【特集】地下街の「まちのたね」で "ひと"と"まち"をマッチング(愛知県名古屋市)
URは昨年9月、全国の自治体を応援するための情報交流施設「まちのたね」を名古屋の中心地、栄にオープンした。どんな場所なのか? 現地を訪ねた。
地域経済の活性化をお手伝い
名古屋駅から地下鉄東山線に乗ること5分。栄駅で下車して改札を出ると「栄 森の地下街」が広がっていた。ここは名古屋屈指の歴史をもつ地下街。連なる商店を目指して訪れる人、そして地上の百貨店や飲食店、区役所やオフィスの利用者が行き交う通路でもある。地下街を歩いていくと、通路沿いの大型モニターに流れる迫力ある祭りの映像が目に飛び込んできた。ここが「まちのたね」だ。
訪ねた11月下旬は、愛知県津島市のシティプロモーションイベントを開催中で、珍しいお菓子やお酒などに目を留めた通りがかりの人が覗いたり、「また来たよ」とリピーター客がやって来たり……。
地域の魅力を伝え悩みを解決する場に
そもそも「まちのたね」は、どのようなスペースなのだろうか。
「URは全国各地の地域経済の活性化をお手伝いしています。また近年は『まちを知ってほしい』『特産品を買ってほしい』と希望する自治体に向けて、UR賃貸住宅や保有地を特産品販売やまちのPRのフィールドとして提供し、お悩みを解決する『ふるさと応援プロジェクト』に取り組んでいます。まちのたねはその一環の施設。自治体の魅力を多くの人に体感してもらうために都市部に常設した"ひと"と"まち"のマッチングスペースです」とURの樋口祐旗が説明する。また、URの入山由奈は、この場所に込めた思いを次のように語る。
「栄は名古屋駅周辺と並ぶ名古屋の二大繁華街。『栄 森の地下街』の賑わいがコロナの影響で落ち込み、回復が伸び悩んでいることもあり、『まちのたね』が回復の一助になればとの思いもあります」
「まちのたね」では昨年9月のオープン以来、沼津市(静岡県)や中津川市(岐阜県)をはじめいくつもの自治体のPRイベントを実施してきた。内容はそれぞれの自治体の悩みや希望にそって、特産品の販売や観光PR、移住相談などだ。
11月20日から8日間、シティプロモーションイベントを行った津島市は、名古屋から西へ列車で30分ほどの距離にある人口約6万人のまち。津島神社の門前町として古くから栄え、ユネスコ無形文化遺産に登録された「尾張津島天王祭」をはじめとする歴史文化があり、豊かな自然に恵まれている。
「とはいえ市外では知られていないことも多くて。年末にふるさと納税の機運が高まることもあり、今回は津島の特産品のPRを中心に行いました。予想を上回る売り上げで、お菓子類は何度も追加発注しました」と津島市シティプロモーション課主事の遠山悠太さんは話す。
もろこ寿司(川魚の押し寿司)や味噌づくり、七宝焼アクセサリーづくり体験なども開催され、多くの人が集まった。
「僕が担当する市外でのプロモーションイベントは初めてですが、津島を知らない人にアピールして、それを買っていただける喜びを感じました。また、かつて津島に住んでいたとお声がけくださったり、僕が知らない津島の話を聞かせていただけて、とてもいい時間でしたし、市外でのプロモーションイベントの意義を感じました。URさんにいい機会を与えていただきました」
遠山さんのその言葉に喜びながらも、「まだあまり知られていないので、施設の認知度を上げるために、情報発信をしていきたい。春に地下街に直結する中日ビルがオープンしたら通行人は3万人を超すと思いますので」と話すのは、URとともに「まちのたね」を運営するグループ会社、URリンケージの堀譲だ。
「まちのたねには無料で利用できるカフェコーナーやWi-Fiサービスがあり、休憩スペースとしても利用していただけます。隣接するURの賃貸ショップと連携しながらお客さんを増やしていきたい」とURの池本誠一は話す。
今後はオンラインで生産者の紹介などもできたらと関係者の夢はふくらむ。「あそこに行けば、何かある」と思ってもらえる企画、そして情報発信に力を注いでいく。全国の地域を応援すべく、たねから出た芽を大事に育む日々だ。
【妹尾和子=文、青木登=撮影】
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