街に、ルネッサンス UR都市機構

八千代ゆりのき台パークシティ 千葉県八千代市

URPRESS 2018 vol.54 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

4.八千代ゆりのき台パークシティ 千葉県八千代市
地域コミュニティーアプリがつむぐゆるやかなご近所づきあい

地域密着コミュニティーアプリを活用し、
若い世代を呼び込むコミュニティーづくりを進めている団地がある。
PIAZZA(ピアッツァ)というアプリを使って目指すのは、リアルな人のつながり。人々が支え合うまちづくりだ。
舞台は千葉県八千代市、導入に注力したのはURの若手職員だ。
人気の「おやこ英語教室!」は、0・1歳児クラスから小学生クラスまで。

活動拠点にと、団地内の集会所を改修。ペインティングアーティストを招き、パステルカラーの壁に囲まれたフローリングの明るい部屋に生まれ変わった。集会所の壁のペイントワークショップには、子どもたちも参加。

アプリを活用してリアルのつながりをつくる

そもそも地域密着コミュニティーアプリ「PIAZZA」とは何か? 特定の地域に関わる人がSNSを通してやりとりできるツールで、自己紹介的なキャッチフレーズ、出身地などを登録して会員になると、「教えて」「お知らせします」といったご近所ならではのモノとコトの情報のシェアが可能。八千代エリアでは、URが管理する「八千代ゆりのき台パークシティ」と「村上団地」の住民など、20~70代の約1000人が登録し、「子どもと一緒に入れるカフェを教えて」とか「おもちゃをお譲りします」などのやりとりを日々行っている。利用者からは「毎日楽しみに見ている」と好評だ。

PIAZZAの強みは、若い世代が利用しやすいアプリを活用しつつ、実際に顔を合わせる機会を大切にしていることだ。6月に八千代ゆりのき台パークシティの集会所で開かれたフリーマーケットもそのひとつ。告知はもちろんアプリで行った。1000人で簡単に情報共有できるのは大きな魅力だ。ママカフェやおやこ英語教室なども定期的に開催している。

活動のキーとなっているのが、コミュニティーデザイナーと呼ばれる担当者の介在だ。八千代では宮本亜佳音さんがその役割で、新たに入ったメンバーのフォローや、イベントの企画・告知・開催などにきめ細かく対応。デジタルとリアル、そしてPIAZZAとURのつなぎ役として活躍している。以前からコミュニティーづくりの活動に取り組んでいた宮本さんはPIAZZAの活動に賛同。地元での展開に喜び参加した。

「URさんが集会所を使いやすく改修してくださり団地内に拠点ができたので、子育て世代だけでなく多世代で自然に交流できるのがありがたいです」

20年前に建てられた八千代ゆりのき台パークシティ。最寄り駅は東葉高速鉄道「八千代中央」で、大手町や日本橋まで約40分。

PIAZZAと共に人が支え合うまちづくり

PIAZZAを八千代で展開する働きかけをしたのは、URの千葉エリア担当の若手職員たちだ。「もっと若い人がつながる機会を増やして、団地を明るくしたい」とスタートしたプロジェクトのメンバーが、住民のつながりができれば団地の魅力になると考え、東京中央区にある子育て支援施設「グロースリンクスかちどき」を視察。そこで出会ったのが施設を協働運営するPIAZZAの矢野晃平社長だった。

「地域に特化した独自のコミュニティーアプリを運営し、デジタルとリアルを融合させながら“人が支え合うまちづくり”を目指すPIAZZAの思いと活動を聞いて、意気投合しました」とURの松尾知佳は振り返る。勝どきや豊洲、武蔵小杉など、人口流入が著しいエリアで展開し成果を出しているPIAZZAを、八千代エリアにも導入できないかと検討を始めたURのメンバーは、課題をひとつずつクリアし実現にこぎつけた。PIAZZAがスタートしたのは昨年8月。それに先立ち、URから八千代市にもお声がけし、コミュニティー形成に関する三者協定を締結。アプリを通して行政からの情報の受発信も可能になった。

PIAZZAを支える女性たち。左から日尾奈美子(UR)、白井美恵子さん(PIAZZA会員)、宮本亜佳音さん(PIAZZAコミュニティーデザイナー)、松尾知佳(UR)。
フリーマーケットには野菜や本、子どもの洋服、手づくり品などが並び、参加者の交流が自然に繰り広げられていた。
フリーマーケットでは朝採りの新鮮野菜の販売も。空心菜やルバーブなども人気。

今、手を打つことが未来の少子化対策に

URにとって地域密着のコミュニティーアプリを導入するのが初めてなら、PIAZZAも、団地での取り組みは初めての挑戦だ。社名とアプリ名にもなっているPIAZZAは「広場」を意味するイタリア語。地域に関心を抱き始める子育て世代にアプローチして、時代に合ったソーシャルコミュニティーである「広場」をつくることをPIAZZAは目指している。

「若い世代が多く暮らす高層マンション群も、数十年後には少子高齢化の波が訪れます。住民がつながってコミュニティーが成熟していけば、そのまちの価値も高まると思うのです」と矢野社長。今、手を打つことが未来の少子化対策につながると考えているのだ。逆に言えば、手を打たなければ大問題となることを心配している。

PIAZZAの考えに共感するURの日尾奈美子は、「同じエリアに住んでいる人と顔見知りになったり、得意分野を生かして教え合えるのは魅力的。何かのときにも安心です」と微笑む。

PIAZZAが協働運営する東京都中央区にある「グロースリンクスかちどき」。巨大な遊具をはじめ、親子で楽しく過ごせるしかけがいっぱい。

八千代ゆりのき台パークシティに暮らす白井美恵子さんのPIAZZAへの期待は大きく、積極的に参加している。「アプリは毎日楽しく見ていますし、イベントや教室を通して子育て世代はもちろん自分の親世代の方と仲よくなり、自宅に遊びに行くなど交流が広がってうれしいです」と話す。

今後コミュニティーが活性化していけば、八千代のまちの価値は確実に高まっていくだろう。未来に向けた種が、少しずつ芽を出し始めている。

「八千代をもっとよくしたい」と地元愛が強い人が多いことに驚いたと話す矢野社長。PIAZZAでは無理のないつながり、ゆるいご近所づきあいを大切にし、困ったときに頼り合える関係を目指している。PIAZZAの会員は全体で約25,000人。

妹尾和子=文、菅野健児=撮影

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