【特集】福島県浜通り地域と首都圏の人をつなぐ場所と機会を東京に(東京都目黒区)
原子力災害被災地域の復興まちづくりを推進するため、URは2022年12月から1年間、東京都目黒区のクラフトビレッジ西小山に拠点を設けて実証活動を行った。
東京都目黒区に誕生した交流拠点
URが行った実証活動の正式名称は「福島県浜通り地域と首都圏を繋ぎ、関係人口拡大を図る実証活動」。福島の浜通り地域の主として大熊町、双葉町、浪江町の3町と、首都圏の人々が交流する場所と機会を用意した。クラフトビレッジ西小山はURが保有する西小山駅前の土地を活用した、地域のまちづくりや賑わい創出の場。「籠~cargo~」という福島のアイテムを集めた飲食店も入居している。
どんな活動が行われたかといえば、大熊町での原口拓也さんたちの活動を紹介するイベント「キウイの秘密」にはじまり、「新春お餅つき大会 大熊町のお酒の試飲会」、大熊町産のいちごで作ったスイーツを販売する「大熊ベリーベリー祭り」、相馬エリアの食材や文化を紹介する「ふくしまのお酒とお殿さま」など。浪江の名産品を食べながら参加者と交流する「ナミエの話in西小山」、花の酵母からつくられたお酒「Ichido試飲会」……と多彩な内容。近隣の人を含め600人以上が来場したイベントもあれば、参加者を20人以下にしぼったイベントもある。
URのパートナーとして大熊町のKUMA・PREの運営にも関わり、今回の西小山でも連携・協働して実証活動を行った(株)バトンの代表 林 義仁さんは、声をかけた人たちから「こんど行ってみます」という返答をもらうたびに、都会に常設の場をもつ魅力を感じたという。
個々のプレイヤーの望みをかなえる場に
1年という限られた期間で何をすべきかを真剣に考えた末、関係者たちがこだわったのは、主催者はあくまで福島各地の団体やプレイヤーで、自分たちは伴走支援に徹すること。
「福島のプレイヤーがどんなことをしたいのか、どんな人と出会いたいのかを丁寧にヒアリングするように心がけ、どうしたら首都圏の人を福島につなげられるかをずっと考えていました」と話すのは、URの鹿野桃佳だ。
2回にわたって開催した「ナミエの話in西小山」の主催者は浪江町の「なみとも」。プレイヤーである小林奈保子さんと緒形 亘さんの希望は、「おいしいものを食べながら少人数で参加者とゆっくり話をしたい。コロナ禍で交流が途絶えていた首都圏の人と再会したい」だった。なみえ焼きそばや浪江の産品を使ったハンバーガー、お菓子やお酒などを用意して参加者と交流した。
「こんなにゆるい、時間通りに進まないイベントが、こんなに感動を呼ぶのかと驚きました。来ている人が話を聞いて泣いていて。参加者のなかにはその後、浪江町にお試し移住をしたり、実際に移住した人もいます。思いのある人が小さくても自分の言葉で語ることが、一番人に響くんだと腑に落ちました」と林さんは振り返る。
マルシェイベント、レストランイベントと括(くく)って開催すれば、わかりやすいし進めやすいが、人と人との関係性は生まれにくい。個々のプレイヤーの要望を聞いて、実現するための場を用意するのは、ハードルが高いし、手間も時間もかかる。
「けれども一過性でない関係を生み出し、関係人口を増やすにはそれが重要なんですね」
そして、プロデュースしきらないプロデュースには余白があり、参加者はもっと、その土地のことを知りたくなるのだと語る林さん。
「大熊町での取り組みでも感じていますが、このような実証活動がスピード感をもってできるのはURさんならではです。URさんは日本の地方創生だけでなく、世界のまちをつなぐハブになれる唯一無二の会社だと確信しています。今回のような活動を今後もぜひ続け、広げていただきたいです」
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影(人物)】
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