【特集】町田山崎団地(東京都町田市)
楽しみながら学び
地域の絆を強める防災イベント
いざというときに力になるのが常日頃からの備えと地域のコミュニティーだ。
町田山崎団地では、楽しみながら防災意識を高め人とのつながりを築くユニークな防災イベントを2014年から開催している。
防災知識を楽しく学ぶ催し物が盛りだくさん
新しく改装された集会所で、防災食や災害時の緊急トイレの作り方を学ぶ親子連れ。災害時に役立つスマホ講座を熱心に聞く年配者。防災用品にもなるカラフルなテントの中では、ヨーヨー釣りを楽しむ子どもが集う。
7月3日、町田山崎団地で開かれた「DANCHI Caravan in 町田山崎—防災まつり 2021夏」は、多くの団地住民でにぎわっていた。
町田山崎団地は、JR横浜線・小田急小田原線の町田駅からバスで約15分。多摩丘陵に広がる、住戸数約4000戸のマンモス団地だ。この団地では、2014(平成26)年から「防災」をメインテーマとした地域参加型のイベントが開かれている。「もしも」のときを想定して、食べて、動いて、楽しく防災を学べる催しとして、住民の間に定着している人気のイベントだ。
今年のテーマは「防災keep on」。コロナ禍で夏祭りなどの地域イベントが中止になり、人と会い、話し、絆を深める機会が失われた今、薄れがちな地域の交流を再びつなげ、防災への意識を高めるよう、「続ける」ことの大切さが掲げられている。
集会所での防災プチ講座に親子で参加していた男性は「応急処置の方法は、災害時に限らず役に立ちそうですね」と満足そう。
良品計画(無印良品)が企画する防災クイズをお子さんと楽しんでいた団地に住むお母さんは、ベランダ障壁蹴破り体験にも参加した。
「思っていた以上に堅くて驚きました。この防災イベントにはいつも来ていて、以前は災害を想定して団地内で1泊2日のテント生活をするキャンプに参加したこともあります。今日帰ったら、防災リュックの点検をしなくちゃ」と話してくれた。
団地を中心に防災の輪を広げる
このイベントを企画・運営しているのは、URの職員有志グループ、ABCプロジェクトのメンバーだ。現在活動するのは29名。当日はおそろいのポロシャツを身に着け、午後1時からのイベント開催に向けて、朝から会場を走り回っていた。
リーダーを務めるのは、入社2年目の唐津亮太だ。
「ABCプロジェクトは、若手職員を中心とした組織横断型の活動です。先輩方が築いてきた経験や人脈を絶やさないよう、コロナ禍で何ができるかを模索して、今年の開催にこぎつけました。皆さんが楽しんでくださっている様子を見ると、苦労も吹き飛びます」
イベントには、団地自治会や商店街のほか、隣接する桜美林大学の学生や住戸のリノベーションを手がける良品計画など、地域の公的機関や民間企業、教育機関なども協力。URと連携して盛り上げている。
町田市の防災安全部防災課の髙橋宣行地域防災担当係長と澤田大さんは「感染症流行時の防災」についての講演会を行った。
「災害が起こったとき、市町村による『公助』が提供されるまでにはタイムラグがあります。そこで必要になるのが、自分の命は自分で守る『自助』と、地域や近所づきあいによる『共助』です。町田山崎団地は世帯数が多いだけに、こうしたイベントで防災意識の啓発ができるのは、とてもありがたいですね」(高橋さん)
町田市オリジナルの健康体操「町トレ」を行っていたのは、地元プロサッカーチームFC町田ゼルビアだ。マーケティング部の野村卓也地域振興課長は「防災は日頃からのつながりが大事。こういう催しでコミュニティーを意識すると同時に、我々にとってはチームのことを知っていただくいい機会にもなります」と話す。
URの唐津は、大学時代にサークルで旅行中に北海道胆振東部地震に遭遇。避難所で過ごした経験から、災害時のコミュニティーの大切さを実感したという。
「団地は普段から階段室などで顔を合わせたりと、コミュニティーがつくりやすい場所。その強みを防災に生かしていきたい」
「いざというときの、防災の要になる」。そんな団地の可能性を感じさせてくれるイベントだ。
【阿部民子=文、菅野健児=撮影】
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