【特集】団地を地域のふるさとに!サロンから広がるにぎわい 南永田団地(神奈川県横浜市)
横浜市南区の高台に建つ南永田団地。誕生から50年近く経ち、かつての商店街の活気を取り戻すため、住民たちが動き出した。
3年前に誕生したサロンが活気を生む場になっている。
約2500世帯が暮らす南永田団地。訪ねたのは寒さが戻った3月の火曜日だったが、中央広場の商店街にはひときわ明るくホットな空間があった。コミュニティースペース「サロンほっとサライ」だ。昼時、お客さんが次々にやって来て食事をしたり、お弁当やお惣菜をテイクアウトしたり。会話が弾んで皆さん楽しそうだ。
サロンの飲食の営業は日曜と祝日を除く11~15時。働いているのは団地在住の方々で、皆さんボランティア、溌剌(はつらつ)としている。
以前のような活気を団地に取り戻したい
サロンを運営する「NPO法人 永田みなみ台ほっとサライ」理事長の香西玲子さんにオープンまでの経緯をうかがった。
「かつてはにぎやかでしたが、ここ15年ほど空き店舗が目立ち、団地内が閑散としてさみしい思いをしていました。まちづくりの勉強会をきっかけに、同じ思いをもつ人たちで、以前のような活気あるまちにしたいと動き始めました」
そこから最初に生まれたのが「つながり祭(さい)」だ。「赤ちゃんからお年寄りまでみんな集まれ」をコンセプトに、2016(平成28)年2月に初開催。中央広場と空き店舗を利用して模擬店やバザー、工作ワークショップのほか、地域の方々の演奏やダンスの披露など多彩な催しで、大勢の人が集まり、盛り上がったという。
その後は隔月で開催していたが、「常設の交流の場がほしい」という夢は膨らむ一方。
「横浜市からの助成を受けられましたが、それでも内装や家賃のための資金集めは本当に大変でした」とサロンオープンに向けての苦労を語るのは、法人の副理事長の佐藤明美さん。バザーや街頭での募金活動に奔走したのは、なんとかして団地を元気にしたいという思いからだったという。
そしてついに2019年4月、地域住民待望の「サロンほっとサライ」がオープン。火・金曜日に提供されるランチは、旬の味覚にこだわった充実のメニュー。お客さんに喜んでもらいたいと、途中からうどんやトーストの提供なども加わり、今では地域になくてはならない場所になっている。
子どもたちに伝えたい ここがふるさとだと
「サロンほっとサライ」は、まちの活性化と多世代交流の場、子どもや高齢者を含め地域の人々の見守りの拠点でもある。障害者地域作業所で製造するお菓子を販売したり、レンタルの販売スペースを設置して、希望者がアクセサリーや手作り品を販売したり。それらの買い物を楽しみに立ち寄るお客さんも少なくない。また百人一首の集いや民生委員による相談会なども開催。小学生の習字や絵画の展示なども行っている。
子どもたちとの交流では、つながり祭の日の清掃も重要な役目を果たしている。毎回、開催前に1時間ほど団地住民と小学生(3~6年)だけで団地内や周辺を清掃するのだが、教師や保護者の付き添いはなしだ。
「当初は子どもだけでの参加に心配の声もありましたが、そこは責任をもちますからとお願いして。団地住民と子どもたちだけの時間にさせてもらいました。交流を通して、子どもたちにここがふるさとだと思ってもらいたいですし、子どもたちは地域に貢献しているという実感をもてます」と法人の事務局長の渡辺乃志男(のしお)さん。
URの宮内明子は、そのような地域の方々の年代を超えた交流を微笑ましく感じている。
「皆さん熱心で、とてもいい地域のつながりを感じます。つながり祭ではURもワークショップを開くなど参加しています」
昨年、サロンオープン後にURの管理サービス事務所がサロンの隣に移転したことで、団地にお住まいの方々との日常的なやりとりがしやすくなり、連携も強化されている。
この日の午後、団地内の小学校の6年生が卒業を前に、自分たちが制作した影絵を披露しにサロンにやってきた。「みなしごハッチ」と「スイミー」の話をベースに構成した南永田団地が舞台のオリジナルストーリー。特徴をとらえた住棟の影絵に参加者から拍手がわき、団地住民への感謝が込められたエンディングに目を潤ませる人も。この団地が確実に子どもたちのふるさとになっていることが伝わってきて、会場は暖かい空気に包まれた。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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