【特集】豊かな緑は地域の宝環境を生かして団地を元気に! 常盤平団地
東京都に隣接しながら自然環境にも恵まれた松戸市。
市内東部にある常盤平(ときわだいら)団地では、豊かな緑地環境を生かして、団地の価値を高める活動が進められている。
新京成線・常盤平駅から、駅を背にして、けやき並木が続く緩やかな坂を上っていくと、常盤平団地の住棟が現れる。1960(昭和35)年に管理開始された、4800戸を超える広大な団地だ。60年という歳月を経て建物は古くなっているものの、一方で植栽は豊かに育まれ、高さ20メートルを超すクスノキやけやき、メタセコイヤなどの大木がのびのびと繁っている。隣接するさくら通りは「日本の道100選」に、常盤平けやき通りは「新・日本街路樹百景」に選ばれている。
住民の方々に団地の自然環境についてうかがうと、「住棟の間隔が広く、住棟より高い木々も多いので、季節ごと、朝昼晩と移り変わる様子を楽しめる」「春には桜だけでなく、藤も満開になる」。他にも「遊びに来た友人が、緑が多くて団地のイメージが変わったと言ってくれる」「けやきなどの木陰のおかげで、夏は駅の反対側より涼しくてありがたい」「カマキリやバッタがいたり、蝶が飛んでいたり、子どもたちも楽しめる」……など次々に教えてくれた。
団地の自然環境の価値を見直そう
「この豊かな緑地環境を団地の活性化に生かせないかと、2年ほど前から自治会さんとURとで話し合いを重ねてきました」とURの長田愛子は説明する。同時に団地の屋外空間の有効活用について住友林業・住友林業緑化とURで共同研究も行っている。2021年には都市緑化機構のSEGES*(シージェス)に常盤平団地の緑地が認定されたことで、注目も集めている。
団地の緑の価値を見直し、地域で活用してもらうため、昨年は春と秋に住民対象のガーデンツアーを開催した。専門家の説明を聞きながら団地内を歩き、ヤマグワの実を食したり、野草の観察をしたり。シュウ酸が含まれているカタバミの葉を使用しての10円玉磨きは盛り上がったという。
「50年住んでいますが、正直なところ緑があるのが当たり前になっていて、この機会に団地の自然環境の素晴らしさを再認識できてよかった」
そう話す常盤平団地自治会の大木賢会長のように、団地の環境の魅力に改めて気づいたという参加者も多かった。
地域の宝を子どもたちの学習の場に
訪ねた日は、地元の常盤平第一小学校の先生方を対象にしたガーデンツアーが行われていた。葉や実が少ない冬場だったものの、防虫剤や鎮痛剤として使われる樟脳が採れるクスノキの葉をちぎって匂いを嗅いだり、ルーペで小路の切り株の年輪を確認したり、学びや楽しみが詰まっていた。
「この道、歩いたことがなかった」とか「こんなに大きな木があるんだ」と驚く先生たち。
常盤平第一小学校では、「常盤平で学ぶ、常盤平を学ぶ、常盤平に学ぶ」をキーコンセプトに、常盤平学と題して、地域と連携し地域の宝を活用した学習に取り組んでいる。平松澄明(きよあき)校長は、ガーデンツアーでの学びを生かし、今後、団地を子どもたちの学習の場にしたいと考えている。
「これだけの魅力的な環境、生きた教材が近くにあるので、子どもたちには生き物や花など自然と直接触れ合うなかで、いろいろなことを学んでほしい。グローバル化を進める上でも、まずは地元を知り、地元への愛着を育むことが大事だと思っています」と平松校長。
ガーデンツアーのガイドを務める住友林業緑化の田代隆一さんは、常盤平団地に通うようになり、その植物の多様性、変化に富む景観に改めて驚いているという。
「もとの地形の高低差を生かして造成されているため変化に富んでいて、四季折々の移ろいに感動しています。この地に住んでいることの価値を、地域の方々にもっと実感していただきたいですね」
この豊かな環境を生かして団地内外の人をつなぎ、団地を元気にしていこう。ガーデンツアーをきっかけに、その価値を見直しPRする動きが広がり始めている。
*社会・環境に貢献する緑地の評価制度。常盤平団地の緑地は「そだてる緑」部門でExcellent Stage 2の認定を取得。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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