【特集】 渋谷駅街区土地区画整理事業
100年に一度といわれる大改造が進む渋谷駅周辺。高層ビルが完成し、地下鉄銀座線のホームも移動、徐々に新しいまちが姿を現わし始めた。URは東急とともに、10年以上にわたりこのまちの基盤整備に取り組んでいる。
上には渋谷川、下には巨大な貯留槽
「渋谷スクランブルスクエア」と「渋谷フクラス」という2つの高層ビルが開業し、東京メトロ銀座線渋谷駅のホームが場所を移して新設されるなど、再開発の動きが加速している渋谷駅周辺。昨年11月1日には、「渋谷駅東口地下広場」(地下広場)がオープンした。
この地下広場は、JR線など高い階層にある駅と、地下にある東急線や東京メトロの駅を結ぶ場所にあり、にぎわいを生み出す空間としても機能する。
渋谷駅街区土地区画整理事業を東急とともに施行するURにとって、地下広場を整備し、オープンできたことは、ひとつの大きな節目となった。
「地下広場の上には渋谷川が流れ、この下では巨大な地下貯留槽を造っています」
大勢の人が行き交う地下広場で、URの小出裕之が説明する。
地下広場を造るために、まず2015年に東急百貨店の地下を流れていた渋谷川の流れを切り替えて、それまでの河川から下水道に移管。その下に地下広場を造った。
さらに広場の下、地下約30メートルの所には、4000㎥の雨水を一時的に貯めることができる地下貯留槽を建設中だ。これは近年多発するゲリラ豪雨や記録的な大雨に対応し、地下街への浸水を防ぐためのもので、1時間の雨量が75ミリまで対応できる。今夏の供用開始を目指して、最後の追い込みの真っ最中だという。
東急でこの事業の工事監理及び協議・調整を担当する石田充朗さんは、「鉄道を止めず、駅や広場の機能を確保したまま工事を進める点が、都市土木の難しいところですね」と話す。
駅周辺の開発に並行して、エリアマネジメントの取り組みも活発化。屋外広告物掲出やイベント開催など、一定のルールにもとづき事業を実施するのが「一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント」(渋谷エリマネ)で、URは東急、東急不動産とともに事務局を担う。地下広場オープンとともに、渋谷エリマネがカフェを設置するなど、にぎわい創出事業を開始。その収益を広場の清掃費用に一部還元するなど、官民連携による新たな挑戦に注目が集まっている。
「全体最適」を図るのがURの役割
工事に関する現場での細かな調整、工事の執行管理は東急。URは工事の調整の際のアドバイスや、設計変更・工程変更が生じたときの行政協議を主導している。そこには地下ならではの難題があると小出は言う。
渋谷の地下には地下鉄、上下水道、ガス管、電気通信網など数多くのインフラが埋設されている。
「それらはすべて工事用の図面に落とし込んであるのですが、実際に掘ってみるとずれていたり、ないはずのものが出てきたりというトラブルが多々あります。複数の工事が錯綜している場合、工事の順番の入れ替えなどが起こることがあり、そういった調整・協議を行い、その都度、安全確保を最優先しながら、最善の方法を提案しています。行政と民間の間に入って『全体最適』を図るのがURの役割です」(小出)
完成後、スムーズに引き継ぐために
もうひとつのURの仕事は、施設管理者への引き継ぎ業務だ。例えば建設中の地下貯留槽は、完成後、東京都下水道局に引き継ぐのだが、その間には膨大な行政手続きが必要になる。
「引き継ぎの日程を決めたら、○月○日に稟議を回す、そのためには×月×日までにこれが必要です、という具合にスケジュールを細かく決めて、下水道局側に提示。それが守れるようフォローしていくのも、われわれの仕事です」
昨年11月に地下広場が完成したとき、そこに立って行きかう人々の反応を見ていたという東急の石田さん。
「お客さまが戸惑っていないか、わかりにくい所はないか。机上ではわからない現場の息吹を感じていたいのです」
URの小出は、「もちろん事業が大きいだけに、調整の大変さはあります。でもこれほど注目されている大きな事業に関わり、少しずつできあがって、いい形になっていく渋谷を見ていると、その一部を担っているという自負とやりがいを感じます」という。
「まだ七合目。最後の登りがきついんです」
そう言って笑う二人の息は、ぴったりと合っている。
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