街に、ルネッサンス UR都市機構

福島県双葉町

UR PRESS 2018 vol.53 UR都市機構の情報誌 [ユーザールプレス]

復興の第一歩を踏み出す
働く拠点の整備が始まった
福島県 双葉町

全町が避難指示区域になっている福島県双葉町に、震災から7年を経て、ようやく復興の第一歩がしるされた。

双葉町復興まちづくり計画のジオラマの前に立つ双葉町の伊澤史朗町長(左)と、URの中島正弘理事長。

町民の帰還に向けて、まず働く場をつくる

今年1月28日。東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故から間もなく7年がたとうとしていたこの日、双葉町中野地区で「中野地区復興産業拠点」の起工式が行われた。

吉野正芳復興大臣をはじめ多数の来賓が臨席する式典の冒頭、双葉町の伊澤史朗町長は、「ようやくまちの本格復興がスタートします」と感慨深げに言葉を継いだ。「この7年間、町の皆さんに復興の姿をお見せすることができなかったことに、忸怩(じくじ)たる思いでいましたが、ようやくここから復興を形にして皆さんにお見せできるようになります」と復興の第一歩を踏み出す思いが語られた。

全町が避難指示区域になっている双葉町の復興まちづくり計画は、町民が再び双葉町に戻ってこられるよう、まずしっかりした産業基盤を町につくり、人が働く場を生み出すことが考えられている。そこで避難指示解除準備区域である中野地区に、町の復興の先駆けとなる拠点を整備。企業を誘致して新しい産業を生み出し、情報を発信する場にしようと計画されているのが、中野地区復興産業拠点だ。

面積は約50ヘクタール。町では積極的に企業誘致活動を行うかたわら、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、まず震災や原子力災害を伝承するための「アーカイブ拠点施設」(県事業)と、飲食店やショップも入る「産業交流センター」をつくる計画だ。ここから情報を発信して広く人々の交流を促し、たくさんの町民の帰還につなげていきたいと考えている。

写真中央の建物群が1月28日に起工式が行われた中野地区復興産業拠点(イメージ)。オレンジ色の点線部分は、海側に造られる復興祈念公園から当地区や中心市街地を抜けて、常磐自動車道に建設中の双葉IC(仮称)まで計画されている新しい県道だ。
津波被害を受けた耕作地が、復興のシンボルとなる復興産業拠点に生まれ変わる。

URの経験を双葉町の復興に活かしてほしい

双葉町と復興拠点の整備や復興まちづくりに関する協力協定を結び、事業を受託しているURの職員たちも、起工式に出席した。
「式典が終わってほっとすると同時に、いよいよスタート地点に立ったと、気持ちが引き締まる思いです」とUR双葉復興支援事務所の森脇恵司所長は話す。
「まず働く場をつくることで、町民の皆さんに復興の槌音を届け、少しでも多くの人々の帰還につながればと考えています」

そのためのまちづくりを行うのがURの仕事。この中野地区は津波被害も受けているので、土地全体を1メートルかさ上げし、ライフラインを整備、必要な道路をつくるなどして、復興拠点の土台を整えていく。

自ら志願して2012年から4年間、宮城県女川町で震災復興事業に携わっていたという森脇。津波被災地ではスピードが第一に求められてきたが、ここではスピードに加え、どのくらいの人々が町に戻ってくるかが不透明ななかで、将来のまちづくり像を模索しながらの作業になる。そこがこれまでと異なる難しいところだという。

伊澤町長は、「東北をはじめ、全国各地でさまざまな事業に関わってきたURの経験を、この双葉町の復興まちづくりに活かしてほしい」と期待を寄せる。

双葉町の復興計画は、「働く拠点」から「住む拠点」の整備へと続いていく。たくさんの人々がふるさとに戻ってくる日のために、双葉町でのURの活躍はこれからが正念場だ。

「ただ事業所が並ぶだけの産業団地ではなく、国内外から注目される情報を、広く発信する拠点にしたい」と抱負を語るURの森脇恵司。
起工式では工事の安全を祈り、鍬入れも行われた。

【武田ちよこ=文、平野光良=撮影】

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