香里(こうり)団地 大阪府枚方市
2.香里(こうり)団地 大阪府枚方市
みんなの笑顔が咲いたD51(デゴイチ)プロジェクト始動
築50年が経過した団地にエレベーターを設置する。
この工事をきっかけに、住民たちが集える庭と共用空間をつくった香里団地。
団地暮らしに新しい魅力が生まれ、コミュニティーが育まれている。
4つの庭とピロティーを整備
「お待ちしてました!」
「こんにちは、おじゃまします」
マイクロバスから降りてきた人たちが、団地入口につくられた花壇を前に、香里団地の人々と笑顔であいさつを交わしている。
5月下旬の土曜日、同じ大阪府内にある千里青山台団地の人々が、香里団地D地区51号棟、通称D51と呼ばれる棟を訪れた。
団地の相互訪問は、この日で2回目。昨年9月、「みんなの庭プロジェクト」を展開して団地のあちこちに小さなガーデンをつくって楽しんでいる千里青山台団地を、D51のメンバー有志が訪問し、その様子を見せてもらった。それを受け、今日は表情豊かなD51の庭を千里青山台の人々に見てもらい、一緒に楽しもうと「キララフェスタ」が企画された。
D51棟は入居開始から58年。横に長く延びた5階建ての建物で、これまでは3カ所に階段があった。ここにエレベーターを1基設置することが決まったのをきっかけに、新しいコミュニティーづくりと、魅力ある共用空間づくりを同時に行う「D51プロジェクト」が始動した。
まず、1階のエレベーター前の空間に全戸の郵便受けを集め、ここをピロティーとして自由に集える屋外活動のステージに。エレベーターを利用する人たちがよく通る建物の前庭と建物裏手の庭が、新たなコミュニティースペースとなった。
庭の設計はプロのガーデナーである山田倫子さんに協力いただき、4つのゾーンに分けて整備。団地入口の大きな欅の木の下には、カラフルな花が咲き誇るウェルカムガーデン。そこから建物入口までは、小道の左右に季節ごとの花が楽しめる小道ガーデン。建物裏手の日当たりのよい場所にはハーブガーデンと、みんなで種まきをして植物を育てる種まきガーデン。これらを屋外活動のステージとしていった。
「先週まで、みんなで種をまいたヤグルマソウが、それは見事に咲いていたんですよ。部屋からもよく見えてね。その花を見ているだけで、とてもうれしくなりました」
2階に長年お住まいの女性は、すっかり花に魅せられた様子だ。
団地に庭をつくる意味を、UR西日本支社の片岡有吾はこう話す。
「住んでいる人が生活動線の中で佇んだり、誰かと出会う、そんな『場』をつくることが、コミュニティーを育むためには大事だと思うんです。屋外の花壇は、その『場』です。誰かが花の手入れをしていたり、ピロティーから笑い声が聞こえる。なにか楽しいことをしているその横を、団地の人が歩き、その様子を見る。そこで自然とあいさつが交わされ、話が始まる。それがコミュニティーが育まれるきっかけになると思っています」
花壇があればみんなとつながる
「団地自治会には入っていましたが、個人的には何も活動していませんでした。それが庭づくりが始まると、皆さんとの交流が生まれ、外でおしゃべりしたり、ピロティーで会議をしたり、いろいろな結びつきが生まれて楽しみが増えました。他の棟から花を見にくる方もいて、この花壇には愛着もひとしお。外出先から戻ってきてここの花を見ると、ほっとしますよ」
こう話すのはD51に住んで38年になる日笠京子さん。「ガーデン」のまとめ役だ。
「最初はそんな花壇をつくっても、花を持っていかれるんじゃないか、誰が世話をするんだと反対意見も出ました。私もあまり乗り気ではなかったんです。でも、できてみたらほんとうにステキで。こんな庭があるD51が誇らしい」
そんな感想を述べるのは、キララフェスタでフラダンスを披露した女性だ。
屋外空間につくった花壇で団地の人々が出会い、交流が生まれ、暮らしに誇りが持てるようになる。歴史ある団地は新しい魅力をまとい、美しい花を咲かせはじめた。
武田ちよこ=文、青木 登=撮影
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