街に、ルネッサンス UR都市機構

「希望」が見えてきたまちへ(宮城県 南三陸町)

URPRESS 2018 vol.49 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興パワーを生み出すまちの核となる舞台が完成
宮城県 南三陸町

高台の住宅地の完成、そしてさんさん商店街の移転オープン。
この春、南三陸町の復興まちづくりは、新たな幕を開けた。

低地部のかさ上げが進む南三陸町。志津川湾に向かって、南三陸志津川さんさん商店街の建物が並ぶ。

観光交流拠点にさんさん商店街オープン

3月3日、装い新たに南三陸志津川さんさん商店街がオープンした。仮設時代に200万人が訪れ、全国にその名を知られる商店街の本設オープンとあって、当日は多くの人が訪れた。

地元の南三陸杉をふんだんに使った美しい木造建築の建物には、地元の海の幸を提供する鮮魚店や飲食店をはじめ、洋品店や菓子店など28店舗が入居。次々にやって来るお客さんから「オープンおめでとう!」「買い物やお茶を飲みに来る場所ができてうれしいわ」と声をかけられ、緊張気味だった商店主の顔がほころんでいる。

「避難所から仮設住宅、本設へと引っ越しが続き、いまだ落ち着かない人が多い状況です。震災でコミュニティーが崩壊してしまっているので、商店街がお客さまの交流の場になればと思っています」

と話すのは、自身の新店舗「阿部茶舗」にイートインスペースを設けた、商店街の阿部忠彦会長だ。

全国から注目される南三陸志津川さんさん商店街。3月3日のオープニングセレモニーには関係者や報道陣を含め大勢の人が集まった。オープンを心待ちにしていた地元の人も次々に訪れ、楽しんでいた。
商店街会長の阿部忠彦さんが営む阿部茶舗のイートインスペースは、あえて杉の梁や柱を見せる造りにした。

佐藤仁町長が目指す活気あふれるまちづくり

東日本大震災で町内の6割以上の建物が流された南三陸町は、「なりわいの場所はさまざまであっても、住宅は高台に」という方針でまちづくりを進めている。それを実現すべく、志津川地区の市街地整備と災害公営住宅整備を担当し、支援してきたのはUR都市機構だ。山を切り開いて造成した高台の3つの団地は2016(平成28)年度で引き渡しが完了。災害公営住宅は入居が進み、宅地には住宅が建ち始めている。

一方、交流施設や商業施設などを配置し、安全・安心かつにぎわいのあるコンパクトなまちづくりを目指す低地部は、高台造成で出た土を利用し、約10メートルのかさ上げが急ピッチで進められている。南三陸志津川さんさん商店街がつくられたのは、にぎわいを生み出す観光交流拠点として、先行整備したかさ上げエリアだ。 「URさんをはじめ皆さんのおかげで、まちづくりのハード面は方向性が見えてきたので、これから重要なのはソフト面です」

と語るのは、商店街の完成を感慨深く見守る南三陸の佐藤仁町長。交流人口を増やして、まちを活性化させることが課題であり、今後も多くの人に南三陸へ足を運んで応援してもらいたいと呼びかける。

そして、商店街を含め南三陸の復興市街地のグランドデザインを担当している建築家の隈研吾さんは、商店街を生活の舞台として活用してほしいと話す。「商店街は地域の核であり、南三陸の人たちの情熱が集結した場。復興の元気をつくる舞台」だと言う。

震災の日、防災対策庁舎の上でまちの様子を見ていたという南三陸の佐藤仁町長。復興にかける思いは強い。
UR都市機構が整備した高台の宅地には住宅が建ち始めている。
災害公営住宅である志津川東復興住宅。雨にぬれずに回遊できる造りで、中央に芝生広場がある。

