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【第2特集】まちの未来をひらく棚塩産業団地が完成 福島県浪江町

URPRESS 2020 vol.61 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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福島県浪江町 水素製造拠点オープン
まちの未来をひらく棚塩産業団地が完成

棚塩産業団地(49ha)。黒く塗られたように見えるのは敷地内に設置された68,000枚の太陽光パネル。「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」ではこの発電により水素を製造し、貯蔵・供給する。手前は飛行試験や操縦訓練に使用する無人航空機(ドローン)用の滑走路と格納庫を備える「福島ロボットテストフィールド」。海側は20mの断崖。

まちづくりの種が大輪の花に

東日本大震災、そして原発事故から9年の時を経て、この春、URが基盤整備した浪江町の棚塩産業団地内に、まちの未来を照らす再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素製造拠点が誕生した。「福島水素エネルギー研究フィールド(以下「FH2R」)」だ。国、県、町が協力して福島に新たな産業の基盤をつくり、人材の育成・交流人口の拡大を目指すプロジェクト「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の一環で、経済産業省とNEDOが中心となって整備した注目の施設である。

3月7日の開所式には、安倍総理大臣をはじめ、梶山経済産業大臣や田中復興大臣も出席。「2050年、二酸化炭素排出実質ゼロ」を掲げ、水素社会実現の先駆けとなるまちづくりを目指す浪江町にとって、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーである水素を製造・研究する拠点への期待は大きい。

浪江町の吉田数博町長は式典のあいさつで、全町民が生まれ育った地を追われ、苦しい日々が続くなか、「明けない夜はない」「一燈をさげて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」と職員に伝え、一心不乱に進むべしと激励し、全力で復旧復興にあたってきたと振り返った。そして、新しい浪江をつくるためにまいてきた種のひとつが、この日、大輪の花を咲かせたと、水素製造拠点開所への感慨を語った。

燃料電池自動車「MIRAI」。安倍総理大臣はこの車を運転して開所式会場に現れた。
安倍総理大臣、梶山経済産業大臣、田中復興大臣をはじめ、福島県の内堀雅雄知事や浪江町の吉田町長らが揃って行ったFH2Rでのテープカット。
福島水素エネルギー研究フィールド。ここで製造された水素を燃料電池車や燃料電池バス向けのモビリティなどに使用する予定。

準備1年、工事2年。異例のスピードで

FH2Rがある棚塩産業団地内には、無人航空機(ドローン)用の実証実験施設「福島ロボットテストフィールド浪江滑走路」も整備されている。さらに来年度には「福島高度集成材製造センター」も完成予定。県産木材の需要を拡大し、林業の再生を目指している。

かつては緑に覆われていたこの沿岸一帯が棚塩産業団地として整備され始めたのは、2018年春。町から委託され、URが基盤整備事業を担った。UR浪江復興支援事務所長の塩間学は、「2年前の起工式のときには、正直なところタイトなスケジュールだと思いました。無事に完成してホッとしています」と笑みを見せる。

通常は、土地の造成だけでなく道路などのインフラが完成した後に建物の工事が始まるが、この地で製造した水素を東京2020へ供給することを目指して、2020年春にFH2Rの完成を目標としたことから、基盤整備工事と建設工事の同時並行という異例の進め方で、ほぼすべてが同時に完成した。

「道路もできていないなか、お互いがスムーズに作業が進められるように、それぞれの事業者さんの要望をうかがい、綿密に情報交換しながら進めてきました」と説明するのはURの山下哲弘。約50名の関係者が集まる会議を隔週で開き、進捗状況を共有し続けた。

「それぞれが自らの工程をさらけ出し、課題や検討事項をなるべく持ち帰らずにその場で判断・決定し、次週の動きにつなげる」という緊張感を伴う会議だった。それでも同じ目標へ向かう仲間としての一体感があったからこそ、モチベーション高く進めてこられたと所長の塩間は振り返る。建築工事の完成まで見据えた土量のバランスを、基盤整備の着工時より検討することで、手間やコストの大幅な削減も実現した。

塩間、山下と共にこの事業に取り組んできたURの中山誠は、浪江町のこれからに期待を寄せる。「浪江町では、棚塩産業団地をはじめ複数の働く場の整備が進められていて、スーパーマーケットや飲食店が次々とオープンしています。さらに今年の夏には道の駅も一部オープン予定など、復興のきざしが町内のいたる所で見られます。URは南産業団地や中心市街地活性化などの技術的支援を通じて、今後も浪江町のさらなる復興に向けてお手伝いを続けてまいります」

新たなにぎわい、生業を生み出すまちづくりに向けて、浪江町でのURの復興支援が続く。

浪江町の復興まちづくりに邁進してきたUR浪江復興支援事務所のトリオ。 写真左から塩間、山下、中山。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


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