【特集】コンフォール松原(埼玉県草加市)
建て替えで生まれ変わった
多世代が快適に暮らせるまち
大規模団地の建て替えを機に、市や大学、民間事業者とともにURが周辺一帯を整備。
安全で快適、美しく生まれ変わったまちが埼玉県草加市にある。
マンモス団地を建て替え 魅力あるまちに
2017(平成29)年に改称される前は「松原団地」駅、現在は東武スカイツリーライン「獨協(どっきょう)大学前<草加松原>」駅。その駅の西側エリアには、建設当初「東洋一のマンモス団地」と呼ばれた草加松原団地があった。
約43ヘクタールの広大な敷地に連なる住戸は、その数324棟、5926戸。都心へのアクセスが便利なこともあり、1962(昭和37)年の入居開始以来この団地は人気を集め、多くの人々の暮らしを支え、子どもたちの成長を見守ってきた。建て替え前の草加松原団地を知る人は「行けども行けども団地が続いていた」と懐かしそうに話す。
当時の子どもたちが独立し、居住者の生活スタイルが多様化するなか、URが建て替えという決断を下したのは今から約20年前のこと。これだけの大規模団地の建て替えはURでも他に例がない大プロジェクトだ。草加市や隣接する獨協(どっきょう)大学、地域の人たちと連携しながら、一帯の再生・再編をスタート。都市計画道路や公園、公益施設などを含め、駅の西側エリアの整備計画を策定し、官民一体となった総合的なまちづくりを進めてきた。目指したのは、安心・安全で快適な、住む人たちにとって魅力のあるまちを創出することだ。
「団地にお住まいの方には相当なご苦労をおかけしましたが、ただ建物を新しくするのではなく、住戸タイプや施設、屋外空間やコミュニティーづくりにも配慮して、暮らしやすいまちづくりを進めました」
URの木村仁紀(よしき)が語るとおり、建て替えを機に、敷地内に子育て支援施設や高齢者福祉施設、病院などを誘致。また、高齢者福祉施設と連携した住戸や、菜園付きの住戸などを用意したり、幅広い世代が暮らしやすい生活環境の充実に尽力した。
住棟を集積しスペースを有効活用
2003年から18年までの建替事業で、4階建てを中心に324あった住棟は、6~14階建ての30棟(3050戸)に集積して駅寄りに配置。「コンフォール松原」として生まれ変わった。お住まいの方の負担を減らすため、なるべく1回の移転で済むように配慮。事業の途中からは駅に近いエリアから住棟を建設し、順々に直接移転していただいた。
新たに生み出された敷地には、公共施設や公園、民間の分譲マンション、商業施設などが誕生。URの小原裕(こはら ゆたか)は、整備後初めてこの地を訪れたとき、「緑が多くて気持ちがよくて感激した」という。
「自治会の方との話し合いは150回以上に及んだと聞いています。住民の方々からご要望が多かった思い入れのある樹木を残し、大雨のときに近くの伝右(でんう)川が増水しても心配ないように雨水貯留施設も整備しました」
緑が多く、団地を取り巻く環境が豊かであることは、敷地内を歩いているとよくわかる。駅から団地内を貫く「緑のプロムナード」と呼ばれるメイン歩道は広々としていて、途中で「風の道」と名付けられた近くを流れる伝右(でんう)川まで抜ける道と交差する。住棟の中庭には、建て替え以前の団地から保存した大樹がのびのびと枝葉を伸ばし、光や風を浴びている。
貸菜園「クラインガルテン」には野菜がすくすく育ち、近くにあるパーゴラやベンチの付近にはのんびり過ごす親子の姿が見られる。この贅沢で豊かな屋外空間の確保はURのこだわりだ。空間の豊かさ、暮らしやすさ、災害への備え……新たに付加されたこれらの要素が、このまちの価値を高めていることは間違いない。今後、商業施設がオープンし、分譲マンションがさらに完成すれば、ますますにぎわいあふれるまちになるだろう。
妹尾和子=文、菅野健児=撮影
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