんで気に入り、すぐにここに決めました」と話すのは、「Bookstore Lbio(ルビオ)」の店主・常澤愛実(ときざわめぐみ)さんだ。
企業を回る営業職に就いていた常澤さんが、営業先で知り合った現オーナー・黒田高明さんから、書店をやらないか、と声をかけられたことがそもそもの始まりだ。常澤さんも黒田さんも本好きで、好きな作家の話で意気投合した。黒田さんは自動車部品の製造業を営むかたわら、第二創業として「こういう書店をやってみたい」という夢を持っていたという。
「東京のUR賃貸住宅にある『手紙舎』というステキな店の記事を見て、こういう所もいいなと思っていたので、物件探しの候補にURのテナントも入っていました。この店は4.5坪と決して広くはないですが、天井が高いのが気に入っていますし、お家賃も手頃です。商店街の方々も、皆さんとっても親切でいい方ばかりなんです」と常澤さん。
Bookstore Lbioのオープンは2024年5月。店内には黒田さん、常澤さんがセレクトした新刊が並び、2人が好きな村上春樹さんのコーナーもつくられている。
「装丁がきれいで、ずっと手元に置いておきたくなる本、何度も読み返して、その都度感じ方が変わるような本を置きたい」と常澤さんが言う通り、思わず手に取りたくなる本ばかり。ドリンクも注文できるので、飲み物を手に、じっくり棚を眺めていたくなる。
行列のできるケーキ屋さんに薬膳カレーの店、雑貨店、美容院、自転車屋さんなどが並ぶアーバンラフレ志賀の商店街。
書店の前にはイベントの掲示板が。通りの向かいにある図書館から書店に来る方も多く、この掲示板の注目度は高い。
「Bookstore Lbio」の店内。本選びに迷ったら、常澤さんに気軽に声をかけてみよう。きっとおすすめの本を紹介してもらえる。本の話で盛り上がること間違いなし。
「最初は手探りでしたが、小さな書店ならではの人のつながりが生まれ、豊かさのある場所になっているのかなと思う」と話す店主の常澤さん。58人の棚主さんからつながりが広がる
すぐ隣でシェア型書店「Bookbridge Lbio」を始めたのは、25年2月。それまでもお客さんから、空いているスペースに自分の本が置けないか、と聞かれることがたびたびあったそうで、隣が空いたのを機にスタートさせた。
シェア型書店というのは、書棚をいくつもの棚に区切り、その棚の利用料を払った「棚主」がセレクトした本を販売する書店。Bookbridge Lbioでは58ある棚のすべてが埋まり、58人の小さな書店主が生まれている。空きを待つ人が10人もいるという人気ぶりだ。
ここでは棚主さん主催で読書会を開いたり、棚主さん同士の交流会が企画されたりすることもある。訪れた土曜日も、午後1時から「TAKEKUMA BOOKS」の竹熊宏観さん主催の読書会が開かれていた。学生時代から地元書店の棚主になっていたという竹熊さん。昨年インスタグラムでこの店を知り、商店街の雰囲気や、常澤さん、黒田さんの人柄にひかれ、すぐに申し込んだという。
「TAKEKUMA BOOKSのショップカードは、商店街の雑貨店で作ってもらったんですよ」と竹熊さんが教えてくれた。この日の読書会は、参加者が自分の推し本を教え合うスタイル。どんな本が登場するか楽しみだ。
店を訪れていた蜂谷直樹さんは、この団地に30年住んでいる。「団地の1階に、こういう書店ができて、本当にうれしいです。この店で、自分では選ばないような本を紹介してもらい、それを読んでみると面白くて……。そこから違う回路がつながっていく楽しさがあります」と話してくれた。
時には古本市を開いたり、商店街全体でマルシェを開いたりすることもある。
本を媒介に自然と人が集まり、「あの本読んだ?」「読みました」と会話が始まる。1軒の書店から、団地の中に大切な「場」が生まれている。
58の棚すべてに棚主さんがいる「Bookbridge Lbio」。棚主さんには、遠く三重県在住の方もいる。
TAKEKUMA BOOKS竹熊さん主催の読書会が開かれていた。参加者が自分の推し本を語る企画だ。
ブックカバーが何種類も用意されていて、本を購入すると好きなものを選ぶことができる。Bookstore Lbio
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愛知県名古屋市北区志賀町4-60-9
アーバンラフレ志賀23号棟101
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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