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【特集】コミュニティガーデンが団地に新しい風を吹きこむ 中宮第3団地

URPRESS 2022 vol.69 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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団地の人だけでなく、地域の皆さんも加わって新しいコミュニティガーデンが生まれた中宮第3団地。
植物の力が人々の距離を縮め、ゆるやかなつながりが広がっている。

編み物を持ち寄ってヤーンボミングに挑戦

冬のある日、中宮第3団地の道路に沿ってつくられた花壇に、色とりどりの毛糸の編み物を手にした女性たちが集まってきた。今日はガーデニング講師の山田倫子さんとともに、このコミュニティガーデンの手入れをしてから、持ち寄った毛糸の編み物を使って「ヤーンボミング」をするという。

寒空の下、花がらを摘み、雑草取りをしていると、「先生、花咲いてます~」とガーデンの一角から歓声が上がった。見ると「オージーガーデン」の植物に、小さな花が開いている。みんなが山田さんとともに花壇を取り囲み、「こんな花が咲くんですね」とおしゃべりの花も満開に。

この中宮第3団地と香里団地でコミュニティガーデンを指導する山田さんは、「植物を育てていると、いろいろなことが起こるでしょう。そのたびにみんなで相談したり、またチャレンジしたり。そうやって参加した人たち同士、自然とコミュニケーションがとれるようになるんです。植物には人と人をつなげる力がありますね」と笑顔で話す。

この日のメインイベントは、ヤーンボミング。これはカラフルな編み物を使ったアメリカ発祥のストリートアート。写真を見ていただくとおわかりのように、皆さんが自宅で編んできた15×15センチ四方の編み物をかぎ針でつなぎあわせ、冬枯れした木の幹や、ガーデンの椅子などに巻き付けていく。あっという間に桜の木は赤やピンクの毛糸でラッピングされ、色のない木々が急に華やいで、ここだけ一足早く春がきたようだ。

完成したヤーンボミングを見ながら、皆さんのおしゃべりはいつまでも続いている。通りがかった親子連れが、「かわいいねえ」と足を止めた。

寒さをものともせず、ガーデンに集まった皆さん。作業を終えて記念撮影! 前列右端が講師の山田さん。
以前は低木が植えられていた道路沿いのスペースを花壇にした。花がら摘みと雑草取りに精を出す皆さん。
道行く人に、コミュニティガーデンへの参加を呼び掛ける。

団地の空間をコミュニティー活動に

中宮第3団地には広い屋外空間があり、樹木も多くて、まるで公園のような環境だ。この空間をコミュニティー活動に生かしてはどうだろう。住民が参加できる花壇をつくり、それが地域にも開かれた場所になれば、団地の新しい価値が生まれるのではないか。中宮第3団地では、このような考えのもと昨年からコミュニティガーデンづくりが始まった。

生活支援アドバイザーの村瀬佳美が説明する。

「『団地で植物を楽しもう』というイベントをきっかけに、それが発展して花壇づくりにつながりました。地元のことを熱く考えている人も多く、団地と地域が一体となって、コミュニティガーデンの活動が続いていけばいいなと思っています」

URコミュニティの酒井直樹は「実際に花壇づくりを始めると、参加した皆さんがすぐに仲良くなっていくのがわかり、やってよかったなと思いました。住んでいる皆さんに、ここにいることが楽しい、と思ってもらえる団地になるといいですね」と話す。

「花壇づくりは、美しいまちの景観をつくるだけでなく、活動することで参加者の健康にもプラスになり、まちや団地に愛着と誇りをもつきっかけになると思います」とURの一色紗綾も言う。

これがヤーンボミング。桜の幹も暖かくなってうれしそう。まちも明るくなる。
作業をしながら自然に会話が生まれ、楽しい時間が過ぎていく。
色の組み合わせを考えながら、持ち寄った編み物をつなぎあわせ、幹に取り付けていく。これが面白い!
各自が持ち寄った編み物。「楽しくて、夢中になって編んでいた」と言う人が多かった。

高齢者の孤立を防ぎ外に出るきっかけに

中宮第3団地はふだんから住民の活動が盛んで、集会所の予約は常にいっぱいだ。だが、そういう集まりに二の足を踏む一人暮らしの高齢者も多い。

「URとしては、生活支援アドバイザーが高齢の方々の身近な相談相手になるとともに、ゆるやかなつながりの場をつくって、高齢の方々の孤立を防ぎたいと考えています。ガーデンでの花づくりが、外に出かけるきっかけになってほしいのです」とUR西日本支社の上野浩昭。

「足が悪いので花の手入れはできないけれど、この花壇があってよかった」と、団地に住む高齢の女性に言われたという村瀬は、「今後はもっともっとみんなが参加したくなる花壇をつくっていきたい」と意気込む。

この記事が出る4月末頃、中宮第3団地のコミュニティガーデンには、カラフルなチューリップが咲き揃い、団地の皆さんや道行く人を笑顔にさせていることだろう。

「団地の中に地域の人も参加できる場所があれば、コミュニティーが広がる」とURの上野。
「このガーデンで写真を撮る人もいて、いい場所になっているなと思う」と話すURの一色。
URコミュニティの酒井は「顔の見える関係によって、安心な暮らしにつながるのではないでしょうか」と言う。
生活支援アドバイザーとして団地の皆さんの相談にのる村瀬。「コロナ後の近隣大学との連携も楽しみ」
花壇に置かれたベンチもヤーンボミング。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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