【特集】 吹田操車場跡地土地区画整理事業(大阪府吹田市・摂津市)
日本最大級の操車場跡地に画期的な健康医療都市が誕生
かつて東洋一の物流拠点として名を馳せた吹田操車場。
その跡地が今、健康をコンセプトにした新しいまちへと生まれ変わろうとしている。
URは土地区画整理事業と多様な事業主体をつなぐコーディネート役として、大きな役割を担っている。

広大な操車場跡に新しいまちをつくる
大阪府の北東部、吹田市と摂津市をまたぐように存在する吹田操車場。1923(大正12)年から約60年間、幾多の貨物をさばき、1984(昭和59)年に操業を終了した。その後、1987(昭和62)年の国鉄民営化に伴い、約50ヘクタールに及ぶ跡地の開発事業が進められることになった。土地の約半分には梅田貨物駅機能の半分を移転して、新たに「吹田貨物ターミナル駅」を建設。残りの約22ヘクタールを「まちづくり用地」とし、URが土地区画整理事業等を担うことになった。
「レールや枕木などを外して土壌調査が終わった土地を整備し、ゼロからまちづくりを始めました。当初、地区の3分の2を市域にもつ吹田市さんは健康・教育創生拠点に、3分の1を市域にもつ摂津市さんは居住利用を目的としておられた。そこに国立循環器病研究センター(以下、国循)の移転が決まり、新たに掲げられたのが、北大阪健康医療都市『健都』というコンセプトです」とURの三上純一は説明する。
行政や民間まで多種の事業主体が関わり、多くの工事が同時に進行する壮大なプロジェクト。URは多岐にわたる関係者間の情報共有や地元住民との調整など、事業のコーディネートにも尽力した。

健康・医療をテーマに多様な事業主体が集結
「健都」の根幹でもある国循は、循環器を対象とする我が国唯一の高度専門医療研究センターだ。地区の中心部であるJR岸辺駅に直結し、今年の7月に運用を開始した。隣にはホテルやフィットネスクラブ、クリニックモール、薬局やスーパーなどが入る複合商業施設。その横には急性期医療や高度医療などを備える市立吹田市民病院が移転。すべてが広々としたデッキで行き来できるようになっている。
摂津市側に建つ約1000戸の大規模マンションも、健康が大きなテーマになっている。住民にはバイタルデータが測れるウェアラブル端末を配布。連携している国循から定期的に健康アドバイスが受けられる。
「国循さんとは市内かかりつけ医による病診連携のネットワークを構築するなど、健康への共同的な取り組みも始めました」と、摂津市建設部の伊藤和彦さんは説明する。
ほかにも高齢者向けウェルネス住宅、健康遊具やウォーキングコースを備えた健都レールサイド公園など、健康と医療の要素を散りばめた施設が集結。ジョギングコースにもなる緑の遊歩道が、それらすべてを緩やかにつないでいる。




健康医療まちづくりのモデルとしても注目
住みながらにして健康への意識が高まる、かつてないまち「健都」。今後も画期的な計画が控えている。「来年秋には、健都レールサイド公園に、健康への学びなどをコンセプトにしたライブラリーがオープンします。さらに地区に隣接する下水処理場跡地には、健都イノベーションパークとして、国循さんを核とした医療クラスターを形成すべく、先端的な研究開発を行う企業等の集積を進めています。すでに国立健康・栄養研究所の移転が決まり、予防医療への取り組みへの期待も高まっています」と吹田市健康医療部の岡松道哉室長。
今年開催されたG大阪サミットでは、各国の保健大臣が現場を視察。世界に類を見ない健康都市づくりは、日本のみならず、世界からも注目と期待を集めている。

【阿部民子=文、菅野健児=撮影】
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