街に、ルネッサンス UR都市機構

【特集】豊かな緑は地域の宝環境を生かして団地を元気に! 常盤平団地

URPRESS 2022 vol.69 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

 SDGsアイコン画像

東京都に隣接しながら自然環境にも恵まれた松戸市。
市内東部にある常盤平(ときわだいら)団地では、豊かな緑地環境を生かして、団地の価値を高める活動が進められている。

新京成線・常盤平駅から、駅を背にして、けやき並木が続く緩やかな坂を上っていくと、常盤平団地の住棟が現れる。1960(昭和35)年に管理開始された、4800戸を超える広大な団地だ。60年という歳月を経て建物は古くなっているものの、一方で植栽は豊かに育まれ、高さ20メートルを超すクスノキやけやき、メタセコイヤなどの大木がのびのびと繁っている。隣接するさくら通りは「日本の道100選」に、常盤平けやき通りは「新・日本街路樹百景」に選ばれている。

住民の方々に団地の自然環境についてうかがうと、「住棟の間隔が広く、住棟より高い木々も多いので、季節ごと、朝昼晩と移り変わる様子を楽しめる」「春には桜だけでなく、藤も満開になる」。他にも「遊びに来た友人が、緑が多くて団地のイメージが変わったと言ってくれる」「けやきなどの木陰のおかげで、夏は駅の反対側より涼しくてありがたい」「カマキリやバッタがいたり、蝶が飛んでいたり、子どもたちも楽しめる」……など次々に教えてくれた。

高さ約22mのメタセコイヤのまわりに集まる、ガーデンツアーに参加した先生たち。団地内には造成前からの既存樹もあり、地域では貴重な巨木が見られる。
お住まいの方とのガーデンツアーでは、在来種と外来種の違いの見分け方を教わったり、葉の匂いを嗅いだり、実を食べたり。
ルーペを通して観察すると、木の年輪が見えた。植物の奥深さを感じるきっかけに。
住民の目を潤し、木陰を提供してくれるけやき並木。

団地の自然環境の価値を見直そう

「この豊かな緑地環境を団地の活性化に生かせないかと、2年ほど前から自治会さんとURとで話し合いを重ねてきました」とURの長田愛子は説明する。同時に団地の屋外空間の有効活用について住友林業・住友林業緑化とURで共同研究も行っている。2021年には都市緑化機構のSEGES*(シージェス)に常盤平団地の緑地が認定されたことで、注目も集めている。

団地の緑の価値を見直し、地域で活用してもらうため、昨年は春と秋に住民対象のガーデンツアーを開催した。専門家の説明を聞きながら団地内を歩き、ヤマグワの実を食したり、野草の観察をしたり。シュウ酸が含まれているカタバミの葉を使用しての10円玉磨きは盛り上がったという。

「50年住んでいますが、正直なところ緑があるのが当たり前になっていて、この機会に団地の自然環境の素晴らしさを再認識できてよかった」

そう話す常盤平団地自治会の大木賢会長のように、団地の環境の魅力に改めて気づいたという参加者も多かった。

奥に見えるのは、昭和30年代に建てられたスターハウス。上空から見るとY字型に見える住棟だ。
通称「ポール公園」(団地内の広場)にあるオブジェは、彫刻家・池田宗弘作「不安定の中の安定」。ガーデンツアーで説明されて、初めて存在に気づいたという人もいた。
常盤平団地の自治会の方々と。手前左から自治会の大木会長、平野将人さん、斎藤勝敏さん。奥左からURの羽鳥祥平と長田、自治会の村山誠さん、住友林業緑化の田代さん。
30年以上地元在住の平松校長。「常盤平第一小学校は常盤平団地と共に生まれ育った学校です。2021年度の児童は97人と小規模ですが、地域の特色を生かした学びを大切にしていきたいです」
団地の四季の風景写真を広場に展示。お気に入りスポットを地図にマークしてもらう企画も行った。

地域の宝を子どもたちの学習の場に

訪ねた日は、地元の常盤平第一小学校の先生方を対象にしたガーデンツアーが行われていた。葉や実が少ない冬場だったものの、防虫剤や鎮痛剤として使われる樟脳が採れるクスノキの葉をちぎって匂いを嗅いだり、ルーペで小路の切り株の年輪を確認したり、学びや楽しみが詰まっていた。

「この道、歩いたことがなかった」とか「こんなに大きな木があるんだ」と驚く先生たち。

常盤平第一小学校では、「常盤平で学ぶ、常盤平を学ぶ、常盤平に学ぶ」をキーコンセプトに、常盤平学と題して、地域と連携し地域の宝を活用した学習に取り組んでいる。平松澄明(きよあき)校長は、ガーデンツアーでの学びを生かし、今後、団地を子どもたちの学習の場にしたいと考えている。

「これだけの魅力的な環境、生きた教材が近くにあるので、子どもたちには生き物や花など自然と直接触れ合うなかで、いろいろなことを学んでほしい。グローバル化を進める上でも、まずは地元を知り、地元への愛着を育むことが大事だと思っています」と平松校長。

ガーデンツアーのガイドを務める住友林業緑化の田代隆一さんは、常盤平団地に通うようになり、その植物の多様性、変化に富む景観に改めて驚いているという。

「もとの地形の高低差を生かして造成されているため変化に富んでいて、四季折々の移ろいに感動しています。この地に住んでいることの価値を、地域の方々にもっと実感していただきたいですね」

この豊かな環境を生かして団地内外の人をつなぎ、団地を元気にしていこう。ガーデンツアーをきっかけに、その価値を見直しPRする動きが広がり始めている。

ガーデンツアーで団地の植生の豊かさに驚く小学校の先生たち。
ルーペで観察すると、また違った楽しみがある。

*社会・環境に貢献する緑地の評価制度。常盤平団地の緑地は「そだてる緑」部門でExcellent Stage 2の認定を取得。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】


【特集】団地を地域のふるさとに!サロンから広がるにぎわい 南永田団地(神奈川県横浜市)

横浜市南区の高台に建つ南永田団地。誕生から50年近く経ち、かつての商店街の活気を取り戻すため、住民たちが動き出した。3年前に誕生したサロンが活気を生む場になっている。

【特集】豊かな緑は地域の宝環境を生かして団地を元気に! 常盤平団地(千葉県松戸市)

東京都に隣接しながら自然環境にも恵まれた松戸市。市内東部にある常盤平(ときわだいら)団地では、豊かな緑地環境を生かして、団地の価値を高める活動が進められている。

【特集】コミュニティガーデンが団地に新しい風を吹きこむ 中宮第3団地(大阪府枚方市)

団地の人だけでなく、地域の皆さんも加わって新しいコミュニティガーデンが生まれた中宮第3団地。 植物の力が人々の距離を縮め、ゆるやかなつながりが広がっている。
  • LINEで送る(別ウィンドウで開きます)

特集バックナンバー

UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

UR都市機構の情報誌[ユーアールプレス]の定期購読は無料です。
冊子は、URの営業センター、賃貸ショップ、本社、支社の窓口などで配布しています。

CONTENTS

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