街に、ルネッサンス UR都市機構

密集市街地を、安全で魅力あるまちに変える

URPRESS 2018 vol.55 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


密集市街地を、安全で魅力あるまちに変える
密集市街地の整備

木造家屋が密集した地域は、防災面の脆弱さが課題だ。
大地震などで火の手が上がると延焼の危険性が高く、狭い道路は迅速な避難を阻む。
URは地方公共団体とともに各地で密集市街地の整備改善に取り組んでいる。

東京都荒川区荒川二・四・七丁目で進めている密集市街地整備事業で、URが整備した従前居住者用の賃貸住宅「コンフォール町屋」。

培ってきた事業のノウハウを駆使して密集市街地解消に挑む

国は全国にある密集市街地のうち、特に危険な密集市街地(全国で約6000ヘクタール)を「地震時等に著しく危険な密集市街地」として位置づけ、2020年度までに概ね解消する目標を定めている。著しく危険な密集市街地とは、地震などで大規模な火災が発生する可能性が高く、かつ避難が困難なエリアで、東京都や大阪府に多く分布している。

URは昭和50年代から密集市街地の整備に取り組んできたが、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災で密集市街地を襲った大規模火災が、ひとつの大きな潮目になったと担当者はいう。それ以降、URでは密集市街地整備の専門部署を新設し、一日も早い密集市街地解消のために本格的な取り組みを開始した。

密集市街地整備事業とは、震災などによる被害を軽減するため、(1)住民の避難路や緊急車両の進入路として機能する道路を整備 (2)住民の避難場所や延焼防止の緩衝帯として機能する公園・広場を整備 (3)老朽木造建物を除却、建て替えを促進し燃えにくくする。以上が大きな柱だ。
URではまちづくりの主体となる地方公共団体と連携・役割分担しながら、計画立案から地域住民との合意形成支援、事業実施まで、幅広く密集市街地整備のお手伝いを担っている。

まちづくりの課題に応じて事業手法もさまざまだ。例えば避難経路を確保するために道路を拡幅する場合、立ち退きを余儀なくされる方には、これまでの生活圏にも配慮した移転先が確保できなければ事業に協力を得ることは難しい。

そこで、密集市街地の中でURが土地を取得し代替地として提供したり、受け皿となる住宅(従前居住者用賃貸住宅)を建設するなど、生活再建方策と組み合わせながら事業を進めている。

また、密集市街地の土地は面積が小さく、道路用地を買収すると、残った土地は狭くて宅地として利用しにくい場合もある。そこで、URは土地を再配置する手法(土地区画整理事業)を活用し、宅地の利用価値を保ちながら道路用地を確保するなど、権利者との合意形成が図れるよう工夫している。

URは計画立案から地元の人々との話し合いに参加、勉強会の開催などを手伝いながら、地域の人々の理解の上で事業が進むよう努力している。事業を進めるうえでは、これまでに蓄積されたURのノウハウや、民間事業者とは異なるURの公平中立な立場が地域の人々の信頼を得て、事業を円滑に進める潤滑油になる。「まちづくりに使ってほしい」と快く土地を提供してくれるケースもあると聞く。

密集市街地整備事業の目的は防災性の向上だけではない。日常生活の質の向上や地域の魅力向上に寄与するまちづくりに取り組み、多様な世帯が安全で暮らしやすい居住環境をつくりだすことも必要だ。この理解を得るために地元の人々との話し合いを地道に重ね、URは今日も密集市街地の解消にコツコツと挑み続けている。

京島三丁目地区
東京都墨田区

戦火を逃れた歴史あるまちを災害に強いまちに変える

これまでの問題点

関東大震災や戦災を逃れたことで、古い木造住宅や長屋形式の住まいが密集している墨田区京島地区。昔ながらの下町の人情が色濃く残る一方で、道路が狭く、地震発生時には建物の倒壊や延焼の危険が高く、防災面に大きな課題を抱えていた。だが権利関係が複雑で、老朽化した建物の建て替えや不燃化、道路の拡幅といった事業がなかなか進まなかった。

URの取り組み

URは2001年に墨田区と市街地整備に関する協定を結び、「防災街区整備事業」の手法で改善に取り組んだ。

住民との丁寧な話し合いを重ね、耐火建築物である5階建ての共同住宅(35戸)や戸建て住宅用地を整備。共同住宅には二方向の避難路を確保、防災倉庫や雨水貯留槽を設けた。また、道路を拡幅して消防車が入れるようにし、災害に強いまちづくりを行った。共同住宅の足元や敷地内を緑化し、風の通り道を確保するなど、居住環境の向上も図っている。

年月を重ねた木造住宅は権利関係が複雑で、しかも高齢者が多く、自己建て替えが困難な状況だった。
URが整備した防災施設を備えた共同住宅。

門真市本町地区
大阪府門真市

電器産業のまちを美しい景観のまちに変える

これまでの問題点

1960年代に電器産業拠点として発展した門真市北西部地域。急激な人口増加は、密集した老朽木造住宅や消防車が入れない狭い道路を生み、防災上の課題を抱えていた。また、市営住宅や市場跡地などの未利用市有地があり、これらを活用した防災道路の拡幅と建物の不燃化が急務だった。

URの取り組み

2008年、URは門真市とともに防災に配慮した市街地の整備検討をスタート。市の住宅市街地総合整備事業と連携して防災街区整備事業を行い、防災道路の拡幅整備や耐火建築物である5階建ての共同住宅(34戸)の整備、戸建て住宅街区の整備により、防災性の向上と良好な居住環境づくりに寄与した。

また、この事業で整備した道路やマンション、戸建て住宅街区はアースカラーにするなど景観統一を進め、まち全体のバリューアップも図っている。

写真は拡幅前
防災道路を拡幅(約3m→6.7m)し、アースカラーに変更。
写真は拡幅整備後。
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