特集 ミクストコニュニティ最前線2 University 福岡
地域の大学と連携・協力関係を結び、大学の持つ知の力と若いパワーを団地活性化に生かす試みが、福岡市の金山団地で始まっている。
高齢者にも学生にも有意義な機会
「今や日本人の3人に1人は高血圧、その原因は塩分の摂り過ぎにあります」
中村学園大学栄養科学部・安武健一郎准教授の声が、金山(かなやま)団地(福岡市城南区)の集会所に響く。今日は安武先生が中心に進める「食べている食塩を“見える化”する研究」2回目のモニター集会。尿から食塩摂取量を測定できる機器を使うなど、新しい手法で行う研究で、同団地に住む30名のモニターの皆さんが集まった。
これは同大学とUR都市機構が連携して行う初の試みで、大学側はモニターの皆さんから研究データを収集すると同時に、減塩の大切さという健康増進のヒントを提供する機会になっている。
中村学園大学・同短期大学部とUR都市機構の連携・協力関係は、昨年9月にスタートした。
「これからの大学には、積極的に社会とつながりながら学ぶアクティブラーニングが重要です。学生たちを巻き込んで、地元城南区の団地が抱える問題やニーズを掘り起こし、大学のもつ知見を生かして地域の活性化に貢献できればと考えています」
こう話すのは中村学園大学社会連携推進センター長(流通科学部長)の片山富弘教授。
モニター集会には共同研究する三好惠美子准教授のゼミの学生たちが全員参加して、会の進行を手伝っている。詳細な記入が求められる食生活に関するアンケート用紙を前に、学生に丁寧に説明してもらうお年寄りたち。高齢者にとっては、健康に関する知識を得るだけでなく、若い世代との貴重な交流の機会にもなっている。
「高齢者と接する機会の少ない学生たちにとっても、社会に出る前にコミュニケーションを学ぶよい機会です」と三好准教授。
モニターに参加した82歳の女性は「こういう会があると刺激になっていい」と目を輝かす。別の70代の女性は、「自分は健康に関心があるからモニターになったけれど、最近引きこもりがちなお友達が心配。そういう人たちを外に誘えるような企画があるといいのですが」と話していた。
大学の強みを生かした連携に期待
中村学園大学としても、団地をフィールドとした試みは始まったばかり。大学の強みを生かして、(1)健康増進 (2)高齢者支援 (3)子育て支援の3つの柱を中心にすえている。さっそく流通科学部の学生から声が上がり、今春には「タブレット講座」を開く予定だ。
「タブレットの使い方を知れば、SNSに参加したり、マップを使って行きたい所に出かけたりと、高齢者の世界が広がる可能性がありますよね。ここからサークル的な活動が生まれればいいなと思っているのです」と片山教授。
また、金山団地は地下鉄駅がすぐ近くにできたこともあり、若い子育て世代が多いのも特徴だ。中村学園の幼児・保育教育や発達支援に関する知見を生かして、子育て世代を支援する取り組みも期待されている。
UR都市機構では中村学園大学との連携を、将来的には他の団地にも広げていきたいと考えている。金山団地から新しい風が吹き始めている。
【武田ちよこ=文、佐藤慎吾=撮影】
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