街に、ルネッサンス UR都市機構

「希望」が見えてきたまちへ(岩手県 陸前高田市)

URPRESS 2018 vol.49 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

「夢」が少しずつ動き出し
まちに「希望」が見えてきた
岩手県 陸前高田市

2月、俳優・村上弘明さんが、テレビ番組の収録で、震災から6年たった故郷・陸前高田を訪れた。地震と津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田。そこで進む復興まちづくりを支える人々に、笑顔があった。

雪をかぶった奇跡の一本松を背に、故郷を見つめる村上さん。

親友の言葉に希望を見つけた

「俺、被災地だからって、下を向いて、眉間にしわを寄せて暮らしたくないんだよ。笑って暮らしたいんだ」

村上さんの訪問を受け、高校時代の親友、磐井正篤(いわいせいとく)さんがぽつりと話す。

磐井さんは地酒と和雑貨の店を震災で失い、仮設店舗で営業を再開。今年、中心市街地に移って本格的な店を再開する予定だという。震災からの日々で何より感じてきた人と人とのつながり、大勢の人の支えと出会い……。
「世間は6年もかかって遅い、というかもしれない。でも俺は6年でよくここまで来たと思う。このまちに来ると、面白い人がいるな、楽しいなと思える、魅力あるまちに。震災を経たからこそ、このまちがそんなふうに変わっていければいいと思っているんだ」

親友の力強い言葉に、村上さんは何度もうなずき返した。

陸前高田に来たら必ず立ち寄る、高校時代の同級生、磐井さんの店で。「震災によって得られた出会いや人とのつながりを大切にしたい」と語り合う。

高台造成とかさ上げで新しいまちが生まれた

市役所の仮庁舎の前で、戸羽市長(左)、UR都市機構陸前高田復興支援事務所長の草場優昭(まさあき)(右)とともに。市役所から出てきた女性に「あれぇ、ヒロアキちゃんでないの!」と声をかけられる一幕も。地元で知らぬ人はいない村上さんなのであった。

震災後、足しげく通っている故郷・陸前高田市に、今回はテレビカメラとともにやってきた。

あの日、15メートルにも達する津波に見舞われ、瓦礫に埋もれたまちは今、復興が形となって見え始めてきた。山を削って高台を造成し、その土で旧市街地を平均7~8メートルかさ上げしているのだ。市街地整備は被災3県で最大規模、面積は300ヘクタールに及ぶ。

奇跡の一本松を背景に、収録がスタート。「あれは何ですか?」と村上さんが指さす先には、山の斜面に巨大なコンクリートの構造物が口をあけて並んでいる。ベルトコンベヤーへの土砂投入口との説明にうなずく村上さん。3キロもの長さのベルトコンベヤーは、2014(平成26)年3月からかさ上げに必要な膨大な土を運び、15年9月にその役目を終えた。ベルトコンベヤーの利用で、かさ上げに要する期間を約6年も短縮したという。

仮庁舎前では、復興を率いる戸羽太市長にお会いした。 「まだ多くの方々が仮設住まいですが、かさ上げも高台造成も進み、復興が目に見える形になってきて、皆さんに笑顔が増えました。希望をもっていただけるようになってきたと感じますね。多くの支援をいただき、オール陸前高田で頑張って、ここまで来ることができました」

夢と魅力のあるまちへ希望が見えてきた

なかでも市民の希望の力になっているのが、4月末オープンを目指して中心市街地に建設されている大型商業施設だ。名前は公募で「アバッセたかた」と付けられた。
「『アバッセ』は土地の言葉で『さあ、行こう』という意味。いい名前ですね」
と村上さん。

完成を控えたアバッセたかたの前で、陸前高田商工会の会長、伊東孝さんにもお話を聞いた。商業施設の周辺には広場などを設け、併設の市立図書館も6月末にはオープン予定。金融機関などの施設もでき、年内中には周囲に個人商店も建つという。
「ここがまちの核になるんですね」
と周囲を見回す村上さん。
「ようやくです。いよいよスタートするんだな、という気持ちです。オープンを前に、皆さんの期待をひしひしと感じています」と伊東さんも感慨深げだ。

まち全体を見渡せる場所へと足を運んだのが、UR都市機構が建設した災害公営住宅下和野(しもわの)団地。2014年秋、かさ上げされた土地にはじめてできた集合住宅では、すでに入居が始まっている。最上階のテラスからは、造成が進むまちが一望できる。造成地の広がりの中に、建設中のアバッセたかたの姿も見えた。その向こうには、キラキラと輝く海。
「きっといいまちができる」

形を見せ始めたまちに、村上さんと陸前高田の人々の夢も動き出している。

UR都市機構陸前高田復興支援事務所の犬童伸広と、災害公営住宅下和野団地の屋上から、かさ上げされた中心市街地を眺める。雪の日もダンプカーが動き回り、復興への歩みは着実に進む。
建設が進む大型商業施設「アバッセたかた」の前で、商工会会長の伊東さんと。商業施設周辺には広場などを設け、一体的なにぎわいを生み出す仕組みも。

【西上原三千代=文、佐藤慎吾=撮影】

宮城県 石巻市

石巻市の南側に広がる新門脇地区では、復興公営住宅がすべて完成し、宅地と道路もほぼ完成を迎えた3月、新たなまちのお披露目が行われた。

宮城県 塩竈(しおがま)市

「災害公営住宅の整備に係る基本協定」に加え、「コミュニティー形成と地域の支え合い活動の推進に関する協力協定」も結び、安心して暮らせる環境づくりを共に進めてきたUR都市機構と塩竈市。担当する最後の災害公営住宅が完成し、節目となる日がやってきた。

宮城県 南三陸町

高台の住宅地の完成、そしてさんさん商店街の移転オープン。この春、南三陸町の復興まちづくりは、新たな幕を開けた。

岩手県 陸前高田市

2月、俳優・村上弘明さんが、テレビ番組の収録で、震災から6年たった故郷・陸前高田を訪れた。地震と津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田。そこで進む復興まちづくりを支える人々に、笑顔があった。

復興インタビュー

震災直後から故郷・陸前高田をはじめ東北地方を訪れ、被災した人々に寄り添った活動を続けている村上弘明さん。6年間、復興を見つめてきたから、見えてきた希望があると語ります。

福島県 いわき市

この春、いわき市は明るいニュースに包まれた。まっさらな造成地を彩る復興祈願のツツジが鎌倉から届いたのだ。

Before&After 2011→2017

大震災から6年。復興の槌音は、確実な響きとなって被災地にこだましています。新たなまちづくりが進む東北3県のなかで、今回、本誌で紹介した6つの地区の、6年前と今の姿を写真でお届けします。

AKB48「誰かのために」プロジェクト 東北復興支援

宮城県山元町、岩手県岩泉町、福島県広野町

復興支援MAP

UR都市機構が取り組む復興支援MAP2017

UR災害復興支援の取り組み

阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災と復興支援に取り組んできたUR都市機構。これまでの経験やノウハウを生かし、災害からの復旧・復興に取り組む自治体と連携し、復興を支援している。

団地で楽しく防災を考える

災害に備える知識を学ぶワークショップや被災時に住まいとなるテントに泊まる体験など団地を舞台に「もしも」のときについて学び、体験する催しが大好評だ。

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