街に、ルネッサンス UR都市機構

【特集】歴史と文化、それに人を結び付け まちの活性化につなげたい(岡山県津山市)

URPRESS 2022 vol.68 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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岡山県北部の中心都市・津山市。津山城跡や古い町並みが残る 歴史あるまちはいま、人口減少や空き店舗増といった問題を抱えている。
市とまちづくり連携協定を結んだURは、問題解決のお手伝いに取り組んでいる。

まちの中心・城下(しろした)地区で歴史と文化を再発見

津山市は、岡山県で岡山市、倉敷市に次ぐ3番目の人口規模を誇るまちだ。津山城跡を中心に、お城の南側の城下地区には商工会議所や金融機関、歴史ある建造物が集まり、お城の東西2カ所には、旧出雲街道に沿って国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された古い町並みや寺が残っている。

歴史的な資産を豊富に抱え、観光資源に富んだまちであるにもかかわらず、人口減少に歯止めがかからず、中心市街地の商店街には空き店舗が目立つ。URは津山市からの要請を受け、2020(令和2)年12月、まちづくり連携協定を締結した。

URは目下の課題である中心市街地の活性化と、城下地区のホテル跡地の活用方法を市とともに検討しながら、城下地区のまちづくりビジョン策定のお手伝いをしている。

「まちの中心である城下地区のまちづくりは重要です。ここにはホテル移転に伴って生まれた市有地があり、国の登録有形文化財の『森本慶三記念館』『津山郷土博物館』と『つやま自然のふしぎ館』といった歴史的文化的価値のある施設が隣接しています。これら歴史遺産とホテル跡地を一体的に活用して、まちなかの活性化につなげていきたいと考えています」

URでまちづくり支援を担当する吉田英雅がこう説明する。

「つやま自然のふしぎ館」は貴重な動物剥製や化石、標本などが約2万点常設展示されている自然史の総合博物館。津山市はこの博物館の利活用を目指す勉強会を開催。URは国立科学博物館と連携して支援した。国立科学博物館の専門家に館内を見てもらったところ、設立の歴史や展示物が高く評価された。さらに、偶然、専門家の目にとまったプラネタリューム投影機が「未来技術遺産」に登録され、地域のニュースをにぎわせた。

このような歴史的・文化的価値をもつ施設や建物の再発見・再評価は、市民の誇りを生み、まちの活性化のきっかけになるだろう。

1616年、森蘭丸の弟である森忠政が築城した津山城。お城の手前の広場が、昨年11月に「Tsuyama 8days Trial」が開催されたホテル跡地。その右に「森本慶三記念館」など歴史的な建造物が集まっている。

「つやま自然のふしぎ館」は夜間高校だった建物を利用。国立科学博物館の専門家によって再評価された。写真は昨春に行われた高校生ガイドの様子。

津山城跡から「つやま自然のふしぎ館」などの歴史ある建造物が集まっている中心街。

18歳の崖にブリッジを架け この地に戻ってくるように

ホテル跡地の利用に関しては、まちづくりを考える市民グループ「津山デザインミーティング」と津山市、URが協力して、昨年11月14~21日に実証実験「Tsuyama 8days Trial」を開催。普段は駐車場として利用されているスペースに人工芝を敷き、そこにマルシェやキッチンカーを展開。平日には、近隣のビジネスパーソンがランチに訪れ、週末のイベントにはたくさんの家族連れや、若者たちが足を運び、まちなかに出現した芝生の広場で思い思いにくつろいでいた。

最終日の日曜日には「高校生商い体験」も行われた。これは津山市内の6つの高校の生徒たちでつくる「城下ハイスクール」の活動のひとつ。

津山デザインミーティングが企画した週末のパークピクニックは、有名店の出店もあり1,000人もの来場者があった。まちなかに出現した広場の継続を希望する人が多く、場所のポテンシャルが実証された。

最終日には城下ハイスクールのメンバーがお店を手伝う「高校生商い体験」も。お店の人の話を聞く高校生たち。

夜は焚火がたかれ、屋外で映画の上映も行われた。

この活動の発起人は、市内で建築デザイン事務所を営む和田優輝さん。和田さんは「高校卒業とともに故郷を離れ、そのまま戻らない“18歳の崖”。この崖にブリッジを架け、持続可能な地域社会を維持していくための活動です」と説明する。

「高校を卒業して津山を離れても、ここが好きだから戻ってくる、という流れをつくりたい。それにはまず、彼らが津山を知り、ここを誇りに思うことが大事。商い体験は、パークピクニックに出店した店のお手伝いです。ここで働く大人たちや仕事を知り、津山で生きていく将来のイメージをふくらませてほしい。そのためには、自ら主体的にまちづくりに関わったという経験が大切だと思うのです」と、その狙いを教えてくれた。

津山市産業文化部の平田 暁課長は、「持続するまちの担い手づくりのためにも、高校生たちに地元を知ってもらい、地元に愛着をもってもらうことは重要です。URさんにはこれまで他の地域で積み上げてきたまちづくりのノウハウを、この地で生かしてほしいと思っています」と話す。

地域がもつ宝を再発見し、市民の誇りを呼びさます。それを核にして、再びまちを活性化させる。ゆっくりと小さな歩みだが、津山市には確実にその一歩が記されている。

和田さんは東京出身、2008年から津山市で暮らしている。「津山はコミュニティーの規模感がちょうどいい。スモールシティだからこそ、誰とでもつながれるし、自分たちのまちを自分たちでつくろう、という思いがまとまりやすい」と話す。
左から津山市の平田課長、URの吉田、久保西。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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