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【特集】令和2年度「URひと・まち・くらしシンポジウム」より

URPRESS 2020 vol.63 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


令和2年度
「URひと・まち・くらしシンポジウム」より

URが毎年開催する「UR ひと・まち・くらしシンポジウム」は、URの各部署が取り組む事業や研究内容を広く報告する場です。
今年のシンポジウムは新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となりました。
10月20日~26日に公開された発表から、建物の耐震改修と、災害公営住宅に関する報告をご紹介します。

報告1 UR団地建物における大地震への備え

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地震と耐震基準の変遷 1981 建築基準法 改正 1995 阪神・淡路大震災 1997 耐震改修促進法 制定 2011 東日本大震災 2013 耐震改修促進法 改正 2016 熊本地震 2018 大阪北部地震 2019 耐震改修促進法 改正

1995(平成7)年に起きた阪神・淡路大震災を契機に、97年に旧耐震基準の一定規模以上の建物の耐震化を進める耐震改修促進法が制定されました。これを受け、URは全国の団地の中高層建物について、お住まいの皆さまに、より安全安心をお届けすべく、耐震診断および必要な耐震改修等を計画的に進めており、現在の耐震化率は約94%となっています。

一方で、URの団地には集会所や店舗、管理サービス事務所など、1、2階建ての低層建物があります。

そのうち大空間を有する低層建物に多く見られるのが「RC造+鉄骨造置き屋根」「RC造+プレキャストコンクリート板屋根」という構造です。これら「鉄骨屋根等建物」は東日本大震災や熊本地震の際に、天井仕上げ材が落下したり、鉄骨造屋根支承部のコンクリートが剥落するなどの被害が報告されました。

2013年に耐震改修促進法が改正され、全建物が耐震化対象となったことを受け、URでは14年からこれら低層建物の耐震診断にも着手。「鉄骨屋根等建物」は構造躯体の耐震性だけでなく、屋根の耐震性の判定が重要なため、有識者委員会を組織し、耐震診断手法のマニュアルや判定基準を整備して、順次耐震診断を実施。その結果、耐震改修が必要だと判定された建物には、15年から改修工事にも着手しています。

写真の団地の集会所と倉庫の建物では、鉄骨屋根と下部のコンクリートをつなぐ部分(支承部)を補強する必要がありますが、スペースが限られているなどの制約がありました。そこで屋根の支持が可能なワイヤーやコンクリート片の落下を防ぐ防護ネットを設置するなど、工夫もしながら改修を行っています。また、構造躯体に関しても柱を補強し、必要とする耐震性を確保しています。

  • 東京都八王子市にある団地の集会所と倉庫の建物。

  • 1階の柱に補強のための配筋工事を施した。

報告2 団地づくりのノウハウ×地域のニーズ=災害公営住宅

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2011(平成23)年の東日本大震災、16年の熊本地震で住まいを失った方々のために、URは災害公営住宅の整備に取り組んできました。これまでに造られた3万1400戸のうち、URは約20%にあたる6386戸を整備、今年度で事業を完了します。

URが手がけた災害公営住宅には、RC共同住宅(一般的な団地タイプの建物)、連棟(れんとう)長屋住宅(長屋タイプ)、戸建住宅の3種類があり、それぞれの地域のニーズに合わせた整備をしています。

災害公営住宅には、これまでURが培ってきた団地づくりのノウハウが生かされています。「団地設計とは環境をつくることである」と言われますが、団地づくりでは「人の生活」を根幹にすえ、その土地の自然、風土、地形を読み取って、快適な住環境をつくり出してきました。これらのノウハウは、スピードが求められる災害公営住宅においても生かされています。

県営北好間(よしま)住宅(福島県いわき市)では、もともとあった道路と、地域のシンボルである山につながる軸線をつくり、通路、住棟、広場を配置しました。

水石山につながる景観軸を中心とした住棟計画(県営北好間住宅/福島県いわき市)。

宮城県女川町では、市街地が壊滅状態になり、まち全体をつくり直す大規模な復旧作業を進めましたが、災害公営住宅は海への眺望軸を中心に、通路や住棟、広場が計画されました。

そのほか、周辺の自然や街区と調和した配置設計、周辺の戸建ての屋根の色や形状を読み取り、災害公営住宅に生かしたケースもあります。岩手県大船渡市では、すべての災害公営住宅の形状や色彩計画を統一しました。

また、その地域の特色あるニーズへの対応も行っています。例えば降雪地帯では冬用タイヤの置き場が必須。戸建て住宅に慣れ親しんでいる方が多い地域では、共同住宅にも戸建ての感覚を取り入れる工夫をしています。震災前の生活スタイルを継続してもらうため、漁業従事者が多い住宅には、漁具の洗い場や合羽置き場を設置しました。

一方、URは入居者へのソフト面の支援も重要だと考えています。例えば自然に人が集まるように、建物のエントランスにベンチなどを設置することもそのひとつです。ほかにも入居者が地元の子どもたちと交流するワークショップを開催したり、みんなで利用できる共同花壇、広場や集会施設を整備するなど、コミュニティー形成のお手伝いをしています。

これまでURが培ってきた団地づくりのノウハウに、災害公営住宅整備で得たノウハウとツールを掛けあわせ、そこに地域のニーズをプラスする。それがこれからの災害公営住宅づくりに生かされることになるでしょう。

  • 海への眺望軸を中心に通路や住棟、広場が計画された町営大原住宅(宮城県女川町)。

  • 地元の子どもたちとモニュメントを作成(市営桜木住宅/宮城県多賀城市)。


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報告2 団地づくりのノウハウ×地域のニーズ=災害公営住宅
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