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【特集】〝にぎやかそ〟を目指す小さなまちに新たな交流拠点が誕生(徳島県美波町)

URPRESS 2022 vol.68 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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徳島県の南部、太平洋に面した美波(みなみ)町は、漁業が盛んなまち。
早くから防災と地域活性化に取り組んできたこのまちに、昨年URのサテライトオフィス「うみがめラボ」が誕生した。

津波防災まちづくりと地方都市再生で連携

四国霊場23番札所である薬王寺の門前町として栄えてきた美波町。その中心地、情緒あふれる古民家が多く残る日和佐(ひわさ)地区に「うみがめラボ」が完成し、昨年11月15日にオープニングセレモニーが開かれた。築100年を超える古民家を改修し、古いものを活かしながら最新の設備を整えたこのうみがめラボは、URのサテライトオフィス。同時に美波町でのURのまちづくり支援の拠点であり、地域の方々との交流の場でもある。

早くから南海トラフ巨大地震の事前防災に取り組んできた美波町で、URは東日本大震災の復興支援などの経験を活かし、津波防災まちづくりをサポートしている。連携をさらに強化するため、昨年4月には「美波町における津波防災まちづくり・地方都市再生の推進に向けた協定」を改めて締結した。

鉄骨フレームによる耐震補強がされたうみがめラボの写真

古民家を改修して誕生した「うみがめラボ」。鉄骨フレームによる耐震補強をしたことで、壁をなくし、大人数で使えるスペースを確保した。厨房も備えている。UR職員によるDIYも随所に。2階の窓際には山々を望むワークスペースを設置した。

うみがめラボのオープニングセレモニーで美波町の影治信良町長は、関係者への感謝とともに、町民が安全・安心に暮らせる「防災」をベースにしながら、「にぎやかそ(にぎやかな過疎)」のまちづくりをさらに進めていく決意を述べた。

うみがめラボの看板除幕式で。左から徳島県南部総合県民局 藤本真路局長、美波町 影治信良町長、UR西日本支社長 田中伸和、URリンケージ西日本 小原啓蔵本部長。

まちづくりを支えるメンバー。右からうみがめラボを設計した長谷川さん、美波町の福島さんと鍜治さん、URの川島。

もともと住民の防災意識が高い地域とはいえ、東日本大震災の発生、そしてその後に公表された、美波町の津波予想20・9メートル(県内最大)という数字には衝撃を受けたとまちの方々は話す。

命を守るための避難場所や津波避難タワーが整備され、現在は高台を造成中だ。この高台にこども園を移転し、防災公園を建設する計画で、URが技術的に支援している。工程の見直しによる効率化や、道路・公園の位置の見直し提案なども行い、経費の削減にも貢献した。

「高台造成という大きな事業を、小さなまちで展開するにあたって、平面でなく立体的に全体が見えているURさんには、大変助けられています」と美波町建設課の福島康人さんは話す。

命を守るための施設として津波避難タワーが町内に3カ所設置されている。写真の「えびす津波避難タワー」の設計は長谷川さんが担当。

美波町の日和佐地区。イセエビ漁が盛んなまちで、四季折々の海の幸が味わえる。日和佐川が注ぐ大浜海岸はウミガメの産卵地でもある。

「うみがめラボ」は、日和佐川の手前側の集落の中心地にある。
古民家の古い意匠を活かして改修されたうみがめラボ(洗面所まわり)。

関係人口を増やして〝にぎやかな過疎〟に

徳島駅から日和佐駅まで約50キロ、JR牟岐線で1時間半。アクセス至便とはいえない場所ながら、美波町には20を超えるサテライトオフィスが進出している。

「人口6400人のまちですが、関係人口を増やしてにぎやかになることを目指し、サテライトオフィスの誘致にも2012年から取り組んできました」

美波町政策推進課の鍜治(かじ)淳也さんによれば、サテライトオフィスは、自分たちの技術を地方の課題解決に活かしてみたいと考える企業の実証実験の場としても使われているという。また美波町は明治時代の建物をリノベーションして交流スペースにしたり、遊休施設をオフィスにするなど、町外からの人の受け入れをさまざまなかたちでサポート。古民家再生にも力を入れている。

自身も美波町に建築設計事務所を構え、所属する神奈川大学と二拠点生活を送っている建築士の長谷川明さんは、URの「うみがめラボ」を含め、これまでに町内の8軒の古民家再生に関わっている。

「歴史ある建物の再生は難しいことも多いのですが、壊さずに再生することで、美しい街並みやまちの人たちの思い出を残すことにつながるので、なるべく古いものを活かすことを心がけています」と長谷川さん。使われなくなった古い建物が生まれ変わることを喜ぶ人は多く、地元の人が既存のまちを見直すきっかけにもなっていると鍜治さんはいう。

URにとっても、うみがめラボのように古民家を賃借して改修し、活用した例はなく、新たなチャレンジ。地域の人との交流、関係づくりを進めていく予定だ。

URの川島康弘は「津波防災の先進的な取り組みや古民家改修の知見など、美波町からURが学ぶことは多い。ここで学んだことを、ゆくゆくは他の地方都市再生に活かしていきたい」と語る。美波町は地方都市再生のモデルのひとつになると考えている。

標高60mの山を造成して、高台にこども園、防災公園などを整備する予定。防災公園は、大規模災害時に必要となる避難場所、防災拠点、応急仮設住宅建設用地などとしての機能を備える。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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