【特集】目指したのは「未来に追いつく」復興です 達増拓也知事
岩手県では、東日本大震災からの復興を県の最重要課題に位置付けて取り組んでいます。早い段階から掲げたのは、「未来に追いつく」という考え方。「過去に戻る復興」ではなく、10年後のあるべき姿に向かって、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指してきました。
2015年に仙台で開催された国連防災世界会議で注目を集めた「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」は、まさに私たちが取り組んでいることでした。
震災から11年経ちまして、おかげさまで目指してきたことが実現しつつあります。南北に分かれていた三陸鉄道が1本のリアス線でつながり、復興道路・復興支援道路が整備され、近隣の市町村はもちろん、沿岸部と内陸部も行き来しやすくなりました。
また、宅地造成が終わり、災害公営住宅の整備が完了して、応急仮設住宅に入居していた皆さんには恒久的な住宅に移行していただきました。沿岸部には見たことがないような先進的な住宅地が完成し、「キャッセン大船渡」や「アバッセたかた」など大型商業施設が開業。規模は小さいながらも最先端の病院や学校もでき、公共施設も復旧を果たしています。その地で生活したり仕事したりする人たちに希望をもっていただける状態になったと思っています。
URさんは、東日本大震災の翌4月にすぐに調査や打ち合わせに来てくださいました。その後も大勢の方が現地に入ってくださり、非常に心強く、励まされました。大規模な土地区画整理事業の経験がない市町村ばかりでしたので、大変助けていただきました。取り組んで感じたのは、大規模災害からの復興は、「開発」だということ。「土地」「まち」「人材」の再開発なのです。そのような総合的な開発の経験やノウハウがあり、また新しいことに取り組む力もあるURさんは、復興のパートナーとして不可欠な存在です。
津波浸水区域の整備など簡単にはいかず苦労もありましたが、おかげさまでかつてないスピードで復興事業が進みました。人口減少や高齢化などの課題はありますが、沿岸部は漁業資源や観光資源に恵まれていますし、新たな商業拠点が整備され企業誘致も進んでいます。高校卒業後も地元に残る人の割合が増え、Uターン、 Iターンする若者も目立ちます。
震災前よりも「豊かな生活」や「活力ある仕事」、そして「安全な地域」が実現できるインフラや施設は整いましたので、今後はいかにそれらを活用できるかが鍵になります。URさんには引き続き、コミュニティー支援やまちの活性化に向けたソフト面を含めた協力や支援をお願いしたいと思います。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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