2018年度の市街地整備完了に向けて

「整備した地に住宅が再建されていくのを見るのもうれしいですが、お客さまでにぎわう商店街を見て、また違った喜びがありました」

そう言って、市街地整備エリアに目を向けるのは、UR都市機構南三陸復興支援事務所長の南木宏和だ。南三陸町は市街地整備の規模が大きいので、国道、河川、防潮堤などの復興復旧事業との調整も多岐にわたり、一筋縄ではいかない。それでも南木をはじめUR職員は、計画を前倒しする意気込みで知恵をしぼり、まちの人や工事関係者と力を合わせ、2018年度の整備完了に向けて仕事を進めている。

商店街の新たな門出を喜び合いながらも、「これからが本番だ!」という緊張感を抱く関係者たち。南三陸の復興まちづくりは、新たなステージを迎えている。

毎朝、石巻から車を50km走らせて、南三陸へ通っているUR都市機構南三陸復興支援事務所長の南木宏和。 「山を越えて志津川に出ると、景色や雰囲気が一気に明るくなります。低地部も早く土地をお渡しして、にぎわいの広がりをもてるようにしたいです」

東北は日本の宝。世界中から人が訪れるまちに!

東京大学教授・建築家 隈研吾さん

南三陸志津川さんさん商店街のデザインで大事にしたのは、南三陸らしさです。仮設のときの商店街の楽しい雰囲気を本設でも活かすことを心がけました。

建築の見どころは、(1)海を近くに感じられるデザイン、(2)日本ならではの中と外をつなぐ縁側を設けたこと、(3)南三陸杉をたくさん使ったことです。縁側にはベンチを置いたり、看板をつけたり、どんどん手を加えて使っていただきたいですね。

地形が複雑で、それぞれ独特の文化がある東北は、日本の宝。東北の力がこれからの日本を支えると僕は思っています。だからこそ、南三陸を世界中から観光客や視察の人が集まるような、輝くまちにしたい。これからも全力で応援していきます。

【妹尾和子=文、青木登=撮影】

宮城県 石巻市

石巻市の南側に広がる新門脇地区では、復興公営住宅がすべて完成し、宅地と道路もほぼ完成を迎えた3月、新たなまちのお披露目が行われた。

宮城県 塩竈(しおがま)市

「災害公営住宅の整備に係る基本協定」に加え、「コミュニティー形成と地域の支え合い活動の推進に関する協力協定」も結び、安心して暮らせる環境づくりを共に進めてきたUR都市機構と塩竈市。担当する最後の災害公営住宅が完成し、節目となる日がやってきた。

宮城県 南三陸町

高台の住宅地の完成、そしてさんさん商店街の移転オープン。この春、南三陸町の復興まちづくりは、新たな幕を開けた。

岩手県 陸前高田市

2月、俳優・村上弘明さんが、テレビ番組の収録で、震災から6年たった故郷・陸前高田を訪れた。地震と津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田。そこで進む復興まちづくりを支える人々に、笑顔があった。

復興インタビュー

震災直後から故郷・陸前高田をはじめ東北地方を訪れ、被災した人々に寄り添った活動を続けている村上弘明さん。6年間、復興を見つめてきたから、見えてきた希望があると語ります。

福島県 いわき市

この春、いわき市は明るいニュースに包まれた。まっさらな造成地を彩る復興祈願のツツジが鎌倉から届いたのだ。

Before&After 2011→2017

大震災から6年。復興の槌音は、確実な響きとなって被災地にこだましています。新たなまちづくりが進む東北3県のなかで、今回、本誌で紹介した6つの地区の、6年前と今の姿を写真でお届けします。

AKB48「誰かのために」プロジェクト 東北復興支援

宮城県山元町、岩手県岩泉町、福島県広野町

復興支援MAP

UR都市機構が取り組む復興支援MAP2017

UR災害復興支援の取り組み

阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災と復興支援に取り組んできたUR都市機構。これまでの経験やノウハウを生かし、災害からの復旧・復興に取り組む自治体と連携し、復興を支援している。

団地で楽しく防災を考える

災害に備える知識を学ぶワークショップや被災時に住まいとなるテントに泊まる体験など団地を舞台に「もしも」のときについて学び、体験する催しが大好評だ。

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