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【特集】大和川左岸(三宝)土地区画整理事業(大阪府堺市)

URPRESS 2019 vol.59 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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住む人の安心と安全を守るスーパー堤防が新しいまちをつくる

仁徳天皇陵古墳を含む百舌鳥古墳群の世界遺産登録に沸く大阪府堺市。この地を流れる大和川の河口近くで行われているのが、高規格堤防整備と一体化したまちづくりだ。
安心・安全な暮らしのために、国土交通省と堺市、URが手を携えて整備する現場を取材した。

以前公園だった場所に盛土をして、新たな土地をつくっている。

高規格堤防と高速道路2つの整備を一体化

奈良盆地から大阪平野を流れ、大阪湾に注ぐ大和川。延長68キロメートル、沿川には215万人が暮らす一級河川だ。その川の左岸、河口近くにある三宝地区では、安心・安全なまちづくりのための大規模プロジェクトが進行中だ。

「大和川では、江戸時代には度重なる氾濫を改善するため川の付け替えが行われました。その後も下流域では度々洪水の危険にさらされ、防災性向上が周辺住民の悲願となっていたのです」と説明するのは、堺市建築都市局の谷口毅高規格堤防推進室長だ。

そこで浮上したのが、下流にある大和川左岸(三宝)地区の高規格堤防整備だ。高規格堤防とは、通常よりも幅の広い堤防のこと。堤防の裏法面に土を盛り、緩やかな台地状にすることで、洪水時の堤防の決壊を防ぎ、市街地を壊滅的な被害から守ることができる。さらには、盛土をした堤防の上を住宅用地や道路、公園などに活用でき、安全で暮らしやすいまちづくりにもつながるという。

同時に、この地区は大阪都心部の新たな環状道路をつくる都市再生プロジェクトにも認定。国土交通省による高規格堤防整備と一体化して、阪神高速大和川線の整備も進行中だ。URは一体整備の初期検討段階から参画し、2017(平成29)年から2つの事業を合わせた新しいまちづくりのための土地区画整理事業を担うことになった。

堺市建築都市局の谷口室長。「URの方にも堺への地元愛と仲間意識を持っていただけるよう、今年の住吉祭りでは一緒におみこしを担ぎました」
先行して整備が進む阪神高速大和川線が地区の下を通る。四角い建物は、トンネル内の自動車排気ガスを換気する阪神高速の重要な施設である南島換気所。
土地区画整理事業を行う大和川左岸(三宝)地区は、大和川河口近くの左岸、東西約1km、面積約13haの細長い地域。

住民の新たな生活に寄り添ったまちづくり

盛土をした新しい土地に、安心・安全なまちをつくる——そこには、通常の土地区画整理事業と違う難しさがある、と事業を担当するURの西尾司は説明する。

「盛土をするには、現在お住まいの方々全員にいったん転居していただき、盛土が終わった段階で戻って新たな家を建てるプロセスが必要です。300人ほどいらっしゃる地権者さん1軒1軒に説明を重ね、全員に納得していただかないと、次のステップに進めないのです」

そこで考えたのが、仮住まいが不要となる一度移転地の確保だ。大規模な地区内の工場跡地や市有地だけでなく、阪神高速道路大和川線(地下構造)の上部を宅地利用可能とした。これらの土地を先行整備し、地権者の負担軽減を図った。

もう1つの課題が、築30年以上の小規模住宅が密集するまちの防災性向上と生活再建だ。そこで、堺市は100平方メートル未満の土地所有者で、地区外移転を希望される地権者の土地を買い取ることを決定した。谷口室長は「それぞれの方のライフスタイルに合わせた生活再建ができるよう、公営住宅のあっせんなど、できる限りのことをしたい」と語る。西尾も「地権者の方々の声に耳を傾け、各種の相談ができる公的な相談窓口を探してお知らせするなど、少しでも不安を解消し、お役に立てるように努めています」と話す。

「高規格堤防整備はまだ例が少なく、国も期待の事業。先進的な事例の見本として、ぜひ成功させたい」と意気込むURの西尾。

古墳のように千年先に残る仕事

9月、工事が進む現場を訪れた。悠々たる大和川の岸辺から眺めると、国土交通省が盛土を行う土地では重機が作業の真っ最中。今年度中には、阪神高速大和川線が全線開通予定だ。工事の進捗管理などを行うURの常田教一は「千年以上前に土を盛って造られた古墳が今も残っているように、自分がやっている仕事もこの先長く残るのかと思うと、大きなやりがいを感じます」と話す。

今後は盛土を終えた堤防の上にURが土地区画整理事業で宅地や公園、道路などを整備。事業完了は2029(令和11)年度の予定だ。安心・安全な未来に向けて、まちは少しずつ変貌を遂げている。

今年の4月に赴任したURの常田。「1軒1軒のお宅に説明に回るのは大変ですが、いろいろな方にお会いしてお話を伺い、このまちへの愛着が生まれてきました」

【阿部民子=文、菅野健児=撮影】

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