街に、ルネッサンス UR都市機構

「希望」が見えてきたまちへ(福島県 いわき市)

URPRESS 2018 vol.49 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

ツツジと共に寄り添い、復興を祈る
福島県 いわき市

この春、いわき市は明るいニュースに包まれた。まっさらな造成地を彩る復興祈願のツツジが鎌倉から届いたのだ。

目に見えるかたちで応援したい

ツツジの記念植樹。右から、いわき市の鈴木典弘副市長、薄磯区の鈴木幸長区長、鶴岡八幡宮の吉田茂穗宮司、いわき市議会の大峯英之議員。

今年2月、津波で甚大な被害を受けた薄磯地区の造成地に、ツツジがお目見えした。鎌倉の鶴岡八幡宮への参詣道である若宮大路の「段葛(だんかづら)」に植えられていたツツジが寄贈されたのだ。

2月19日には復興祈念のツツジ植樹祭が行われた。その会場で、鶴岡八幡宮の吉田茂穗(しげほ)宮司は、ツツジに込めた思いを語った。東日本大震災の1年前に八幡宮の大イチョウが倒れ、関係者一同、大きなショックを受けたこと。その時、全国から励ましの言葉や写真が届き、元気づけられたこと。そして東日本大震災で被災された人たちの力になりたいと、八幡宮でも活動を続けていること……。
「鶴岡八幡宮の段葛がある若宮大路は参詣道であり、御百度石の機能をもっています。おそらく源頼朝も北条政子も願いを携えて往復したことでしょう。震災後、何か目に見えるかたちで被災地の方々を応援したいと思い、願いを込めて通う道に植わっていたツツジをお分けしたいと考えました」

と吉田茂穗宮司。その思いを受けて、薄磯在住の瀬谷貢一さんは、「薄磯は震災で多くのものを失いましたが、鶴岡八幡宮からツツジをいただけて、後生に残せるものができました」

と感謝の思いを口にした。瀬谷さんが鶴岡八幡宮崇敬会「槐(えんじゅ)の会」主催の被災地支援イベントに参加したことが、今回の寄贈につながったのだ。 「由緒あるツツジですので大切に育てて、永遠に続くまちをつくっていきたい。薄磯段葛の誕生です」

と微笑む薄磯の鈴木幸長区長は、ツツジが彩るこの地に、戻って来る人が増えることを期待している。

記念植樹祭には薄磯にお住まいの方やボランティアも参加。ツツジに土寄せし、水やりをした。
植樹祭後の交流会で談笑する薄磯区の鈴木幸長区長(右)とURの久宮所長。交流会ではあんこう鍋がふるまわれた。
「薄磯はいわき市内で震災の犠牲者が最も多かった地域。URさんをはじめ全国からたくさんの方に応援に来ていただき、復興整備が順調に進んでいることに感謝しています」と語る、いわき市の鈴木典弘副市長。

ツツジの階段をシンボルに

贈られたツツジは、公園(中街つつじ公園)予定地の階段脇に植えられた。実は、造成地の低地部と高台部を結ぶ公園にシンボルとなる参道を模した階段を設置し、両サイドに八幡宮のツツジを植えることを提案したのはUR都市機構だ。2013(平成25)年2月にいわき市と協力協定を結んだUR都市機構は、薄磯と豊間の2地区の市街地整備事業を担い、復興まちづくりを推進している。造成した宅地の整備はほぼ完了し、今年夏までに引き渡し予定だ。
「ツツジの寄贈の話を聞き、どこに植えるのが一番適切かを考え、いわき市や薄磯区の方々、工事関係者と協議を重ねて実現に至りました。ツツジの花壇に配置している庭石は、震災前からこの地域で使われていたものです」

とUR都市機構いわき復興支援事務所長 久宮(くぐう)和彦は説明する。地元の遺産も活用しながら、地域の人々の憩いの場、心の拠り所となることを願って花壇を整備した。

植樹祭には地元の人やボランティアなど約150人が参加。ツツジに水や肥料を与える人々の笑顔を前に、UR都市機構職員の表情も和んでいた。この4年間、職員たちは地域の人々の声に耳を傾けながら、どうしたら安心・安全で心地よく暮らせるまちとなるかを考え続け、復興支援に奮闘してきたのだ。地元のどんぐりの苗木を育てて防災緑地に植樹するプロジェクトも、UR職員が立ち上げからサポートしてきた。

ツツジが植えられた公園の階段がシンボルとなる造成地。高台と低地の双方に住宅が建てられる。
鶴岡八幡宮のツツジ。若宮大路の中央に一段高く造られた「段葛」に植えられていた。「ツツジを通して薄磯の方たちに寄り添い、見守っていきたい」と吉田茂穗宮司。
植樹祭当日、薄磯のビーチクリーン活動も行われた。
山を切り開いて造成した高台の宅地に立つ、URいわき復興支援事務所長の久宮和彦。

7年ぶりの海開き

ツツジに彩られた階段を上がってみた。まるで空に続くような階段の先にある高台に着いて驚いた。振り返ると、防災緑地の先に青く光る大海原が広がっている。この景観に魅かれ、新たに移り住む人もいるにちがいない。震災前、薄磯の海岸は市内でも一番人気の海水浴場だった。

この夏、薄磯の海水浴場が7年ぶりに再開されるというニュースも、地域の人たちの気持ちを明るくしている。

若宮大路が起点となって鎌倉のまちができていったように、中街つつじ公園を起点に薄磯の新しいまちが広がっていく。

【妹尾和子=文、平野光良=撮影】

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復興インタビュー

震災直後から故郷・陸前高田をはじめ東北地方を訪れ、被災した人々に寄り添った活動を続けている村上弘明さん。6年間、復興を見つめてきたから、見えてきた希望があると語ります。

福島県 いわき市

この春、いわき市は明るいニュースに包まれた。まっさらな造成地を彩る復興祈願のツツジが鎌倉から届いたのだ。

Before&After 2011→2017

大震災から6年。復興の槌音は、確実な響きとなって被災地にこだましています。新たなまちづくりが進む東北3県のなかで、今回、本誌で紹介した6つの地区の、6年前と今の姿を写真でお届けします。

AKB48「誰かのために」プロジェクト 東北復興支援

宮城県山元町、岩手県岩泉町、福島県広野町

復興支援MAP

UR都市機構が取り組む復興支援MAP2017

UR災害復興支援の取り組み

阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災と復興支援に取り組んできたUR都市機構。これまでの経験やノウハウを生かし、災害からの復旧・復興に取り組む自治体と連携し、復興を支援している。

団地で楽しく防災を考える

災害に備える知識を学ぶワークショップや被災時に住まいとなるテントに泊まる体験など団地を舞台に「もしも」のときについて学び、体験する催しが大好評だ。

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