【特集】移住者大歓迎! 浪江駅周辺の復興まちづくりが始まる(福島県浪江町)
先進的な取り組みで産業と雇用を創出する一方、人口増に向かって着実なまちづくりを進める浪江町。
その拠点となる交流スペース「なみいえ」がオープンした。
駅周辺のにぎわいを新しいまちにも
2017(平成29)年に避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示が解除され、町民の帰還が始まった浪江町。URは同年、町と「浪江町の復興まちづくりの推進に関する協定書」を締結、棚塩地区産業団地整備事業を受託、2020年には地区内に「福島水素エネルギー研究フィールド」「福島ロボット・テストフィールド浪江滑走路」が完成。先進的復興まちづくりを推進してきた。
生活インフラの面では、2020年3月に9年ぶりにJRの富岡駅—浪江駅間の運転が再開され、常磐線全線がつながり、8月には「道の駅なみえ」が先行オープンした。このように浪江町ではいま、新しいまちづくりが一歩ずつ進み始めている。
浪江町で復興まちづくりを担当する建設課中心市街地整備室係長の上野幹一さんは、「今年度からいよいよ浪江駅周辺のまちづくりが動き始めます。駅の東側には先導整備エリアとして居住・交流・商業の機能を一体的に配置。ここを起爆剤として、中心市街地全体に効果が波及するまちづくりを目指しています」と説明する。
町とタッグを組むUR浪江復興支援事務所の菅原敏文は、「160ヘクタールもある中心市街地の再生を目指し、駅周辺から段階的にまちづくりを進めることになります。URのこれまでの経験も生かしつつ、町と一緒にどう人を呼び込んでいくかを考えながら、浪江の復興に取り組んでいきます」と意気込みを語る。




駅前整備の拠点「なみいえ」が誕生
浪江駅前には昨年11月、交流スペース「なみいえ」が誕生。ここを駅前整備の拠点にしたいと話すのは、UR浪江復興支援事務所の加藤奈帆子だ。
「まちが出来上がる前から、皆さんの活動の場としてここを使ってもらい、浪江町の人や町を訪れた方、企業の方などさまざまな人が出会い、つながりができることで、新しいまちができたときに、ここで生まれた関係や活動が広がり、さらにまちを育てていく。そのきっかけとなる交流や活動の拠点にしたいです」
さっそく「なみいえ」を集合場所に、浪江に移住して活動を続ける小林奈保子さん、和泉 亘(わたる)さんとお会いした。2人は2017年に浪江のコミュニティーづくりをする「なみとも」を結成した。
「花見や流しそうめんなど季節のイベントや飲み会などを企画して、町に戻ってきた方々と、ボランティアで滞在する若者、移住してきた人たちが出会い、交流する場をつくってきました」と小林さん。
このまちで子育てをしている小林さんは、ここ数年、子ども連れで浪江に移住する人が増えていることを実感しているといい、「そういう人たちにこのまちを好きになってもらいたい。子どもたちに、浪江で暮らしてみたいと思ってもらうことが大事です。そのためのコミュニティーづくりに、この『なみいえ』を活用したいですね」と話してくれた。




新しい挑戦大歓迎 浪江にはチャンスがある
和泉さんは、「なみとも」の活動と並行して、「浜のあきんど」という会社を起業した。食をテーマに生産・加工・販売まで行い、「道の駅なみえ」のフードコートに「麺処 ひろ田製粉所」という麺料理の店も出店。移住者を含め10人を雇用している。和泉さんは言う。
「避難解除後の復興の第1フェーズは、人が集まる場づくり、コミュニティーづくりでした。今は第2フェーズとして、産業をつくり、働く場と働く人を増やす段階です。浪江はよそから来る人や、新しいことを受け入れやすい柔軟な土地柄です。面白い人も多いです。浪江はいま、新しいことに挑戦するチャンスにあふれています」
浪江町の上野さんもこう話す。
「復興は町や町民の方に加えて、外部の方の力が必要です。そのためにも、住んでみたいまちを目標に掲げてまちづくりを行っており、まずはイベントやお仕事などで外部の方に興味を持っていただき、さらには移住していただける町になることが最大の目標です。町は全力をあげて人口増の施策に取り組んでいます」
震災前の浪江駅周辺は、夜遅くまで営業している飲食店が多く、とてもにぎやかだったという。3月12日に「なみとも」が主催して開かれた「新町にぎわいマーケット」には、約700人もが訪れ、その当時の雰囲気が少し戻ったかのようだった。これから生まれる新しい浪江は、多彩な人々が集い、人の魅力にあふれた熱いまちになると確信した。





【武田ちよこ=文、菅野健児、青木 登=撮影】
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