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【特集】今、和歌山がおもしろい! つながり、広がるまちづくり(和歌山県和歌山市)

URPRESS 2024 vol.76 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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まちづくりの継続・拡大で鍵になるのは、核となって活動する民間のプレイヤーの存在だ。「都市再生推進法人」の活動と連携で注目を集めているまちがある。

多彩なメンバーによる継続的なまちづくり

まちづくりで注目を集めているのは、和歌山市だ。和歌山城のお膝元、商人のまちとして古くから栄えてきた中心市街地を舞台に、リノベーションまちづくりが進められている。「都市再生推進法人」として市が指定するまちの担い手が12もあり、そのメンバーの多くは、市主催のリノベーションまちづくりの勉強会などに参加して起業した人たちだ。

「高齢化や人口減少、また郊外への商業施設の移転などにより、中心市街地が衰退していくなか、どうやってまちなかを盛り上げていくかが市の課題であり目標です」

和歌山市都市再生課再開発班班長の中村英人さんは、背景をそのように説明する。そのため市は10年ほど前から勉強会を開くなどしてプレイヤーの発掘や、「何かしたい人」と「何かしてもらいたい場所」のマッチングに力を入れてきた。そして今、活動が広がって拠点やイベントが増え、若い世代が流入するなど効果が現れている。

昨年12月の第2日曜日、中心地の北ぶらくり丁商店街では「冬のパン祭り」が、本町公園では「てとこと市」が開催されていた。

「ぶらくり丁の近くでカフェを営んでいたのですが、人通りの少なさや高齢化を実感し、このままではいかんだろうと思いました」と話すのは、北ぶらくり丁商店街のイベントに関わっているサスカッチ代表の小川貴央(よしてる)さんだ。北ぶらくり丁商店街で毎月、朝ごはんの会「はじめ食堂」とマーケットイベントを開催している。イベントで商店街を訪れて気に入り、空き店舗に入居する人も増えているそうで、小川さんたちは両者をつなぐ役目も担っている。

紀州まちづくり舎代表の吉川誠人(まこと)さんはPark-PFI(公募設置管理制度)を利用して、活用されていなかった本町公園をリニューアル。長く閉鎖されていた公園の地下駐車場も再開させた。園内の管理用施設を農園レストランとして蘇らせ、毎月第2日曜日に公園で「てとこと市」を開いている。

築50年を超えるビルをリニューアルして、バーダイニングやコワーキングスペースなどの多機能施設「Guesthouse RICO」を運営しているのは、ワカヤマヤモリ舎の橘麻里さんだ。江戸時代に大地主からまちの管理を任された家守(やもり)の現代版を目指し、地域の活性化に取り組んでいる。このように魅力的な活動をしている団体が和歌山市には他にもたくさん存在するのだから驚く。

本町公園で毎月第2日曜日に開催される「てとこと市」。12月は50店以上の出店があった。
アクセサリーやフラワーアレンジメント、サボテンなど手作り品のほか、野菜や飲食物の販売もあり、多くの人でにぎわっていた。
アクセサリー販売所の様子
北ぶらくり丁商店街。「ぶらくり」とは「ぶら下げる」の意味。毎月第1火曜日7時からの朝ごはんの会「はじめ食堂」ではテーブルと椅子が並べられる。
第2日曜日に北ぶらくり丁商店街で開かれるマーケットイベントは、月ごとにテーマが変わる。12月は「冬のパン祭り」でいろいろなパンが並んだ。
北ぶらくり丁商店街のマーケットイベントの日。購入したお弁当を用意されたテーブルで楽しそうに食べる人たちがいた。
本町公園の管理用施設をリニューアルして誕生した農園レストラン。ペット連れで入店できる人気スポットだ。

活動の連携をサポート

2015年から和歌山市のまちづくり支援を行っているURは、21年にウォーカブルシティの実現や公共空間の利活用など、新しいまちづくりを協働で推進することを目的とした連携協力協定を、市と新たに締結。ウォーカブル推進都市の取り組みに関することや都市再生推進法人との連携など官民連携まちづくりの推進に関する支援をしている。

「正直なところ学ぶことのほうが多いのですが……」と話すのはURの吉田英雅だ。岡山県津山市や鳥取県米子市でのまちづくり支援の経験を生かし、昨年、和歌山市内の複数のイベントを回遊する企画「IN THE LOOP」開催に向けての話し合いでは、「やりたいけれど大変だという、皆さんの大変な部分を我々がお支えできれば、とお伝えしました」と振り返る。

「吉田さんが移動手段としてパーティーバイクを提案してくれたことで、『IN THE LOOP』の話が一気に進み、近未来を感じられるイベントになりました」と紀州まちづくり舎の吉川さんは言う。

南海電鉄の和歌山市駅とJRの和歌山駅の間は約2キロ。歩くと30分以上かかるので、2つの駅や和歌山城などを巡回する9人乗り自転車「パーティーバイク」で移動が楽になるだけでなく、未来の風景を共有して新たな価値を見出せるだろうと吉田は考えたのだ。

1カ月にわたって開かれたそのイベントの話を聞いていて感じたのは、皆さんの関係のよさだ。

「それぞれができることを持ち寄って一緒にやっています。行政の人たちとの距離感がとても近いんです」とIN THE LOOP 2023の実行委員長を務めた橘さん。

今後URに期待することとして、和歌山市の中村さんは「市では動きにくい部分の支援」を。プレイヤーの方々からは、「他の地域でのまちづくりの情報提供」を。そして「他の地域の方と交流したい」「URまちづくりサミットなんていかがですか?」と話がどんどん進み、盛り上がっていくのだった。

まちづくりに関わるメンバー。前列左から和歌山市の中村さん、小川さん、橘さん。後列左から3番目が吉川さん、5番目が吉田。和歌山市は2021年に国土交通省の「新しいまちづくりのモデル都市」に選定されている。
2023年10月に開催された「IN THE LOOP 2023」では、ヨーロッパのビアバイクをモデルにしたパーティーバイクが移動手段に。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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