【特集】子どもの居場所を多世代交流の場に 「夏のDANCHI教室@多摩ニュータウン」(多摩ニュータウン)
多摩ニュータウンでは京王電鉄とURが連携し、2022年から夏休みの子どもの居場所づくりをスタート。
その取り組みが地域の魅力発見・向上、大人のチャレンジにもつながっている。
大人にも意味のある子どもの居場所
アトリエ金魚鉢作り、メタバース体験、射的・アーチェリー、茶道体験……。これは昨夏開催された「夏のDANCHI教室@多摩ニュータウン(以下、夏のDANCHI教室)」のプログラムのごく一部だ。京王電鉄とURの連携で、夏休み中の子どもの居場所づくりとして夏のDANCHI教室が始まったのは2022(令和4)年。団地やその周辺に住んでいる小学生を対象に、企業や大学、地元の方の協力を得ながら、学習や遊びなど多彩なプログラムを提供し、たくさんの人たちに利用されてきた。昨年は「村上春樹を読む」といった大人向けのプログラムも開催した。
「子どもの居場所づくりがメインですが、子育てで忙しい親御さんのサポート、また大人の学びのチャンス、学びの時間になればとの思いもありました」
と京王電鉄沿線価値創造部企画担当課長の澤 昌秀さんが説明してくれた。澤さんはURメンバーと共にプログラムの立案から、関係者との調整、さらには自ら茶道教室の講師としても夏のDANCHI教室に関わっている立役者だ。
地域のサポータープレイヤーを発掘
URと京王電鉄が、京王沿線およびその周辺地域において、地域の持続可能な住まい・まちづくりを実現することを目的に連携協定を結んだのは18年。その後、団地での京王電鉄による移動販売や、団地空き店舗でのコワーキングスぺース実験などを行ってきた。21年にはアクションプランを作成し、連携して目指すこととして、(1)子育てが楽しいまち、(2)自己実現できるまち、(3)イノベーションを促進するまちを掲げる。多世代が住み続けやすく、多様なライフスタイルを実現できる持続可能なまちを目指す取り組みが本格化し、その一環として「夏のDANCHI教室」もスタートした。
今年で3回目となる夏のDANCHI教室は、多摩ニュータウン永山の商店街と、グランピア南大沢第一集会所の2会場で開催。前回と異なるのは、サポーターを募集したこと。好きなことや得意なことを生かして子どもたちと遊んだり教えてくれる人を募ったところ、ベーゴマなら教えられるなど手を挙げてくれる人がいた。
「地域で眠っているプレイヤーに力を発揮してもらいたいと思っています。自ら場づくりから始めるのはハードルが高くても、背中を押してもらえれば挑戦できるという人に、夏のDANCHI教室で経験を積んでもらえたら」と話すのはURの植松拓真だ。
夏のDANCHI教室は、子どもの居場所であると同時に、地域の人の魅力を発見し、大人のチャレンジの背中を押す場、大人の経験を子どもに伝える、そんな多様な面を含む場でもあるのだ。
昭和時代のような多世代交流を
昨夏のDANCHI教室には「みんなで作る団地ソング」というプログラムがあり、子どもたちの言葉をつむいで、プロのシンガーソングライターがその場で曲にした。歌詞にはいつも遊ぶ公園や自転車で走るときに感じる風、団地から見える空など、多摩ニュータウンならではの豊かな風景、時間が織り込まれていた。
多摩丘陵の地形を生かしながら、駅から歩行者専用道路が整備されていて安全に移動できる多摩ニュータウン。近隣には企業や研究機関、大学なども多く、これを機に連携が進めば、地域の魅力はさらに増していくだろう。「移住のたま子さん」のようにInstagramで地元の魅力を発信するアカウントへの期待も大きい。
地域住民が地域の子どもを自然に見守っていた昭和時代のように、多世代交流が日常的になること。
それが主催者の願いであり、子育てが楽しいまちにもつながっていくのだろう。
*イベントの写真は2023年に開催された「夏のDANCHI教室」のものです。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影(人物)】
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