【特集】国際競争力を強化した新たなまちが生まれる 虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業(東京都港区)
江戸城の外堀にあった城門が、その名の由来である港区虎ノ門。
今では超高層ビルが立ち並ぶ大規模なオフィス街へと変貌を遂げつつある。
URはここで4つの事業を手がけている。
今回は虎ノ門二丁目地区の取り組みを取材した。
大規模病院建替等を機に再開発がスタート
変化の激しい東京の中でも、ここ虎ノ門の変貌ぶりには目を見張るものがある。2014(平成26)年、虎ノ門ヒルズ森タワーが開業し、このビルの脇を東西に延びる新しい道路、環状2号線(新虎通り)が開通。20年には地下鉄日比谷線の新駅・虎ノ門ヒルズ駅が開業した。
URは港区とともに、この環状2号線の新橋~虎ノ門周辺地区のまちづくりを総合的にプロデュースしている。その内容は、都市再生事業の推進、地元まちづくり組織の運営支援、地方公共団体の計画策定の支援、エリアインフラの整備という4つの柱からなる。
このなかで今回紹介する虎ノ門二丁目地区は、虎ノ門ヒルズの西側、虎の門病院と国立印刷局、共同通信会館があるエリア。建物の機能更新や安全で快適な歩行者ネットワーク整備といった地区の課題を解決するため、地権者が再開発の協議会を発足。URに対して再開発事業の施行要請があり、本事業が始まった。
病院の機能を止めず新たなビルを建てる
この事業のポイントの一つは、隣接する敷地と一体的・段階的に更新を進めることで、病院の機能を停止することなく施設の更新を実現すること。そのため、再開発はパズルのピースを動かすように段階的に進められることになった。
まず、国立印刷局の建物を解体し、そこに虎の門病院の新たな建物を造る。病院の機能が新たな建物に移ったら、旧病院棟を解体し、そこに新たな業務棟を造る。その建物が完成したら、最後に共同通信会館を解体し、そこを大使館前広場として整備するというものだ。
虎の門病院の新病院棟は19年5月に完成。現在は旧病院棟跡地に、38階建ての業務棟(虎ノ門アルセアタワー)を建設中だ。竣工は来年2月の予定。
URでこの事業を担当する井ノ上真太郎は、「病院と隣接した場所での工事は、救急車や来訪者など人の出入りも多いため、休診日に限定して行うなど、入院患者への騒音対策も必要です。病院の施設管理者とも調整・連携しながら工事を進めています」と説明する。
また、敷地内にはかなり高低差があり、安全で快適な歩行者空間が少ないといった課題もある。
「近隣の3つの駅に向けて歩行者デッキを整備し、周辺歩道を拡げるなど、歩行者ネットワークを改善し、緑道も整備します。また、共同通信会館を解体した跡地の一部を供出して、複雑な五差路になっているアメリカ大使館の交差点を改良し、あわせて周辺街区との結節点となる広場を整備します」
工事と設計を担当するURの目次(めつぎ)雄徒は、「既存の建物がある状態で、新しい建物を建て、しかもその2棟が、車路のある1階部分と歩行者デッキのある2階部分でつながります。そのため建築基準法や消防法などの各種法規をはじめ、クリアしなければならない課題が非常に多く、着工してからもその解決に工夫が必要でした」と説明する。
国際競争力のある魅力あふれるまちへ
来年2月に竣工する虎ノ門アルセアタワーは、国際競争力の強化を打ち出している。この事業を担当する日鉄興和不動産の事業開発本部・佐藤博之さんは、ビルの低層部分に国際ビジネスサービスセンターの機能を集約させると説明する。
「起業のためのシェアオフィスや、フィットネス施設、会議室などをはじめ、自転車通勤する方のための予約制の駐輪場やシャワーなども準備する予定です」
同社商業事業推進部の平出江里さんは、「このビルでは1階の緑道に面したテラス席と一体となった、食事ができるゾーンをつくる計画です。またオフィスで働く人だけでなく、病院で働く方々や来訪される方々を食の面で支えたいと考えています」と教えてくれた。
事業の完了は2030年の予定。そのときここは、都内最高レベルの災害時治療・収容拠点としての機能も有する場所となる。
URの井ノ上は、「新橋から虎ノ門に残る江戸から続く文化も受け継ぎつつ、ここに新しい風を吹かせていきたい。古いものと新しいものが融合したまちは、海外の方も働きたくなる、国際競争力の高い、魅力あふれるまちになるはずです」と期待を込めた。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影(人物)】
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