【特集】都市機能をアップデート 広島市の再開発が始まる! 基町相生通(もとまちあいおいどおり)地区第一種市街地再開発事業(広島県広島市)
戦後、力強く復興を遂げ、中国地方最大の都市となった広島市。その中心部で今、再開発が始まろうとしている。
URはその先陣を切る大型プロジェクトに代表施行者として参画し、新しい広島のランドマークづくりを支えている。
再開発計画の先陣を切る
原爆投下によって壊滅状態となった広島市。やがて戦後復興の槌音が響き、高度経済成長期の昭和30年代後半から40年代になると、市街地にいっせいにビルが建ち始め、新しいまちが動き出した。
「じつはこの時代に完成した建物が築50年以上たち、いっせいに建て替えの時期を迎えているのです。市内には再開発の計画が複数ありますが、私たちがURさんと進めるこのプロジェクトは第一弾、まさに先陣を切るリーディングプロジェクトなのです」
こう説明してくれるのは、広島市都市整備局市街地再開発担当課長の小倉宏彦さん。
このプロジェクト「基町相生通地区第一種市街地再開発事業」は、広島市の中心部、県庁に隣接したビジネス、商業の中心である紙屋町・八丁堀地区にある約1ヘクタールの区域の再開発事業。ここに高層棟、変電所棟と市営駐輪場棟の3つの建物を建てる計画だ。
地上31階地下1階建ての高層棟は、上層階に広島初進出となるラグジュアリーホテルを誘致し、中層部に市内最大級の高規格オフィス、低層部にはMICE(マイス※)に対応できる施設や商業施設が入り、さらに広島商工会議所と、点在する産業支援機関が、ここに集約される予定だという。
変電所棟は敷地内の別の場所に新設する。この新たな変電所が稼働を始めた後、旧変電所を取り壊し、そこに市民のための駐輪場棟を建設する。
計画では今年秋に事業が本格的に稼働。高層棟と変電所棟が2027(令和9)年度、市営駐輪場棟は2029年度に完成予定だ。
広島市活性化のリーディングプロジェクト
このプロジェクトの目的は大きく3つある。まず、観光・文化・情報発信機能の充実・強化だ。ラグジュアリーホテルを誘致し、コロナ前の2019年以前に、年間1000万人以上広島市を訪れていたインバウンドを含む観光客のさらなる増加を目指す。加えてこの建物が広島市の新たなランドマークとなり、周辺を含め風格あるまちなみの形成に寄与することが期待される。
2つ目の目的は、にぎわいと交流機能の強化。相生通りに面した一角には、イベントなどにも利用できる市民のためのオープンスペースを設け、高層棟の6階にもみどりのあるオープンテラスをつくり、この一帯のにぎわいをつくり出す。
3つ目の目的は国際的なビジネス環境を生み出す高度業務機能の導入。広島市には東京や大阪に本社のある大企業の支社が数多くあり、コロナ禍でもオフィス需要は堅調だという。市内最大級の高規格オフィスが、新たなビジネス拠点となり、さらなる業務機能の充実・強化を目指す。
URは経験豊富な公平中立な行司役
この再開発事業の地権者は朝日新聞社、朝日ビルディング、中国電力ネットワーク、広島商工会議所、広島市で、URは広島市及び地権者からの要請を受けてこの事業を統括する代表施行者となる予定だ。
UR西日本支社でこの事業を担当する太田 亘(わたる)は、「再開発にかける思いは各者それぞれ。その合意形成をはかりながら、方向性を合わせていくのが私たちの仕事です。当然ながら、大企業や団体の場合はリスクとリターンに対する評価がシビアで、社内調整にも時間がかかりますが、それぞれの思いを汲み取って選択肢をつくっていきます」と意気込みを語る。
広島市の小倉さんは「URさんは権利を有しない中立の立場で行司役に徹することができますし、全国での再開発の実績もあるので信頼しています」と期待を寄せる。「単なる建て替えではなく、市域全体に波及効果のある施策となるよう全力で取り組みます」とURの太田。
戦後2度目となる都市の再生が、今まさに幕を開けようとしている広島市。もう一方の東のコアとなる広島駅とその周辺の再開発も、順調に進んでいる。数年後、どのような魅力が花開くのか、広島市の今後の動きから目が離せない。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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