岩手県大船渡市
新しいまちの核となるピースが完成
人々がつながる場が生まれる
岩手県 大船渡市
復興が進む大船渡駅周辺地区に、市民が集い、来訪者と交流する核となる施設が生まれる。
完成間近の施設へ地元小学生たちが見学にやってきた。
完成間近の施設を小学生にお披露目
お揃いの赤い帽子に緑色のジャージのズボンをはいて、市立大船渡小学校3年生24人がやってきたのは、完成間近の大船渡市防災観光交流センター。子どもたちはこの日、地元を探究する総合学習の授業の一環で新しい施設を見学し、建物前の広場に市の花である椿を植樹することになっている。
ここはJR大船渡駅に隣接し、昨年4月にオープンした商業施設「キャッセン大船渡」の目の前。お隣には銘菓「かもめの玉子」でおなじみのさいとう製菓が運営するショップ「かもめテラス」、向かいには「大船渡プラザホテル」がある。
大船渡駅東側の津波復興拠点エリアはURの基盤整備工事が完了し、新たなまちのにぎわいの中心になると期待されている。その重要なピースとして大船渡市防災観光交流センターが完成、4月28日に第3期まちびらきが行われ、いよいよ新たなまちが本格的に動き出す。
地元素材にこだわった複合施設
大船渡市防災観光交流センターには、いくつもの顔がある。まず津波発生時の一時的な避難所としての機能。建物の2階以上は東日本大震災と同規模の津波でも浸水しない高さで、大勢が避難できるよう建物外部には大きな階段をつけた。3階には発電機と備蓄倉庫を整備。
1階には市の観光案内所を置き、大船渡を訪れる人と地元の人々の交流の場をつくる。2階は公民館的なフロアで、茶室にもなる42畳の和室、キッチン、会議室、防音設備の整ったスタジオなどを完備。可変性が高く、ホールは最大で200人収容可能になる。
「時間的なプレッシャーがあったので、期日通りに完成して、まずはホッとしています」と話すのは、設計を担当したUR岩手震災復興支援本部の梅本大輔。館内には地元大船渡へのこだわりが随所にあると教えてくれた。
和室の壁は牡蠣殻漆喰という地元に伝わる技法を地元企業が施工した。その壁の色は、何度も塗り直しをして生まれた椿の紅色。
「柱には地元の気仙杉をあしらい、2階入口横の壁のブルーは大船渡の海の色、スタジオ入口の壁は、大船渡市にある碁石海岸の色をイメージしています」
屋外に目を転じると、地面のあしらいやベンチ、植栽の周囲などに楕円やカーブが多用されていることに気づく。屋外設計を担当したURの山本洋之によれば、周囲の施設とゆるやかにつながることを意識して、円や楕円を使っているそうだ。色彩や素材も周囲との調和が意識されている。造園を担当したURの押山国男も「椿を植えた広場が、皆さんの憩いのスペースになれば」と願っている。
子どもたちが担う「まち育て」
URとともにこの事業を担当した大船渡市災害復興局の佐藤 仁さんは、「津波で流され、復興で更地になった所に、ゼロからつくってきたまちです。人のつながりを大切に、外から来た人と大船渡の人、そして大船渡の人同士もここで出会う、この施設がその中心になれば」と期待する。
「URができるのはここまでです。これからこの施設が地元の人に長く愛され、活用されるように『まち育て』をするのは、今日の子どもたちです」とURの梅本も言う。
子どもたちからは、「将来は大船渡を出ようと思っていたけど、『まち育て』ということを聞いて、ここでまち育てをしたいと思いました」「地元の木を使っていることを知り、将来自分の家を建てるときには大船渡のものを使って、来る人に大船渡を見せたいと思いました」といった感想が。
「うれしいですね。これからまちをつくっていくのは、この子どもたちです。今日、彼らが植えた椿が花を咲かせ、やがて大きな木に成長するのを見に、成長した子どもたちが再びここに戻ってきてくれるといいですね」
満足の笑みと子どもたちへの期待を胸に、UR職員の復興は続く。
【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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