復興の先の未来に向けて着実に進むまちづくり(1)
岩手県 大船渡市・大槌町・山田町
復興の先の未来に向けて着実に進むまちづくり
新たなまちづくりが進む岩手県沿岸部の大船渡市、大槌町、山田町。
規模やかたちはそれぞれだが、一歩ずつ着実に歩み続ける3つのまちを訪ねた。
大船渡市

下右/大船渡駅前の交通広場で開かれた「第1期まちびらき」。「この日を始まりに、これから来年にかけて一帯の風景がどんどん変わっていきます。ご期待ください」と戸田公明大船渡市長(右から4人目)があいさつ。
まちに賑わいを取り戻す駅周辺地区がオープン
にぎやかな祭囃子に合わせ、手づくりの鹿頭(ししがしら)をつけた33人の大船渡保育園の園児たちが、元気に跳ね踊る−−快晴に恵まれた3月13日。大船渡駅周辺地区の「第1期まちびらき」は、伝統芸能の「ししおどり」でなごやかに幕を開けた。
今回のまちびらきは、バスやタクシーが乗り入れる「交通広場」と市道茶屋前野々田線の開通、地区内のJR大船渡線BRT専用道の開通を祝して開かれたもの。大船渡市長をはじめ、東日本大震災の際に「トモダチ作戦」で救助活動をした米国関係者ら約600人の出席者が集い、会場は明るい笑顔に包まれた。
長男の颯輝(そうき)くんのししおどりを見に来たという金野(きんの)圭介さん、香さん夫妻は「駅前で工事をしているのは知っていましたが、今日あらためて見て、こんなに進んでいたのかと驚きました。子どもたちにとって、このまちは故郷。今日をきっかけにさらに復興が進んで、安心して暮らせるまちになってほしい」と顔をほころばせた。

発展する持続可能なまちに
古くから港を中心に水産業で栄え、海外からの船員などでにぎわった港町、大船渡。東日本大震災による壊滅的な被害から5年、待ちに待った新しいまちの姿が現れ始めた。
「大船渡駅前は、津波復興拠点として、行政施設や商業施設が集約される計画です。それに合わせ、大船渡線の線路をはさんで海側の商業地域は3メートルまで、山側の居住地域は5メートルまでかさ上げする工事を進めています。この地区には既存の建物も残っていたため、順繰りに、また迅速に工事を進める段取りを組むのが大変でした」
と語るのは、UR都市機構大船渡復興支援事務所所長の緑川一郎だ。UR都市機構は平成24年に大船渡市と協力協定を締結、市とタッグを組んで復興に尽力している。
大船渡市災害復興局市街地整備課の金野尚一課長補佐は「我々は、災害復旧とは原型に戻すことだと思っていました。ところが、URさんは復興においては、『元に戻すのでなく、これから発展していく、持続可能な新しいまちをつくる必要がある』と、さまざまなアドバイスをくださった。衝撃的でしたね」と、その功績を語る。




復興のその先を目指してまちづくりは続く
基盤整備や土地区画整理事業など、UR都市機構の仕事は決して目立つものではない。しかし、工事の段取りやコーディネート、県や市、建築業者や地権者などとの交渉や計画の詰め、ときには交通管理者である警察の指導を受けるなど、きめ細かく柔軟な対応を日々迫られるという。
UR都市機構大船渡復興支援事務所基盤工事課課長の鈴木徹也も、「復興を待つ皆さんのために、通常以上のスピードで工事を進めています。工事はまだまだ続きますが、今日の日を無事迎えられて、本当にほっとしています」と語る。
駅周辺地区では、4月から6月にかけて大型ショッピングセンターが建ち、来年にかけて飲食店やモール、ファクトリーショップなどがオープン。同時に、山側の住宅の着工と、平成30年に向けて着々とまちができていく予定だ。「駅前の中心部を流れる須崎川には親水公園をはじめ、3つの公園もできます。家族連れの方々の憩いの場所になってくれれば」と岩手県沿岸広域振興局土木部 大船渡土木センター河川港湾課河川復旧チームの清水雅弘主任は話す。復興、そしてその先の未来へ。大船渡市のまちづくりは、新たな、そして確かな一歩を踏み出した。


7月までに災害公営住宅の引き渡し完了予定!
大船渡市でUR都市機構は227戸の災害公営住宅建設も担当している。7月にはすべての引き渡しを完了する予定だ。
そのうちのひとつ、「杉下団地」は、海が見える高台にゆったりと建つ木造住宅。現在仮設住宅で暮らす金野光子さんは、5月にこちらに入居予定。「部屋もトイレも広々しているし、収納も多くて住みやすそう。暮らしはまだまだ大変だけど、ベランダで海を眺めてコーヒーでも飲んだら、気持ちも癒されそうです」

【阿部民子=文、青木登=撮影】
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