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【特集】3つのエリアの魅力を磨き 持続可能なコンパクトシティへ(青森県むつ市)

URPRESS 2024 vol.76 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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国の地方再生コンパクトシティのモデル都市に選定されたむつ市は特色ある3つのエリアで事業を展開中。URはその取り組みを支援している。

アゲハチョウが輝くまちづくりを推進

青森県の最北端にあるむつ市は、人口約5万4000人を抱える下北地方の中心都市。他の地方都市と同様、人口減少、高齢化、空き家の増加といった課題を抱えるなか、「アゲハかがやくまちづくり」をキーワードに、持続可能なまちづくりに挑戦している。

「市内にある釜臥山(かまふせやま)展望台から眺めるむつ市の夜景が、ちょうどアゲハチョウの形に見えるので、このアゲハチョウがさらに輝くまちをつくろう、という思いがキーワードに込められています」

こう説明してくれるのは、むつ市都市整備部都市計画課の山道大地さん。むつ市では、都市計画による土地利用規制を行いながら、市内に異なる都市拠点機能をもたせた3つのエリアを整備し、そのエリアを中心としたコンパクトシティ構想によるまちづくりの計画を立ち上げた。これが国土交通省から地方再生コンパクトシティのモデル都市に選定され、現在、事業が進んでいる。

URはむつ市がモデル都市に選定された2018(平成30)年から、構想実現に協力。都市計画課だけでなく、市庁内のさまざまな課に声をかけての集中検討会の立ち上げや外部の専門家をゲストに呼ぶなど、その運営をサポートしてきた。集中検討会はときに泊まり込みで行われ、エリアの課題の抽出から、ビジョンの共有へと進み、この事業全体の礎となっている。

釜臥山から眺めるむつ市の夜景。

キャンプができる都市公園を整備

コンパクトシティの核となる3つのエリアとは、「臨海公園とスポーツエリア」「賑わいと稼ぐエリア」「先端高齢者医療と子育てエリア」。

先行して進められた「臨海公園とスポーツエリア」は、陸奥湾に面したおおみなと臨海公園に新たな総合アリーナを建設。公募で決定した民間事業者が公園の整備・運営を行うPark-PFIを活用し、官民連携による広場整備も行われ、海辺にスポーツ・防災・にぎわいの拠点を創出した。

2つ目の核となるのは、夜の中心市街地である田名部(たなぶ)地区で、「賑わいと稼ぐエリア」をコンセプトに事業が進められた。その舞台の一つとなったのが、江戸時代、盛岡藩(南部藩)の田名部代官所が置かれた小高い丘に広がる歴史深い代官山公園。Park-PFIで民間の新しい発想を取り入れ、まちなかでキャンプが楽しめる都市公園「PARK DAIKANYAMA」に生まれ変わった。

PARK DAIKANYAMAのシンボルツリーは、樹齢300年といわれるコウヤマキ。大きなこの木の周囲に、ドームテントやグランピングトレーラーをはじめ、持参したテントでキャンプができるテントサイト、さらにドッグランもつくられ、飲食店や野菜の販売店など地元の店舗も3軒出店。以前は年間の来訪者が300人ほどで、地元でも知らない人がいるほどだった公園に、今では年間2万3000人が訪れるようになった。ここでは定期的にイベントも開催され、市内だけでなく下北地域全域から人がやってくる人気スポットとなっている。

「田名部地区にはかつて駅があり、市の産業・経済の中心だったのですが、鉄道がなくなり、にぎわいがなくなっていました。そこにPARK DAIKANYAMAという新しいにぎわい拠点が生まれ、イベントなどで来られた方が、そのまま田名部のまちの飲食店などに流れるようになり、にぎわい自体が波及し始めました。そして、今ではここが新しいまちづくりの発信拠点になっています」と山道さんは手応えを感じている。

冬、すっぽりと雪に覆われたPARK DAIKANYAMA。雪の中でのキャンプも人気があるという。
PARK DAIKANYAMAは、まちなかでグランピングも楽しめる。
ここでは定期的にイベントを開催。市内だけでなく、下北地域全域から人々が集まる。
PARK DAIKANYAMAのドッグラン。じつは青森県の形をしているのだ。(PARK DAIKANYAMA提供)
PARK DAIKANYAMAのコミュニティスペースと飲食エリア。(PARK DAIKANYAMA提供)

病院と教育機関を集積 拠点の魅力を上げる

現在も整備が続いているのが3つ目の核となる「先端高齢者医療と子育てエリア」、むつ総合病院と金谷公園のある一帯だ。ここには金谷公園を囲むかたちでキッズパークや認定こども園、下北文化会館と青森大学むつキャンパスといった教育機関が集積しており、2028年にはむつ総合病院の新病棟が建設される。

「現在は、URさんのアドバイスで、金谷公園に防災拠点としての機能も付加するなど、金谷都市拠点として整備を進めています」と山道さんが説明する。

URでむつ市のまちづくり支援を担当する小上(こかみ)勇輔は、「公園の整備では、隣接する施設と一体的に利活用されるような空間づくりを提案したり、設計の段階から技術的な視点でアドバイスを行うなど、計画の推進を側面から応援しています。コンパクトシティをただつくるだけでは意味がありません。行政と民間が一緒になり、いろいろな人が混ざりあって、3つの拠点の魅力をさらに磨き、暮らしやすいまちになるよう、今後も協力していきます」と話す。

コンパクトシティむつ市のアゲハチョウは、日々その輝きを増している。

むつ市のコンパクトシティ事業を推進する面々。むつ市の山道さんを中央に、左はPARK DAIKANYAMAを運営するむつ不動産取引センターの佐藤雄太さん、右がURの小上。
金谷公園を中心とした「先端高齢者医療と子育てエリア」の完成パース。
金谷公園の噴水広場は子どもたちに人気。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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