【特集】新ビジネス&にぎわいが生まれる「羽田イノベーションシティ」発進(東京都大田区)
日本の玄関口・羽田空港のすぐお隣に、日本をリードする新産業創造・発信拠点となる新しいまちが誕生しているのをご存じだろうか。
2020(令和2)年に大田区が公民連携で進める羽田空港跡地第1ゾーン整備事業の「羽田イノベーションシティ」が開業。
URも関わるこのまちの今を取材した。
沖合拡張で生まれた空港跡地に命を吹き込む
日本の空の玄関口、羽田空港(東京国際空港)。戦後日本の発展とともに拡大を続け、現在、3つのターミナルビルと4本の滑走路が運用されている。
今回の主役は、この羽田空港の沖合移転に伴って生まれた約16・5ヘクタールの空港跡地だ。この空港跡地は、日本のものづくりを支える中小企業等が多く集まる大田区に位置している。このポテンシャルを活かし、公民連携により世界と地域をつなぐ「新産業創造・発信拠点」として、2020(令和2)年に「羽田イノベーションシティ(略称:HICity)」が開業した。
最先端の研究とにぎわいが共存する
東京モノレールと京急空港線「天空橋」駅で下車し地上に出ると、そこには建物が整然と並んだHICityが広がっている。HICityのコンセプトを大田区の空港まちづくり課担当係長・梅田光一さんはこう説明する。
「新たなビジネスやイノベーションを創造するとともに、ものづくり技術や国内各地の魅力を発信する『新産業創造・発信拠点』です。また、音楽や芸術など多様な文化が感じられる、にぎわいあふれる拠点としていきたいと考えています」
HICityはAからLまでのゾーンに分かれ、すでに開業しているゾーンHにはライブホール「ZeppHaneda」があり、ライブのある日は大勢の人でにぎわう。ゾーンDの「AI_SCAPE」は調理も配膳もロボットが行うレストランで、さまざまなメディアで紹介され話題に。ゾーンEの屋上には、飛行機を眺めながら足湯に浸かれる「足湯スカイデッキ」があり、こちらも訪れる人が絶えない。
来年夏以降に完成予定のゾーンAには先端医療研究センター、ゾーンBは研究開発拠点、ゾーンCにはアート&テクノロジーセンターが入る予定だ。
さらにHICity南側の土地には、広大な公園を整備する計画だ。今年4月に大田区が公園整備・運営の方向性や公民連携活用など基本的な考え方をまとめたコンセプトブックを策定したところだという。この公園整備・運営事業を担当する大田区空港まちづくり課の有賀雄大さんは、「区内で前例のない取り組みであり、区民の声を生かしながら、区や民間事業者が協力して柔軟な運営が可能となる仕組みづくりを進めていく。皆さんにとって何度でも訪れたくなる、愛着を持てる公園をつくっていきたい」と意気込みを語ってくれた。
URは面整備を担当 まちの土台をつくる
羽田空港跡地地区のまちづくりを進めていく上で、基盤となるインフラ(道路、上下水道、電気等)を整備する必要があるため、土地の再編と公共施設の整備等を一体的に実施する土地区画整理事業を活用。URが事業施行者として2016年からこの事業を担当している。東京オリンピック・パラリンピックまでのまち開きを目標に、タイトなスケジュールのなか、土地区画整理事業による敷地や道路の整備、大田区の事業による施設建設工事を同時に進めてきた。その結果、HICityの開業とともに、URが施行する区画道路の一部と交通広場が2020年に供用を開始した。
URでこの事業を担当する田辺隆之は、羽田ならではの事情があると説明する。
「空港に隣接しているので高さ制限があり、クレーン作業は夜間に行うこともあります。また、地下の浅い所に鉄道が通っているので、施工面でも工夫が必要です」
大田区と定期的にミーティングを重ね、進捗の確認や課題の洗い出しなどを行っている。土地区画整理事業は2025年度末に完了予定だ。
まち開きの時期がコロナ禍と重なり、計画通りにいかない部分もあったが、現在徐々にHICityの認知度も向上しつつあると大田区の梅田さんは言う。
「HICityが産業のまち大田区を象徴する施設として、区民の皆さんに愛着を持ってもらえたらうれしいです。大田区、日本の成長につなげていきたいですね」
羽田に生まれた新しいまちのこれからに、期待が高まっている。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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