【特集】東京都大田区 南六郷二丁目団地
子どもの居場所を作りたい
「ラーメンこども食堂」の挑戦
子どもが一人でも安心して食事ができる場所を作りたい、
地域交流の場になりたい。そんな思いを抱いて
今年5月、南六郷二丁目団地に「ラーメンこども食堂」がやってきた。
店の内外で、早くも世代を超えた交流が生まれている。
お母さんパワーがあふれる店内
品川駅から約15分の京浜急行雑色(ぞうしき)駅。南六郷二丁目団地は雑色駅から徒歩12分の多摩川沿いにある。周辺には小学校や中学校、保育園があり、団地内では普段から子どもの姿を多く見かけるが、今年5月、団地商店街に「ラーメンこども食堂」がオープンしてから、子どもの姿がますます増えたという。
「ラーメンこども食堂」は、普段は普通のラーメン店だが、月に1回イベントとして「こども食堂」を開催。子どもラーメンを1杯200円(大人用500円)で提供している。低価格だが味は本格派。世田谷の人気店「再来軒」の流れをくんでいるのだ。
しかし、店の一番の売りは店内の温かな雰囲気かもしれない。昔からの知り合いの家に来たような、気のおけない、なんともいえない安心感を感じさせてくれるのだ。
店を切り盛りするのは、子育て経験豊富なお母さんたち。PTAや地域ボランティア活動でつながった仲間だという。2年前から地域の町会会館で開催していたこども食堂に手ごたえを感じ、よりしっかりとした拠点を持とうと物件を探して、団地商店街に入居したのだという。
URの和田真理子は言う。「共働き家庭が増えている団地でも、子どもの居場所づくりは大きな課題です。子どもが一人でも安心して食事ができる場所が団地内にできたことは、とても意味があると思っています」
子どもが安心して過ごせる場所、大人が日々のストレスを忘れて笑って過ごせる場所をつくりたいというお母さんたちの熱意と、URの思いが共鳴した。
世代間交流が生まれるみんなの居場所
こども食堂といっても客は子どもたちだけではない。高齢者を含めた幅広い世代の居住者、また、団地の外からウワサを聞きつけてやってくる人も多いという。和田も、こども食堂に世代間交流の場としての可能性を感じているという。
店内では、そんな和田の思いを軽々と超えるように多世代の交流がすでに自然発生しているようだ。
ラーメンを食べる子どもたちを笑顔で見守るお年寄り、そんなお年寄りとハイタッチを交わして帰る子どもたち。そこには安心できる日常がある。
「学校の宿題を持って来てここでやる子もいるし、突然の雨に“タオル貸して!”と飛び込んでくる子もいます。毎日楽しいですよ!」と、「ラーメンこども食堂」代表の武井恵美子さん。なかにはボランティアを買って出る小学生もいるという。
「自分たちも楽しみながら地域に貢献したいと考えている私たちの活動の場として、団地はとても向いていると日々実感しています。敷地にゆとりがあって、幅広い世代の人が暮らしている、子どもたちが車の心配なく気軽にやって来れる、店の前の公園で子どもたちが遊んでいる姿が視野に入る。団地、楽しいです。南六郷二丁目団地に来て本当によかったと思っています」と笑顔で語る武井さん。
一方でURの和田は、「こども食堂の活動をきっかけに、人の輪がますます広がるように、側面から応援していきたい。今後は団地内のイベントに参加していただくことも考えられますし、団地内にとどまらない交流も生まれそうです。人と人をつなぐ役割をURが担えると思います」と語る。
団地とこども食堂の出会いは、コミュニティーの可能性を大きく広げてくれそうだ。
牧岡幸代=文、菅野健児=撮影
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